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はねくみ☆セブン  作者: こころ龍之介
一日目
10/243

ep.010 涙

直子も立ち上がり、こころ同様に頭を下げた。

「こころ先輩、マリさんて、聖クリの卒業生なんですか?」

「うん。ウチも最近知ったったい。なんでも8年ほど前の卒業やったとよ。んでね、直子、ウチの担任の朋ちゃん知っとっと?」

「こころ先輩の担任って、英語の緒川(おがわ)先生ですよね?」

「うん。朋ちゃんも聖クリの卒業生で、マリちゃんと同級生やったとよ。それはともかく、直子、ここは一つ食べるったい」

こころは、フォークを持ち、苺のショートケーキを見詰めた。

目が怪しく光る。

「いただきまーす」

掛け声と共にこころは器用に三分の一をフォークに取ると、これでもかと思わせるくらい口を開け、パクリと頬張る。

こころの頬っぺたは、胡桃の実を頬張るシマリスの様に膨らむ。

直子は呆気に取られるが、ぷっと笑い、

「アタシも負けませんよ」

と豪快なこころの真似をした。

こころは直子を見て頷き、ケーキを飲み込む。

そして、オレンジジュースを啜り、

美味(うま)か~」

と幸せな表情に破顔した。


こころは、今度は水を一口含み、飲み干すと真顔になり、

「練習でみぃにキツか当たられたから、凹みよるって思いよったけど、どうやら違うったいね」

直子の顔に緊張が走る。

表情を読み取ったこころは、

「さっき言いよった、雪江のお兄さん、それが関係あるんじゃなかね?」

直子は完全に沈黙し、手を止めるとぽろぽろと泣き出す。

「直子、どうしたねっ」

驚くこころに、泣き顔の直子は、

「こころ先輩、あっ、アタシ、アタシ、何をどうしていいのか」

と漏らすと、うわーんとテーブルに突っ伏してしまった。

こころは直子の横に座ると、右手を直子の肩に回し、ゆっくり身体を起した。

「なんね。直子、可愛い顔が台なしったい」

と、スカートのポケットから取り出すと直子の顔を拭いてやる。

安心した直子は、

「先輩っ・・・」

とだけ言うと、こころの胸に顔を埋め、また泣き出した。

こころは軽くため息を()くと、直子の髪を優しく撫でてやる。

「好きなだけ泣いたらええ。何があっても、ウチが直子を護ってやるったい。安心してよかよ」

この一言が、直子の心の呪縛を解き放ち、気持ちを正常に戻させた。

勇気付けられた直子は、愚図つく顔を上げ、

「先輩、聞いてもらいたい事があります」

と真っ直ぐにこころを見る。

迷いはもう無かった。

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