ep.118 碧眼の先輩
聖クリ・聖マリア寮の食堂にいる直子は、目の前にいる碧眼の先輩に少し緊張気味に話していた。
昨日から事件の為、学園のスーパースター集団の中にいるのだが、日本人ならまだしも、今、直子のフォローしてくれているのはイギリス人のエリザベスだからである。
しかも、直子ははっきり言って英語が苦手だ。
意外だったのは、エリザベスが日本語が堪能で、聞けば三才から神戸育ちとの事!か・・・。
なので、直子は自身の下手な英語を披露しなくて良かったと思っている。
英語を話さなくて気をよくした直子は、エリザベスから正しい紅茶の飲み方を教えてもらいながら、今朝の事を思い出していた。
朝早く桜子とこころは、テキパキと身支度をすると、二人とも『また夕方ね』と言って出て行ってしまったし、藍に至っては、『ウチ、午前中はやる事があるんで、篭らなアカンのどす。堪忍やけど、昼まではベスちゃんとローズちゃんの指示に従っておくれやす』と笑い、寮の上層階に上がってしまった。
直子が寮のリビングで待っていると、バレー部の神崎瑞希とエリザベスが談笑しながらやって来て、『朝練行くよ』と声を掛けた。
エリザベスの話だと、ローズはバスケットボール部の朝練に参加しているので、既に寮を出かけているとの事。
そして、『今日は宜しくね』と挨拶された。
朝練に入ると、昨日桜子に話した事もあり、いつもの身体の切れが戻ってくるのを感じ、
《今日はいい感じでスパイクが打てる!》
付きっ切りで直子の指導をしていた瑞希も、昨日との違いを感じたのか、
「直子、その感じでよか」
褒められると素直に直子は喜び、
「先輩のトスがいいからです。セッターとしても、先輩才能凄いですよ」
「馬鹿言わんの。ウチには名セッターの二上先輩がおるんやから」
もっとも、瑞希は、この会話をきっかけにセッターの事も気にかける様になるのだが・・・。
ふと、エリザベスに直子が目をやると、分厚い本を読み、手を動かしながら、なにやら呟いていた。
また、体育館の反対では、こころとローズがバスケットボールの練習に参加しており、二人とも身長とジャンプを活かして、派手なダンクを決めている。
思わず直子は、感心すると言葉を漏らした。
「凄いっすね、こころ先輩とローズ先輩」