ep.121 二つのお願い
「うわっ!雪江、喜ぶと思います。ありがとうございます」
直子は目を細め、自分の事以上に喜んだ。
ベスは席に座り直し、
「気にいってくれると、いいな」
直子はベスの不安を掻き消す様に、
「絶対、気にいります。アタシが保証しますよ。アタシ、今、最っ高にご機嫌ですから。でも、やっぱり、ベス先輩に何かお礼したいな・・・」
ベスは首を軽く横に振り、
「いいの。アタシがあげたくなったんだから、でも、そこまで言ってくれるんだったら、二つお願いしていい?」
直子は微笑み、
「何なりと、ベス先輩」
ベスは、自身のブレスレットを差し出し、
「じゃあ、一つは、この黄色いトパーズを撫でてあげて、“ありがとう”って言ってあげてくれるかな?」
直子は素直に応じ、
「コレで良かったですか?」
少し不思議な事が起こった。
直子のペンダントトップの月桂樹が少し大きくなる。
「えっ、えっ?何か少し、ほんの少しだけど、大きくなった気が・・・」
ベスは囁く、
「あら、アナタ、ドワーフ達に気にいられたみたいね。彼らの作り出すアクセサリーは時折、不思議な事が起こるの」
直子は、理解出来ず目を白黒させて、
「そ、そうなんですか?か、彼ら?このネックレス、ベス先輩の手作りじゃ?」
ベスは右人差し指を口元に持っていくと、
「うーん、まぁ、協同制作みたいなモンかなぁ・・・。ははっ、余り気にしないで」
やっぱり仕草は可愛いかった。
直子はペンダントトップを手に取り、目を懲らして見る。
月桂樹に1ミリにも満たない文字で、何か刻まれている。
「ベス先輩、コレ、何て刻まれてるんですか?」
ベスは、優しく説明した。
「それはね、“直子と雪江の友情が永遠でありますように。”って刻まれているの」
「本当ですか?雪江のにも?」
「ええ、本当よ。それから、もう一つのお願いだけど・・・」
直子は、息をゴクリと呑み、
「はい」
「難しくはないわ。もし、将来、自分の人生を悩んでいる女の子と出会ったら、その時には、自分に出来る範囲でいいから助けてあげて欲しい。簡単そうに見えるけど、難しいわよ?」
直子は素直に頷き、胸を叩く。
「お任せ下さい!ベス先輩。今の言葉、鈴木直子、胸に刻みました」