ep.123 とって大事な大切なヒト
食器を洗い終わった藍は、手をタオルで拭きながら、
「さて、直子ちゃん。食器直し終わったら、雪江ちゃんにメール打って、何処に居るか、場所聞いておくれやす。ウチは瑠奈ちゃんに、場所聞くよし」
直子は、ローズとベスが拭き終わった食器を棚に片付けつつ、素直に答える。
「はーい。藍先輩」
直子が気が付けば、ローズとベスも、更に言うならば藍も食器を直すのを手伝ったので、あっという間に終わってしまった。
藍は、にっこり笑い、
「皆んなでやると、楽勝どすな。ほな、ローズちゃん、今から20分後に車出しておくれやす。ウチらはリビングで待ってるよし。ベスちゃん、後お願いえ」
そう言って、ペこりと頭を下げた。
「イイヨー、着替エーテクルネ」
ローズは、そう告げると厨房から出て行った。
「アタシも部屋戻るね」
ベスも、ローズの後を追う。
藍は直子に顔を向け、
「とりあえず、ウチらはリビング行って、一緒にメール打ちましょ」
そう言うと、直子の手を繋ぎ厨房を後にする。
直子は内心、
《これ、男子が見たら、羨ましがるんだろなぁ~、藍先輩だもん。手を繋いでるの。しかし、先輩方って、ホントに綺麗だったり、可愛かったり、それでいて、それを鼻にかけず、何か秀でてるんだから、凄い人達よね・・・》
リビングのソファーに二人が座ると、藍の携帯が鳴る。
♪~デス、デス、デス、デス、殺っちまえ~、お前ら全員、皆ゴ・・・♪
直子は、かなり驚き、
「藍先輩、凄い着うたですね。それってヘビー・メタルですか?クラスの男子にも好きなのいますけど」
藍は首を傾げると、
「ん~、コレはウチの趣味っていうより、以蔵ちゃんの趣味どす。以蔵ちゃんの話やと、これは“デス・メタル”言うらしいどすな」
「えー、藍先輩って、メタラーだったんですか?」
藍は少し困った顔をして、
「う~ん、ちょっと違いおす。ウチは何でも聞くよし。でも、あえて言うなら、ヘビー・メタルなら、“メタリカ”さんが好きどすな。演奏上手いし。パンク、クラシック、演歌、何でも音楽は大好きどす」
「そうなんだ・・・。藍先輩って、音楽が凄く好きなんですね。でも、さっきの以蔵さんて、彼氏ですか?彼氏の好きなバンドを着うたって、有りですよね~。でも、男子が藍先輩に彼氏が居るって知ったら、皆んな卒倒しますよ」
藍は、クスクス笑い、
「直子ちゃん、以蔵ちゃんは彼氏違うえ」
直子はかなり驚き、
「えっ、彼氏違うんですか?だったら?」
藍はさらっと言う。
「以蔵ちゃんは、ウチにとって大事な大切なヒトえ。もっとも他にも居るんどすけど」