ep.116 藍の独り言?
聖マリア寮の五階の個室で、月刊フローレンス用の“超新撰組”の続き新作を描き上げたもう一人の覆面漫画家“神在月あい”先生こと隼人藍は、伸びをすると何もない空間に向かって笑って話しかける。
「写楽ちゃん、お疲れどしたなぁ~」
心の中に女の声が響く、
《今回は、なかなか白熱した展開が描けました》
藍はミルクティーをすすると、
「ウチも面白いと思います」
《へへっ・・・。藍が面白いって言うなら、読者さんも喜んでくれるでしょ》
「あい、そーどす。写楽ちゃん」
別の声が心の中に響く、若い男の声だ。
《なぁ、藍、写楽。たまにはワシら勤皇の志士にも、もちっとカッコよく 描けんき?これじゃあ、坂本さんや武市先生にも、顔向け出来んちや》
藍は、にぱぁと笑い、
「まぁ、そのうちどすな、以蔵ちゃん。ん。それはそうとして、皆んなは今回の件、どう思てるんどすか?」
以蔵は、首筋をかき、
《俺は馬鹿じゃき、詳しくは解らんが、あの女子達は護ってやらんとイカンと思うぜよ》
《ウチも、以蔵はんと同じ意見どすな・・・》
藍の心の中に、先ほどの写楽とは違う女の声が囁く、かなり色気有る声で、
「明里ちゃんも、そー思うんや」
《そーどす》
別の女がゆっくりした口調で藍に囁き、
《ウチもそー思いますなぁ》
「小督ちゃんも?」
《あい・・・》
先ほど写楽ちゃんと呼ばれた若い女の声が、
《私は、背後に何か有ると思います。お話やったら、その方が面白いし・・・》
藍はもう一口、ミルクティーをすすると、
「なるほどなぁ、写楽ちゃん」
《はい・・・》
《爺さんは、どう思うき?》
以蔵が爺さんと呼んだ新たな男が、答える。
《ワシは、あの直子ちゃんじゃったか・・・、の話じゃが、確かにもっとも。しかし、問題の根本を突き止める必要が有ると思うのぉ。式神使って調べてみるか?藍》
「あい、それがよろしいやろなぁ、晴明ちゃん」
《うむ・・・》
「ほな、晴明ちゃん、お願いします」
刹那、藍の身体がビクンと振動する。
藍(晴明)は引き出しから紙を三枚取り出すと、さらさらと呪詞を書き、折り鶴を折る。
藍(晴明)が息をふうっと吹き掛けると、折り鶴は姿を小鳥に変え命を宿す。
藍(晴明)は微笑むと、少ししゃがれた声で小鳥たちに頼むと命じた。
藍(晴明)が窓を開けると小鳥達は羽根を羽ばたかせ、ぴぃと鳴き飛び出していく。
藍(晴明)が小鳥達を見送って暫くした頃、部屋をローズがノックし声を掛ける。
「Hi! 藍chan, Why don't we take a lunch, now? (ハイ、藍ちゃん。お昼ご飯食べいきましょ?)」
藍は、何事も無かった様に振り返り、
「あー、もうお昼ご飯どすなぁ。食べに降りましょ」