ep.127 仇を成すならば、殺るまでの事
睦月は頷き、
「あぁ、その直斗だが、誤解してるぞ、巧馬。アイツは、生真面目なだけだ」
京也も、巧馬を諭す様に、
「直斗の従兄弟として言わせもらうならば、他人に厳しい分、自分にもそれ以上に厳しいんだよ。妥協を許さないストイックな性格なんだね」
巧馬はため息を吐き、
「そんなものか・・・」
睦月はニヤリとすると、
「それから、部屋はお前達と一緒だからな。一室空けてやってくれ」
巧馬と京也はお互い顔を見合わせ、
「え”~~~」
睦月は、目を細め耳を澄ます。
皐月の愛車・セリカGT-FourAのエキゾーストノイズが聞こえた。
「どうやら、皐月が帰ってきたようだ。今日はご苦労。また連絡する。では、散れ」
「はっ」
合図と共に巧馬と京也は頷き、ベランダから飛び出して行った。
彼らの存在は、皐月にも秘密なのである。
巧馬と京也が出て行って暫くすると、玄関の扉が音を立て開き皐月が帰って来た。
雪丸がご機嫌な様子で、皐月に飛び掛かる。
「雪丸~、ただいま~。こら、くすぐったいから」
少しの間、雪丸を撫でてやった。
皐月がリビングに入ると、睦月は既にソファーで寛いでおり、
「どうだった?徳さん?」
皐月が反対側に座ると、大きくため息を吐き、
「兄さん知ってたの?あの人が変態だって」
睦月は大袈裟に、
「初耳だなぁ、神経質な男とは聞いているし、俺もそんな印象を持っているが、どうかしたか?」
しかし、兄の口元がニヤついているのを皐月は見逃さなかった。
《まぁ、知っていて当然よね。男になら対応キツいだろうし、あの徳野という男・・・》
睦月は、いかにも理解っているんだろ?とでも言いたげな口調で、
「ま、仇を成しそうならば、殺るまでの事だが・・・」
皐月は、口答えした処でどうにもならないのを知っているので、肩を竦めると、
「まぁ、いいわ。処で北海道行き、チケット取れた?兄さん」
睦月は予約番号の書いたメモ書きを、皐月に渡し、
「収穫は有った様だな」
皐月は怪しげに微笑むと、
「ええ、面白い展開になりそうよ。この一件、実は・・・」