ep.133 つねられた頬っぺた
「お待たせしましたなぁ」
藍は、車から降りると、笑顔で桜子とこころに近付く。
桜子はニヤリと悪戯に笑うと、藍の両方の頬っぺたを軽くつねる。
「この笑顔にやられちゃうのよね」
プニプニ感が心地好い。
藍は、突然の事態に驚き、
「もー、なんどす?桜子ちゃんのいけずぅ~。こころちゃん、助けておくれやす」
藍が桜子から逃げだし、こころに助けを求めると、
「ホント、罪なオンナったい、藍は」
そう言っては、こころも藍の両方の頬っぺたを軽くつねった。
藍はこころからも逃げだすと、
「も~、二人してなんどすの!ウチ、怒りますえ」
桜子は、アハハと笑いながら、
「頬っぺたつねりたくなる程、二人から藍は愛されてるって事よ。ねぇ、こころ?」
こころは頷き、
「そうったい。今のは二人からの感謝の気持ちとよ」
藍は少しキョトンとし、不思議な顔でにぱぁと笑う。
両方の頬を手で摩り、
「なんやよう理解りまへんけど、二人がそう言うならそうなんどすやろなぁ。頬っぺたは痛おすけど・・・」
三人は互いを見詰めると、笑い合った。
その光景を微笑ましく見ていたローズが、
「ユー達、瑠奈ガ待ッテルヨ~、行カナキャ~」
こころが直子に気付き、
「午前中は余りかまってやれんで、ゴメンとよ。でも、話はよか方向に向かっているから」
直子は、こころを信用しきってる様子で真っ直ぐ見詰め、
「信じてますから、大丈夫です。こころ先輩」
桜子が切り出す。
「じゃ、揃ったし、皆んなで、雪江ちゃんと瑠奈を迎えにいきましょ」
残りの四人は、頷き、
「ほな、直子ちゃん、行くえ」
藍が直子の左手を取り、手を繋ぎ先頭を切って歩きだす。
桜子、こころ、そしてローズが、後を追った。
一方、瑠奈と雪江は、既に病院のロビーで直子達を待っていたのだが、瑠奈が何か思い出したかの様に、
「ゴメン、雪江ちゃん。10分だけ待っててくれるかな?すぐ戻るから」
そう言って、鞄を抱えたままエレベーターに乗り込み消えた。
そうやって待っている間に、自動ドアが開き賑やかな声が聞こえる。
直子と華やかな四人がロビーに入って来たのだ。