ep.109 鷹見先輩って信用出来ますか?
「さて、デザート、デザート。もぅ、泣ぃちゃ嫌だょ。はぃ、林檎」
瑠奈は林檎のウサギを雪江に差し出す。
雪江は受け取り、じっと林檎のウサギを眺める。
改めて、瑠奈は尋ねた。
「雪江ちゃん、林檎のゥサギちゃんに思ぃ出が?」
雪江は黙って頷き、
「はい、お母さんがいつもスケートの大会ごとに、上手くジャンプが出来る様にって、必ず林檎のウサギをデザートに入れてくれてました・・・」
瑠奈は納得した様子で、
「それでかぁ、でもゴメンなさぃ。思ぃ出させちゃって」
そう言って、ペこりと頭を下げた。
雪江は首を横に振り、
「ううん。そんな事ないです。アタシ、嬉しかったです。綺麗な頃の自分を思い出して」
瑠奈は、不思議そうに、
「綺麗な頃?雪江ちゃんは、今も綺麗だょ」
雪江はもう一度、首を横に振り、少し苦しそうに、
「違うんです・・・。瑠奈先輩、話聞いてもらってもいいですか?」
瑠奈は、雪江の真剣な眼差しを真正面から受け止め、優しく微笑んだ。
「ぃぃょ。ァタシで良ければ」
「ありがとうございます。最初に聞いていいですか?鷹見先輩は信用出来る人ですか?」
瑠奈はにっこり笑い、
「ぅん。こころちゃんはね、凄く優しくて強ぃ女の子だょ。“はねくみ”のメンバーの中では、1番面倒見が良ぃょ。でも、どして?」
雪江は瑠奈の答えに安心して、
「それでですか。昨日、友達の直子と一緒に、ウチに来られました。その時、アタシ、冷たい態度を取っちゃって・・・。瑠奈先輩、鷹見先輩に謝って・・・」
瑠奈は言葉を遮る。
「こころちゃん」
「えっ?」
「だーかーら、こころちゃん」
「?」
「理解んなぃ?」
「はい・・・」
瑠奈は諭すように、
「鷹見先輩って言っちゃダメだょ。こころちゃんには、こころ先輩って言わなきゃ。そしたら、『どぅしたと?』って笑って振り向いてくれるよ。こころちゃんは、心の広い全く根に持たなぃ女の子だから、何か有ったとしても、『よかよか、機嫌悪か事も有るとよ』って、水に流してくれるょ」
瑠奈は、こころの博多弁を真似てみせた。