ep.013 眼鏡っこの担任とイケメンの副担任
「おー、リュウノスケ、お腹すいたネ。食堂行って、ご飯にするサ。余崎先生達も如何です?クラブハウスサンドでも。ボクが作りますカラ、で、詳しく聞かせて貰えますカ?対策チームの運営」
理事長・JJは、そう言うと余崎一行を連れて行ってしまった。
桜子は、温泉旅行は貰ったも同然と考えていると、英語教師で担任の緒川朋子と日本史教師で副担任の烏丸睦月が駆け寄る。
「桜子ちゃん、理事長と何か凄い約束してなかった?先生、ドキドキしちゃった」
緒川は、実際は20代後半なのだが、見た目は5才は若く見えた。
緊張したのか顔が紅い。
もっとも、全員が何かしらのスペシャリストである2年F組の担任をしているのだから、この緒川もくせ者である事は想像出来た。
「勝算はあるのかい?鷲尾君?」
涼しげな眼差しで、学校一のイケメン教師と噂される睦月が尋ねる。
桜子は軽くため息を吐き、
「勝算ですか?まぁ、現状で7割と言ったトコですわ。寮に持ち帰りって、皐月に過去10年間のテストのデータ解析を依頼するから、もう少し勝率は上がると思いますけど・・・」
と冷静に返事をする。
「桜子ちゃん、それで問題ないの?」
緒川は、眼鏡の奥で不安そうだ。
「はい、朋ちゃん。テストに関しては、この桜子にお任せ下さい。勿論、先生方にも、ご協力も頂きたいのですが」
と笑った。
もっとも、全国総合第一位の言葉は、実に頼もしげである。
睦月は、ニッコリ笑い、
「僕は、協力させて貰うからね」
と言った瞬間、職員室にいたあちこちの女性教師も立ち上がり、あたしも協力するわと皆んな口を揃えた。
また、女性教師にいい所を見せたい男性教師達も、鷲尾、俺達も協力するぜと親指を立てた。
「ご協力感謝致します」
桜子は教師達に深々と頭を下げる。
和やかな雰囲気が、職員室を包んだ。
暫くした後、本来、桜子を呼び出した橘が声を掛けてきた。
「鷲尾、来てくれたとこ悪いけど、ちょっと一緒に理科準備室まで来てくれる?」
桜子は、はいと答える。
「睦月先生もいいですか?」
橘は睦月も誘った。
「構いませんよ」
睦月もにこやかに応じる。
《睦月先生も呼ぶって事は、ヤバめの話かな?》
桜子は不安を拭えないまま、橘の後を睦月と追った。