ep.140 目にゴミが・・・
桜子が促すと、藍が真っ先にペコリとツインテールを揺らしながら、頭を下げ、
「隼人藍といいおす。早う雪江ちゃんの為に元気なったげて下さいね」
次に、瑠奈も倣い、
「はじめまして、トメさん。雪江ちゃんと仲良くさせて頂ぃてる、鳩村瑠奈です。早く元気になって、雪江ちゃん安心させてぁげて下さぃ。ぁっ、これ食べて下さぃ」
紙袋から手作りクッキーを取り出すと、トメに差し出した。
トメは、大事そうに受け取り、
「おや、まぁ、こんなばーさんの為に、優しいお嬢さんだ事。ありがたく頂きますね」
最後に、ローズが優しく笑い、
「トメサーン、アタシ、ローズ・ピーコックマン、イイマス。早ク、良クナッテ、下サーイ。日本語ヘタデ、ゴメナサーイ」
ローズも頭を下げた。
トメはローズにはかなり驚いた様子で、
「あら、あら。雪江ちゃんのお友達には、外国の方もいらっしゃるのね。ご丁寧に・・・。こちらこそ、皆さん。ウチの雪江ちゃんと仲良くしてあげて下さいね」
深々と、再度、トメは頭を下げた。
目に涙が浮かぶ、
《こんなに・・・、雪江に沢山のお友達が・・・》
トメの異変に気付いた雪江が、
「トメさん、どうかしたの?涙が・・・」
トメはハンカチで目頭を押さえ、
「あら嫌だ、ゴミでも入ったのですかねぇ」
雪江を含め、女子高生が七人もいる病室は、賑やか以外の何物でもない。
ましてや、天然で笑いを誘うこころや、藍がいるので、いやがおうでも笑みが溢れる。
トメは孫にも当たる年齢の娘達を微笑ましく見つめ、
《この光景を見せてやりたかったねぇ・・・》
桜子達は、雪江にロビーで待っているからと言い、トメさんに挨拶をしてから病室を出て行った。
雪江もトメの身の回りを片すと、
「それじゃ、トメさん。アタシは、今日は学校の寮に泊まるから安心してね」
「はいはい。トメは、ゆっくり病院で養生させてもらいますよ。そう言えば、雪江ちゃん。裕一さんは?」
驚いた雪江は、心配をかけまいと最高の作り笑顔で、
「お兄ちゃん?さぁ、またミナミかどっかで、岸田さんと飲んでるじゃない?」
そう言い残すと出て行った。
トメは裕一の身を案じてか、ため息を吐、
「もう少し落ち着いたら、亡くなった先代も喜ばれるのにねぇ」