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第三話 捕まった挙句また襲われた。呪われているとしか思えない

「――話しますね。おそらくあいつらは言ってしまえば、人が作った人形です」


 人が作ったものであるということにこの人たちは驚いていた。つまりこの世界の科学の水準は最低でも僕の世界と同じかそれ以下だ。だが、鈴との話を聞く限り、僕やあの機械にはない技術があるのだと推測できる。でなければ鎖帷子を着た女の子が一人だけで、あの巨大な機械を一人ですることは不可能だ。

 術式という単語が会話に上がった。つまり、その『術式』というのがこの世界の機械の代わりを担っているのだろう。


「ですが、僕もあのような高度なものを見たことがありません。僕が見たことがあるのはせいぜい、人と同じくらい大きさのものですし、何よりあんな頭のいい行動はとりません。僕の知る世界の中ではいまだ現在、あんなものは実現しえないです」

「じゃ、じゃあお前は一体どこから来たんだ? その言い分だと機怪とも違う場所からきたように思えるが……」

「いえ、あれらは僕のいた場所からだと思います。僕も初めて見た時にびっくりしました」


 そう、少なくとも僕のいた世界のもので間違いない。確かに技術こそオーバーなものではあったが、使われていた部品そのものは、現代のものとほとんど変わらなかったように思われる。


「これ以上のことは憶測になるので、僕には何とも言い難いです。ですがキカイは僕のいたところでも見ました。僕からはこれくらいしかわからないです」

「……ありがとう。おまえの荷物は大体検査が終わった。危険性はほとんどないとの判断されたので後々返却されるだろう」

「そうですか。では、お待ちしております」


 そういって立ち上がり、連れてきてもらったおじさんについていこうとしたとき、突然揺れた。この感覚は地震というよりは何か大きなものが動いたような感覚だ。揺れは初期微動からの主要道という典型的な地震ではなくロボットのようなもの。もしかしたら上のほうで何か起こっているのかもしれない。

 しばらくして、この奇妙な揺れに慣れてきたところに部屋に一人の男が駆け込んできた。


「た、大変です! 里に機怪が現れました!」

「何! 俺もすぐ向かう! 守りを固めておけ!」

「わかりました!」


 そして、すぐに出て行ってしまった。

 里に機怪が現れた。その事実がどれだけ重いことなのか僕には理解できない。だが、里の存在や座標が秘密とされているのであれば、この場合はかなりまずいというのは容易に想像できる。どうやら僕が尋問された相手の様子をうかがうにやばいのは事実であろう。

 だが、同時にこれはまずいのではないかと思考が走る。

 僕を拾った直後に里への機怪の進撃だ。僕がスパイとして見られる可能性である。この世界風に言うと伏兵ということか。ありもしない疑いを向けられるのは御免こうむりたい。


「ぼ、僕も行かせてください! あいつらについて分かることがあるかもしれません!」


 そこまで考えたところで僕にとってはどうするべきか分からなくなった。積極的な姿勢を見せるのが吉か、それとも消極的な姿勢を見せるべきか。

 今年十六になる程度の人生経験では大人は騙せない。だからここで僕はやけになった。あとから見ればこれはプラスになるのだが、僕としては何もしないほうが良かったような気がする。


