ep.144 破門状を全国に廻せ
壱野は、またニヤリとすると、
「気になりますか?電話で債権回収中って、俺、言ったじゃないですか?アレですよ。借金のカタに、中坊の娘拉致って来ました。コイツに、身体で親の借金返してもらうんですわ。まぁ、嫌がる様なら、麻薬ぶっ込んで、ソープにでも・・・」
「よく親が納得したな」
「え?嫌だなぁ、補佐。納得なんかする訳ないじゃないですか。だからヤキ入れましたよ。今頃、下手すりゃ、首吊ってるんじゃないですかね。ま、その方が、ウチ的には保険金入っていいんですけどね。くっくっく」
岸田は吐き捨てる。
「下衆やな」
「補佐には言われたくありませんわ。恐らく生娘やから、風呂で働かせる為に姦っちまわないとね。何やったら、“河内稲美会”の会長さんに喰ってもらってもいいですが・・・、それか、補佐如何です?」
岸田はまたラークを取り出すと、
「俺はええわ。ガキには興味ない」
本音は違った。
《この壱野に弱み握られてたまるかいな・・・》
しばらく走ると、バックミラーをチラ見した壱野が、気になる事を口にする。
「補佐、バッチどうされたんで?」
「あー?ホンマや。落としたか」
「万が一無くしたら、指詰めモンですぜ、補佐」
岸田は、火を着けたばかりのラークを消し、
「まぁ、ええわ。明日で、“河内稲美会”には引導渡したろーと思ってたからな。そしたら、あんな代紋なんぞ、また作ったらええねん」
「補佐、どう言う事で?」
「死んでもらおうと思ってな、オンナと一緒に。ヤク中のヤクザが、援交の高校生を殺して、自身も狂気の果てに自殺。よくある話や」
「なるほど・・・、そやったとしても、誰が会長の命取るんで?」
「俺がボンクラのドタマに、直接鉛玉ぶち込んでやるわ。壱野、万が一の為の身代わり用意しとけや、そやの山崎か山崎の弟分がええの」
壱野は、深いため息を吐き、
「ところがですね、山崎若頭始め五人、全く連絡取れないんですよ。補佐、何か言いました?大事な事?」
岸田は、思わずタバコを落とした。
「ま、まさか・・・。いや、アイツの性格やから・・・」
岸田の顔から血の気が引いていく。
「壱野、俺の事務所行って、もし、山崎らと全く連絡着かへん時は・・・」
壱野は岸田の焦りが面白くて仕方ない様で、
「着かない時は、どうするんです」
岸田はゴクリと息を呑み、
「そん時は・・・、破門状を全国に廻せ。そして、かまへんから、山崎一味拉致せーや。どうせなら、ボンクラと一緒にあの世に逝ってもらう」
「さっきの身代わりは?どうするんで?」
「そんなモン、一番下っぱ、誰でもええから立てとけや、任せる」
「はい」
壱野はそう答えると、ニヤリと口元を上げ、
《オッサン、下手打ったな。どうせなら、アンタに臭い飯喰ってもらうか・・・。その方が後々・・・》