ep.138 正樹の眠る理由
藍はトイレの個室に入るなり、
「晴明ちゃん、いてる~?」
心の中で声がする。
『なんじゃ?藍。儂ぁ、せっかく、ピチピチ看護婦さんを見て、目の保養しておったのに・・・』
「相変わらず、色ボケどすなぁ。ところで晴明ちゃん、瑠奈ちゃんの彼氏、どうにかなりまへんか?」
『あの寝ったままの色男か?しかたない・・・。藍の頼みじゃからのう。ちと身体、借りるぞ』
「あい、晴明ちゃん」
ビクンと藍の身体が振動し、晴明が藍に入った。
思わず漏らす。
「さて、見てみようかの~」
藍(晴明)が病室に戻ると、仲間達は瑠奈の作ったクッキーをパクついていた。
「藍、アンタもコレ食べるったい。美味かとよ」
こころがクッキーを差し出すが、
「うむ、後での。ちと、そこをどいてもらえんか?」
藍(晴明)が、手でこころ達をはらう。
口調が変わった藍に仲間達は驚き、話掛けようとするも、“しっ”と睨まれると何も言えなかった。
正樹の右の枕元に藍(晴明)は立ち、目を閉じると左人差し指と中指を立て自身の口元に、右人差し指と中指を正樹の額に持っていくと、何やら祝詞を唱え出す。
一瞬、部屋中が、藍の右指から放たれたまばゆい光りに包まれ、
『どうどす?晴明ちゃん?』
「そうじゃな、この正樹とかいう男、どうやら自らの意思で眠りつづけておるようじゃ。何やら起きると瑠奈に迷惑が掛かるとだけ、漏らしておったの。難儀な事じゃ」
『ほんに、ややこしおすなぁ』
光が消えるやいなや、こころがたまらず藍の両肩を掴み揺さぶる。
「おい、藍。アンタ、何ば言いよっと?どげんしたとね?変な喋り方になって?」
本来の藍に戻った藍は、
「痛っ、痛おます。こころちゃん、瑠奈ちゃん、みんな、堪忍え。悪気はないんどす」
冷静に事を見ていた桜子が、割って入り、
「藍、正樹さんは自分の意思で寝ているって言ってたけど、本当なの?」
「へえ、ウチそんな事言ってましたか?だったら、ホントどすな」
桜子は真顔で瑠奈に言う。
「瑠奈、今度改めて、正樹さんが入院するきっかけになった事話してくれる?悪いようにはしないから」
瑠奈は、知らされた事実に少しショックを受けたが、ペコリと頭を下げ、
「ぅ、ぅん。ぉ願ぃします」
一方、雪江と直子は、この不思議な光景を目を白黒させて見ていた。
また、ローズも冷静に事を見ており、
《What's a kind of wonder girl! 藍!!(なんて不思議な女の子なんでしょ。藍ってば)》