ep.146 桜子のお願い、瑠奈の信念
桜子はすやすや眠る雪江の頬を優しく撫でると、瑠奈に目をやり、
「じゃ、一つお願いしようかな。瑠奈、アナタ、三年の三沢先輩知ってるよね?」
「三沢先輩って、保健委員会の委員長の?」
桜子は頷き、
「ええ、その三沢先輩。ご家庭の事情で、名古屋に転校されるらしいの」
「大変だね・・・、三年なのに」
「でね、瑠奈、保健委員よね。保健委員長が空くのよ。瑠奈、してもらえる?保健委員長?」
瑠奈はかなり驚き、
「ぇー。ァタシには無理だょ。第一、委員長って委員による選挙で、選出だったょね?」
桜子は不敵に笑い、
「通常はね。これには特例事項があって、委員長が学期中に転校しせき時は、生徒会長がこれを兼任もしくは任命する事が出来る。って。だから・・・」
桜子は、にっこり笑うと、瑠奈に手を差し延べ、
「瑠奈、保健委員会の委員長やってもらえないかな?」
瑠奈は、少し淋しそうに首を横に振り、
「ごめんなさぃ、ァタシは無理です、桜子ちゃん」
桜子には、瑠奈の対応がかなり意外だった様で、
「えっ?でも、さっき無理言ってくれてって・・・、信頼出来る瑠奈だから、お願いしたかったのに・・・」
瑠奈は、もう一度、首を横に振り、
「ぅぅん、そぅじゃなくって・・・。ァタシが言ぃたかったのは・・・。それに、ァタシは、そんな大役は無理だし、やっぱり、委員長は選挙で選ばれるべきだと思ぅ。ァタシは、ァタシより名護先輩や厚木先輩の方が適任だと思ぅょ。ァタシは、そんな重たぃ肩書じゃなく、ただの瑠奈。ただの瑠奈のままで、桜子ちゃんのぉ手伝ぃをしたぃ」
桜子は、残念そうに深くため息を吐き、
「そっか・・・、残念だけど、人それぞれだもんね・・・。理解った。瑠奈は瑠奈のまま、ただの瑠奈で・・・」
瑠奈は本当に申し訳なさそうに、ペコリと頭を下げ、
「ごめんなさぃ、無理言って・・・」
「いいの、いいの。瑠奈、気にしないで・・・」
そんな少し重たい空気の執務室を、陽気なノックが鳴り響く。
こころだ。
そろりと顔を覗かせ、
「そろそろ終わったと?気になって覗きに来たとよ」