第0話 笹木、バイトを探す
昔のアルバイト生活を思い出しながら書きました。よろしければお付き合いください。
どうも、笹木ノアです。
母譲りの青い瞳と父譲りの天然パーマが特徴の、普通の女子高校生です。
家が貧乏…というわけではありませんが、お金に困っています。
年頃の女の子というのは、趣味に生きるもの。お金が必要になるのは、当然であり必然なのです。
私の通う私立高校では、長期休暇中のアルバイトは許可されています。
が、如何せん私、特筆するような特技は持ち合わせていないのです。果たしてどのような仕事をすればいいのか、困っていました。
しかし流石は商業科クラスのある高校。色目を使っておいた先生が求人を引っ張ってきてくださいました!
話だけでも聞いてみようかと!思います!
◇職員室
「ホテルのバイトだけど、やる?」
優男を絵にかいたようなこの人が、商業科の情報処理コース担当、中藤先生です。信用に足る先生なのは間違いない…のですが…
…怪しい雰囲気です。現役女子高生にやらせるホテルのバイトとは、果たしてどのようなものなのでしょうか?
「それ、大丈夫な仕事ですか?仕事内容とかは…」
「んんー…清掃(他)って書いてあるから大丈夫でしょ」
「(他)ってなんですか!?」
「さあ…特には書いてないし」
かなり危ない雰囲気です。「清掃」の内容だって、よくよく考えればわからないし…
「でも給料はいいよ?女の子は日給3万円」
「お断りします!!」
足早に職員室を去る私。
日給3万のホテルのバイト(女子希望)なんて、間違いなく危ない仕事じゃないですか!
ていうかそんな求人どっから持ってきたんですかね!?本当に大丈夫かウチの高校!
◇2-C・商業科クラス
「あー、それならなんとかできるかもよ?」
中学からの友達、綺麗に染めた金髪が魅力の堀部トモミちゃんにバイトの話をしたところ、なにやらコネクションを持っていそうな予感がします。
「と、言いますと?」
「アタシの親と縁がある職場があってね。アタシ自身、何回か手伝いに行ってんだ」
なんと、コネ持ちの人材がこんなところにいたとは!灯台下なんとかですねえ。
「で、で、どんな仕事なんですか?」
「んー。ホテルの仕事なんだけどねー」
「!?」
ガラガラとその場に崩れ落ちる私。まさかそんな…近くにいたのに、気付けなかったなんて…
「…ぐすっ………に、にっきゅう、さんまんだからって…そんな…ほりちゃあん…!」
「え、は?なんで泣いてんの?日給じゃないしそんなに給料よくないし…」
「で、でも…ホテルって!」
「一体何を想像したんだよ……別に危ない仕事じゃないって」
「…そ、そうか…普通に考えれば、そうですよね」
いけない私ったら…さっきの話のせいで…
スックと立ち上がり、ほりちゃんの方を向きなおす私。頭は非常にクリアです。
「し、仕事内容はなんですか?」
「ただの清掃だよ、清掃」
せ、清掃…?不穏なフレーズですね。一応「確認」を取る必要があります。
「もしかして、その…ほ…(他)ですか…?」
「他?まあ、他の事する時も無いこたないかな」
ズシャアッ!再び崩れ落ちる私!
「やっぱりか!何て女だ!信じていたのに!援助交際に手を染めるなんて!」
「ちょ、はあ!?でかい声で何言ってんだボケ!!」
スカーン!! 結構強めに頭をぶたれました!
「い、痛いですよほりちゃん…」
「あーもう…ちょっと頭を冷やせ天パ。話はその後だ」
―2分後―
落ち着きを取り戻した私は、ほりちゃんの前で綺麗に正座しています。疑り深いのは悪い癖ですね。
「で、仕事内容だが…」
「はいはい!」
「…支配人に説明してもらおう。放課後空けといてくれ、会いに行くから」
「え、今日ですか!?」
随分と急な話です。
「善は急げってね。もう少しで夏休み入るし、早い方がいいだろ?」
学校側の許可が無ければアルバイトはできません。しかも、アルバイトの許可は休暇前に取らなければならないので、急ぐに越したことはないのは確かですが…まさか話を聞いた初日に顔合わせとは。
というか、
「り、履歴書準備してないんですが!」
「んー?要らないよそんなの。女の子だったら誰でも歓迎らしいから」
…やはり怪しい仕事なのでは!?
不安を胸に抱きながら、私は放課後を待つのでした。