ep.115 山崎の決意
忠志達も殴られた所をさすりながら、山崎倣い土下座し詫びた。
「組長さん、姐さん、すんませんでした」
男達の声が墓地に響き渡る。
山崎は立ち上がり、振り返って弟分達を見回し、
「これで、一月程、お前ら、身を隠してくれ」
そう言って、山崎は紙袋から封筒を取り出すと、忠志達に封筒を一人づつ渡していく。
封筒の中身は、一人百万円有った。
金を見て弟分達は驚く。
忠志が、口火を切り、
「秀ニィ、これじゃあまるで、手切れ金やないですか・・・」
山崎は頷き、少し哀し気げに、
「あぁ、手切れ金や。そう思ってくれてもかまへん。岸田を終わらせるのは、俺だけでエエ。ケツ拭くのはな・・・」
「そんな・・・、俺ら全員連れてって下さいよ、アニキ!」
山崎は孝弘に近付き、もう一度殴った。
「アホかっ!俺らが全員が動いたら、それこそ上の“天道白虎会”の総会長から、取り潰しの命が出るわ」
義雄が山崎の身を安じ、
「でも、そやったら・・・」
山崎は弟分達を見回し、
「だから、お前ら・・・。お前らしか、信用出来るのおれへんから、頼むんや!俺が墓前に代紋置いたの見たやろ?組を辞めたチンピラが、ヤクザを殺めるだけの話や」
言い付けに従う覚悟を決めた義雄が問う、
「今の会長は?どうされるんで?」
山崎はスーツの内ポケットから一通の手紙を取り出し、義雄に渡す。
封筒の表には、天道白虎会 総会長 虎谷厳ノ介蔵様とだけ書いてあった。
山崎は、一度だけ深呼吸し、話を続ける。
「俺の事がニュースで流れたら、この手紙をすぐに総会長に、秘密理に渡してくれ。方法は、大阪府警本部にお孫さんの鉄矢さんが居るから、あの人に渡せば総会長に届く。上手くいっても、いかんでも、親父さんと姐さんが残したもう一人の跡取り、雪江お嬢さんをお前らが護り、そして、お嬢さんを中心として、新しく“河内稲美会”を再生させてくれ!俺がそれが俺らが先代の組長さんと姐さんに出来る最大の恩返しちゃうか?この通りや。頼む!」
そう言い放つと山崎は、石畳に正座し、弟分達に土下座した。
山崎はそのまま動かない。