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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
二日目
112/243

ep.112 義理の世界に生きる人間

大阪府河内長原市の郊外にある歓真寺の駐車場に、数台の黒塗りの車が停まっていた。

中には山崎のレクサスも在る。

山崎は墓地へ続く階段を上がりながら、一時間程前、嫁の美沙と交わした会話を思い出していた。


「すまん、美沙。いきなり金を用意してくれなんて言って・・・」

山崎は自宅のリビングで、嫁の美沙に頭を下げた。

「何言ってるの、アンタ。これでも仮に、ウチ、ヤクザの女房やで・・・。アンタのあんな悲痛な声聞いたら、せなアカンやん」

大きいお腹を揺らしながらも、心配かけまいと笑う。

「全部で幾らある?」

美沙は、少し悪態を付き、

「とりあえず、現金で1000万円は用意出来たわ。今日は土曜日やし、窓口閉まってるし、大変やってんよ。月曜やったら、あと1000万は用意出来たんやけどね・・・」

山崎は、もう一度頭を下げ、

「ホンマすまん。美沙、急やけど、コレ持って黙って吉野の実家帰ってくれ」

山崎は、美沙に100万円の束を三つ渡す。

美沙は動揺し、

「アンタ、ウチと別れる言うんか?」

「アホっ、違うねん。違うんや。ココおったら危なくなるねん。せやから、実家で安心して赤ん坊産んでくれ。落ち着いたら、俺。絶対迎えに行くから・・・。もし、万が一、俺以外の誰かから連絡あっても信用するな。何があっても、知らんと言うてくれ・・・」

美沙は、顔を真っ青にし、

「アンタ。今回、そんなにヤバいんか?」

山崎は、苦虫を噛み潰した様な面持ちで、

「ああ、ヘタしたら抗争になる。しかも、身内同士の・・・」

美沙は、山崎に抱き着き泣いた。

「嫌や、嫌。ウチ、アンタと一緒におる!」

山崎は、美沙を身体から引き離し、頬を叩いた。

鋭い音がリビングに響く。

「アホっ!お前、妊婦やろがっ!腹のガキどないすんねん」

「うっ・・・、くっ・・・」

山崎は限りなく優しい口調で、

「あんな、美沙。俺もお前とずっと一緒に居たいわ。惚れた女やからな」

美沙は、溢れ出す涙を止める事が出来ず。

「そっ、そやったら何で・・・?アンタ」

「俺は義理の世界に生きてる人間や。詳しくは言えへんけど、今回ばかりは、義理を通さなアカンねん。そやないと、俺が俺で無くなってしまう・・・。少なくとも、ヤクザやってても、人間としては胸の張れる男やったと、言われたいんや。理解(わか)ってくれ、美沙!」

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