ep.134 どんな魔法を使ったと?
「ゆっきー!」
直子が雪江を見付け、手を振る。
雪江もそれに併せて、小さく手を振った。
直子は優しく藍の手を離し、雪江に近付く、
「お手伝いさん、大丈夫だった?」
雪江は頷き、
「うん。お蔭様で・・・。トメさん、軽い神経性の過労だって。今日もう一日病院で点滴受けたら、日曜の夕方には退院出来るらしいわ」
話を聞いていたこころが、
「ばーさん、大事なくてよかったとよ、雪江ちゃん。心配したと」
雪江は、瑠奈により昨日までの自分を改めていたので、素直にこころに頭を下げ、
「こころ先輩、昨日は心配やご迷惑おかけしました。せっかく気を使っていただいたのに・・・」
驚いたのはこころである。
「よかよ、よか。気にせんでよか。人間、そんな時もあるとよ」
と、笑い飛ばした。
《しかし、ここまでこの娘を豹変させるとは、瑠奈はどんな魔法を使ったと?あの子もやっぱり、さすがね。侮れんたい》
こころの後ろから、桜子が安心させる様に優しい笑顔で雪江に話掛け、
「雪江ちゃん、瑠奈が言ってたと思うけど、もう心配ないわ。気付いてあげれなくって、ごめんなさい」
深々と頭を下げた。
雪江は驚き、
「そっ、そんな。生徒会長、頭上げてください。元々は、ウチの家庭の問題ですから」
桜子は頭を上げると、
「そうだとしても、アタシは知らずに安穏としていた、そんな自分が許せないの。許してね、雪江ちゃん」
「理解りましたから、そこまで自分を責めないで下さい。生徒会長」
直子が雪江に小声で耳打ちする。
「ゆっきー、生徒会長の事、生徒会長って言ったら駄目なんだよ。桜子先輩って言わなきゃ」
雪江はコクンと頷き、
「桜子先輩、ホントに気になさらずに」
桜子は目を輝かせ、
「ありがとう。アタシ達が動くから、もう安心だからね」
「はい」
そして、雪江は付け加えた。
「瑠奈先輩の言った通りの人たちですね、皆さん」
瑠奈がいない事に気付いたこころは、
「雪江ちゃん、瑠奈は何処行ったと?」
雪江が返答する前に、藍がエレベーターから出てくる瑠奈を見付け、元気に手を振る。
「あっ、瑠奈ちゃ~ん。こっちえ。皆んな一緒どす!」