ep.132 ガチンコで闘ってよかと?
こころは、心底深いため息を吐き、
「しょうがなかね・・・、はぁ・・・」
桜子は諭す様に、
「こころ、そんなに気を落とさないの。しっ・・、違う、理事長、面白い事も約束してくれたんだから」
こころは、少し疑いの眼差しで、
「何ね?桜子。その面白い事って?」
桜子は不敵な笑いをし、
「こころ、藍と闘った事ある?」
「藍?なかね」
「理事長の話だと、実はかなり強いらしいのよ」
「ホントね?それ?」
コクンと桜子は頷き、
「鏡心明智流の使い手だって」
「それって強かね?」
「うん。幕末の流派だけどね」
こころは、右の拳を左の手の平にパシンとぶつけ、
「闘ってみたかね!」
桜子は、フフっと笑い、
「こころも、アタシと同じか・・・。でね、開かれる事になったの、全国規模の剣術大会。しかも、賞金付きでね」
こころは、目を見開き、
「面白か企画ね。賞金もね?」
桜子は、右人差し指をピンと伸ばし、
「うん。一億円って理事長言ってたわ」
こころは、かなりびっくりして、
「ちゃー、一億!なんでそんなにお金出すと?理事長」
「どうやら、古流剣術を復活させたいみたいね」
「桜子のトコみたいな?」
「うん。ウチみたいな所」
「どう違うと?剣道大会と」
「まだ全体はこれから詰めるらしいけど、恐らく防具は付けない。最低でも木刀による闘いだと・・・」
「リアル・ファイトったいねー。で、一億円と?面白かね~」
桜子は、頷き、
「全国の中高生が対象って。恐らく、優秀な中学生はスカウトするんじゃない?抜け目ないわ、理事長」
「ふ~ん。じゃあ、もし、ウチと桜子が当たれば、ガチンコで闘ってよかと?」
「仕方ないわね。その時は、恨みっこ無しよ」
こころは、少し遠い目をして、
「丁度、一年前ね。アンタとガチで闘ったの」
「あの時は、転校してきて早々お世話になりました。クスッ」
こころは、痛い所を突かれ、
「あん時は、ウチも天狗やったとよ」
桜子は、反省しているこころが面白いのか、クスクス笑い、
「今、思えば、仕向けたの藍よね?」
「そうったいね。争わせて仲良くさせたとよ」
「実は一番したたかなのは、藍かもね」
「ホントったい。ハハハっ」
そうやって談笑している二人に、遠くから声が掛かる。
藍がローズの運転する車で、直子とやって来たのだ。
「桜子ちゃん、こころちゃん、ウチらも来ましたえ~!」