ep.120 ベスからのプレゼント
「はっ、はい。いや、それはですね・・・」
「ひょっとして、アタシに関係してる事とか?」
ベスは悪戯に笑う。
見透かされた直子は、照れ、
「はい。ベス先輩、座って何か古そうな分厚い皮張りのご本読んでましたよね?」
ベスは、頷くと、
「あ、アレね!あれは古代ゲール語で・・・、あっ、ゲール語って言っても理解んないか?」
直子は大きく頷く。
正直な娘ね、ベスは思った。
「古代ゲール語ってのは、昔のアイルランドの言葉なの。それで、書かれている本で、内容はおまじないみたいなモノね。アタシも全て理解る訳ではないんだけど・・・」
嘘である。
本当の内容は、かなり高度な魔術書だったりするのだ。
「16歳の誕生日に、コレと一緒に、母方のおばあさまにもらった本なの」
ベスは、そう言って左腕を差し出す。
不思議なブレスレットが輝いていた。
銀色に輝く地金に、中心にクリスタル、そして、その両脇に色とりどりの四つの宝石(ルビー、サファイア、エメラルド、トパーズ)が散りばめられており、何やら言葉が刻まれていた。
直子は、目を見開きブレスレットに見入る。
「うわっ、綺麗~!」
綺麗と言われた事により、ブレスレットは輝きを増したように見えた。
「褒めてくれて、ありがと。この子達も嬉しいみたい」
ベスは不可解な言葉を発して、直子に優しく微笑むと、
「実は、アタシから直子ちゃんにプレゼントがあります」
ベスの急な申し出に、直子はかなり驚き、
「え?ホントに!やったぁ!」
ベスは頷き、直子に目を閉じる様に促した。
直子が目を閉じると、ベスが後ろに回った気配がして・・・。
次に、ベスが『目を開けていいわよ』と告げた時には、直子の首には、銀色の月桂樹とクリスタルをあしらったペンダントトップが着いた極細のネックレスがぶら下がっていた。
不思議な事に全く重さを感じない。
「うわっ、いいんですか?こんな高そうなモノ?」
ベスは満足げに、
「いいの、いいの。それよか、気にいった?」
「はい、とっても!」
「実は、もう一つ有ります。コレは、あなたのお友達の雪江ちゃんの分」
そう言って差し出したネックレスは、月桂樹の代わりに雪の結晶をモチーフにしたネックレスだった。