2話 現状
シャルが性的な意味で襲われた夜、エリオスら3人はござのようなものがひいてある場所で夕飯を食べていた。ちなみにメニューはパンと豆と水である。
「おい、エリオス、貴様の缶詰少しくれないか?もしくはウィルまだあったりしないか?腹が減って仕方ないんだ。」少しやつれ気味のシャルが他の食べ物を要求する。なお、エリオスの食事を含めて2人前は既に食べている。
エリオスはシャルの要求を無視し缶詰の中身を口にかきこみながら出所をウィルに聞く。ウィルの横では軽く絶望しているシャルがいたが気にしない。
「この缶詰は、いつ手に入れた?だれから手に入れた?見張りの奴らからか?」
「いっぺんに聞かれても答えられないよ。ただボクの体を使って満足した見張りの男が言うには、その缶詰は3ヶ月ごとに搬入されてきたらしいよ。
「場所とかは?後、何人で運んでいるかとか、何を使ってここまで運んできたとか?」
「商業国家『ラノア』から運んできたらしいけどかなりの時間がかかるって言ってた、何人かはわからないけど、馬の世話が大変って言ってたから馬車だね。」
「そりゃ良かった、馬車なら気づかれずに忍び込めるからな、ここに来る前に聞いた学術都市『アークライン』で開発された転移魔法陣とかじゃなくてな、あれの起動法なんて知らねぇし。」
「話を聞く限り、ここから遠いというなら恐らくここは神聖教会『ルミナス』の近くだろう。不幸中の幸いと言うべきか【汝、困難に打ちひしがれているものを救うべし】という教えを説いているなら事情を話せば保護してくれるだろうしな。」
絶望の淵から復活したシャルが現在地を確認する。2人もそれにうなづく。
「さてとここから逃げるために後、必要なのは詳しい現在地の把握とこの坑道内の地図に見張りの位置と交代時間、追いかけられた時に使える武器、そんなもんか。」
エリオスが意見をまとめ方針を固める。今までの話から彼等3人がここから逃げるための算段をつけているところで、後ろから声がかかる。
「おい、ガキどもグタグタ話なんかしてねぇでさっさと寝ろ!!ぶん殴られたいのか!!」でかい棍棒を持った豚のような体格というか豚と人間が合体しましたと言われても納得するような男が声を荒げながら壁を殴る。棍棒で殴った壁が粉々に砕け散るのを見て、他の奴隷達も口を閉ざす。その態度に満足したのか、豚男が去っていった後、エリオスは口を開く。
「全く、自分が『転生の儀』でなりたい種族になれなかったからって俺たちにあたるなよ。」
「本当だよねー。嗚呼、ボクたち今年で13だよ。下手したらここでられるの20とかになるんじゃない?転生の儀も受けられるかどうかもわからないし。」言われた通りに寝る準備をしながら、エリオスの言葉を肯定する。
「……なぁ、今更なんだが聞きたいことがあるんだが」
どこか真剣な面差しで聞いてはいけないことを聞くような声色のシャルにエリオスとウィルの表情も引き締まり、緊張した空気が流れる。
「転生の儀って何だ?」
3人の間に沈黙が降りる。たっぷりとエリオスは考え、ウィルは何回もその言葉を反芻する、そして2人はお互いの表情を見て言いたいことを理解し、そしてシャルに向かって口を開く。
「「いっぺん死んでもう1回やり直してこい。(きなさい)」」
この後にシャルが反論するが声が大きすぎたために豚男がやってきて明日の朝飯を抜かれることが決定したのであった。