ep.110 ファーストキスは雨の日に・・・
「そうですか。じゃあ、次に機会あれば、鷹見・・・、じゃなかった、こころ先輩に頭下げます」
瑠奈は、にぱぁと笑い、
「ぅん。『気にする事なかょ~』って、きっと笑ぅから。でも、どぅして、こころちゃんが雪江ちゃんの家に?」
「はい、それは今から話す事に関係しています。」
雪江は深刻に告げた。
雪江は、身に降り懸かっている肉親による哀しい事実と、そして、親友の直子に起ころうとしている悲しい出来事を瑠奈に話した。
瑠奈は、うんうんと頷き、
「実はね、ァタシも有るんだ・・・。暴行された事」
「え?」
意外な告白に雪江は驚く。
「中学二年の時から一年間、ほぼ毎日・・・」
「え?嘘・・・。瑠奈先輩が・・・」
瑠奈の告白はかなりの衝撃を与えた様で、雪江は凍りついた。
「でもね、ハルナが現れて、ァタシを助けてくれたの」
「ハルナさん?」
「ぅん、ハルナ。一緒に住んでる親戚の女の子。キャバ嬢なんだけどね。口は悪ぃけど、強くって優しぃんだ」
雪江は頷き、
「そのハルナさんが・・・」
「そぅ。ハルナがァタシを助けてくれて、暫くしてから、お父さんが正樹を連れて帰って来て・・・」
また知らない名前が出たので、雪江は、
「正樹さんって?」
瑠奈は少し照れて、
「ぁっ、ゴメンなさぃ。病院に入院している彼氏。プロボクサーなんだ」
「あー、そうなんですか。ボクシングされているんだ」
瑠奈は大きく頷き、
「ぅん。ぉ父さん、トレーナーだったから。で、正樹はぉ父さんの元で、住み込みでトレーニングしててね。気付ぃたら、ァタシは正樹を何時も目で追ぃかける様になってて、どんどんどんどん好きになってぃったの」
瑠奈は、少し遠い目をして語った。
「そうなんだ、それで?」
「正樹も、ァタシの事を好きになってくれて・・・。告白されちゃった」
「良かったじゃないですか~、瑠奈先輩」
瑠奈は素直に照れ、
「で、ぉ父さんには内緒で隠れて付き合ぃだしたの。今でも最初のキスは覚ぇてる・・・。雨の日だった」
雪江は頷き、静かに瑠奈の話を聴き入っている。