ep.124 恋多き乙女とご縁
「何か凄いですね。とっても大事で大切なヒトって。しかも、何人もいるなんて・・・」
藍はまたクスクス笑い、
「そーどす?ウチにしたら普通どすけどなぁ」
直子は、真顔になると、
「彼氏達に言われないんですか?他の男と別れてくれって」
藍は少し困った顔をし、
「ん~、男はんだけ違うし、女の子もいてますえ。それから、彼氏彼女ではありおへんし」
直子はため息を吐くと、
「はぁー、藍先輩は恋多き乙女なんですね・・・」
「そうどすなぁ、ウチは皆んな大好きどす。桜子ちゃんも、こころちゃんも、以蔵ちゃんも、晴明ちゃんも、皆んな皆んな大好きどす。もちろん、直子ちゃんも大好きどす」
直子は、学園で一二を争う美少女の先輩に大好きと言われて、かなりドキッとした。
顔を真っ赤にし、
「あっ、アタシはそっちの気はありませんけど、藍先輩も尊敬してますから」
藍は天使の笑顔で直子の頬に優しくキスをすると、無邪気にギュッと直子を抱きしめ、
「おおきに、直子ちゃん」
直子は更にもう一段真っ赤になり、照れてしまった。
そんな直子を尻目に、藍は携帯を取り出すと、メールの相手を確認する。
瑠奈からだった。
件名:ぉ願ぃ
本文:助けて欲しぃ女の子が居ます。皆んなの力を貸して下さぃ。女の子の名前は、稲美雪江ちゃんとぃぃます。
藍は手早く返事すると、1分もたたないうちに、例の着うたが鳴った。
藍はメールを見る。
件名:RE:RE:ぉ願ぃ
本文:ぁりがと、藍ちゃん。ァタシ達は富田森記念病院に居ます。待ってるね。
藍は、まだ呆けている直子に、
「ちゃんと、直子ちゃんの思いは、神さんは見てはるみたいどすな」
我に帰った直子は、
「はっ。どういう意味ですか?」
「それはどすな、直子ちゃんとこころちゃんがご縁が在った様に、雪江ちゃんもウチらのメンバーと接点が在ったって事どす」
直子は目を見開き、
「それって、もしかして・・・」
藍は、にぱぁと笑い、
「あい。そうどす。唯一、寮に住んでいないメンバー、瑠奈ちゃんどす。雪江ちゃんは、瑠奈ちゃんとどうやらご縁があったよし、良かったどすなぁ」
瑠奈は、ちょっと待ってねと言うと、メールを打ちだした。
雪江の問題解決と保護の件である。
こんな時のメールを打つ相手は、藍もしくはベスである事を瑠奈は知っていた。
恐らく、桜子とこころは、忙しく走り回ってるからである。
返事は直ぐに帰ってきた。
瑠奈はメールを見る。
件名:RE:ぉ願ぃ
本文:了解どす。
丁度、よろしおました。
こちらも、雪江ちゃんのお友達の直子ちゃんからの依頼で、動いてるよしご安心を。☺
今は、二人は何処どすか?
瑠奈は手早くメールに返信すると、藍からのメールを雪江に見せ、
「ほら、雪江ちゃん。直子ちゃん、ァナタの為に動いてくれているよ。良かったね」
雪江の目が大きく見開き、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「なお・・・」
「ぁー、また泣ぃちゃダメだよぉ。雪江ちゃん」
そう言って、瑠奈は雪江を抱きしめる。
「瑠奈先輩・・・」
「ぅんぅん。まっ、ぃっか。泣くだけ泣ぃたら、笑顔になろ。後、1時間もしない内に、瑠奈ちゃん達が、ァタシ達を迎えに来るから、落ち着ぃたら病院に戻ろ」
春風が二人を優しく包む、空は高く雲一つ無い。