ep.129 怪しい五つの光と待ってた二人
直子は、首を傾げると、
「霊感ですか?凄くって訳ではないですけど・・・、極たまに見える時があるんですよ」
藍はうんうんと頷き、
「まぁ、世の中見えない方が、幸せって事も有りおすからなぁ。気にせんよし」
藍の目が怪しく光る。
「そっ、そですね。気にしない事にします」
直子は、ぞくりと背中を震わせる。
まるで直感が、本能が、この話はヤバいと告げているかの様に。
藍は、もう一度瞳の深い場所を鈍く輝かせ、
「それがよろしおすなぁ」
直子は、問答無用で頷く。
顔を直子が上げた瞬間には、先程の妖しさはなく、天使の笑顔の藍先輩がいた。
《き、気のせいよね・・・》
藍の一番ディープな処を垣間見た気がした。
気分を変えようと、窓を開け息を深く吸い込む。
流れる景色の中に、富田森の文字が見えた。
《もう、富田森!あと少しで、ゆっきーに会える》
もし、本当に霊感がある者が、走行しているキューブを見たならば、屋根の上に五つの怪しい光を見たはずである。
声が聞こえてきた。
『おい、じーさん。夜中ふらふらしてたき、見られとるが』
『ほっほっほ、昨夜は満月やったし、たまに月の光を浴びると霊力が上がってのー』
『嘘付け。じーさんは単に女子高生の寝姿が見たいだけじゃろ』
『そう言うな、以蔵よ。主は、本当に女より剣よの~』
『天下の大陰陽師が、こんなに女好きとはのー』
『ほんに、晴明様は昔から女好きどしたな。ウチは帝一筋どしたので、安心どしたけど』
『ウチらは、時代が違うし。なー、写楽はん』
『そうですね、私は江戸でしたから』
『ほっほっほ、島原遊郭は、たまにフラフラ空から見ておったよ。主と山南の営みもな。明里』
『うっ、この変態!』
『こらこら、そう怒るでない。痛っ、嘘じゃ嘘じゃ』
『はぁ~、自業自得ぜよ・・・』
『ほんに』
ローズが車を病院の駐車場に入れると、見覚えのあるバイクが並んで2台停まっており、傍らに持ち主が楽しげに談笑していた。
藍が窓を開け、嬉しそうに二人に声を掛ける。
「桜子ちゃん、こころちゃん、ウチらも来ましたえ~!」
藍は、いつもながら元気であり、そして、窓から入る春風が気持ち良かった。