「僕はあなたたちと戦いたい! 戦闘はできないかもしれないけど、役に立ちたいです!」


本当どうしてこんなことを言ってしまったのだろう。本当に後悔している。だが、悪いとは思っていない。


~~~~~~


 それからすぐ地上へ出てきた。

 案外尋問室から近いのな、出口。突破されたらどうするとか考えていたが、そもそもお互い出入り口が違うようだったので、僕の入ってきた側には出口はないのだろう。

 問題は今ここに現れているという機怪だ。あいつをどうする。現代の機械の延長線上であるというのであればあいつらは間違いなく水や強い電流や土やほこりなどの不純物とか熱とかには弱いはずだが……。あれ? 案外簡単に倒すことができるよね?

 いや、とりあえずいろいろな攻撃方法で試したのだろう。そのうえで一番効率的な方法を使っているはず。

 そういえば、前見た時の高さから見れば五メートル前後。僕の世界の一般駐車スペースの縦に相当するほどだろうか。あの時は大きく感じたが、周りの建物と記憶で比べてみるというほど大きくないかもしれない。

 あたりを見回すとこの辺は崖の下にあるようで、後ろには掘った入口がある。地下みたいに感じたということはそういうことか。


「とりあえず方向はどこですか!」

「あっちです!」


 本来なら僕の言葉に耳を貸さないだろう人も僕の剣幕に押されたのか、ちょっと戸惑いながらも僕に道を教えてくれた。そして建物が見えてきたのと同時に、振動と人の悲鳴が聞こえてくる。


「あ、あぁ……」


 思わずそんな声が漏れた。そう、それは単なる蹂躙みたいなものだ。幸い、多すぎる標的にあのキカイとかいうやつは少々戸惑ったかのような動きを見せる。その間にも人はどんどん逃げていく。


「行かなきゃ!」


 場所はそう遠くない。もう目の見えるところだ。走れば一分もかからない。

 人が死ぬ。そんな言葉が僕に重くのしかかる。


「もう、あんなことが起こってほしくない!」


 その言葉で自分を鼓舞する。自分の念を強化する。体が感じる苦痛が麻痺していく。酸素が足りなくなった体で、やっとの思いで、あの大きな敵へ着く。ちょうど一人の女の子がこけたのだろう。キカイはその少女を踏みつぶそうとしていた。


「やめろおぉぉぉぉぉ!」


 声が裏返りつつその声とともに僕は走り出す。

 もしかして、今なら世界記録を狙えるのではないかと。フォームも重心移動も全くなっていないのに、思いが僕の体をどこまでも早く動かした。


「はぁはぁ、はぁ」


 呼吸が一瞬できなくなるほど、全力で走った。もしかしたらもう大して動けないかもしれない。


「だい、じょう、……ぶ、かい?」

「はっ、はい……」


 何とかその子を助けることができた。その思いが心に余裕を生んだのか、嫌な思い出がフラッシュバックする。


「早く……逃げて……」

「でも……」


 僕の体はもう今は満足に動かない。あれだけ無茶な加速と駆動をしたのだ。全国レベルの人間ならまだしも、普段自転車しかこいでないような僕の体は結構ボロボロだ。全力で走っても普段の全速力ほどのスピードは出ない。だが、都合がいい。


「早く行け!」


 彼女よりも一人、確実に殺せる人間がここに残ったことで、僕が標的になったはずだ。


「へへっ、せっかく助けてもらったのに……ここで終わりか」


 そういいながらも笑う膝を抑えて立ち上がる。


「ま、まぁ、せいぜい逃げる時間を稼ごうか」


 そんなことを思っていたら、偶然か、僕とキカイの間に何かが立ちふさがった。


「よぉ、機怪。会いたかったぜ。……大丈夫かい?」

「え? ええ」


 目の前に立ちふさがったのは、僕と同じくらいの背丈で、僕と同じくらいの髪の長さをしている。というかほとんど同じだ。まるで僕の生き写しのような……。


「あれ? ドッペルゲンガー? 僕死んじゃう?」

「大丈夫。理由とかいろいろ説明するから。とりあえず離れて」

「う、うん」


 そういって僕は少年から離れていった。全身の筋肉がきしむような感覚がしたが、そこは問題ないだろう。

 少し距離を離してみてみると僕と似ているような気がする。自分の後ろ姿なんて見たことはないが、だが写真で見たような印象を受ける。


「さて、行くよ! みんな!」


 すると、あたりから隠れていたのだろう謎の集団が出てき出した。

 はぁ!? こいつら忍者集団かよ!? 気配をまるで感じなかったぞ。まるで突然現れたかのような……。


『はぁ!』


 そして、目の前から突然キカイが消えた。えっ?


「うし! じゃああとは黒兎隊に任せて撤収!」

『は~い!』


 そしてまた全員消えていった。何が起こったのか理解できないんだけど。


「大丈夫?」

「えっ。あっはい。大丈夫です」


 あっ。ほくろの位置が同じ。

「初めまして。君が小鳥遊聡君だよね」

「はい。でもどうして僕の名前を? それを説明するために、君を引き取りに来たのさ。もともとそういう手はずだったんだ。僕とほとんど同じ見た目の少年が保護されたってね」

「えっ」


 少し考えてみる。僕は僕自身が異世界から来たものだと思っている。言い換えるなら、僕は異世界人。その僕がパラレルの世界から来たというのであればそこにいた本来の僕がどうなるのか考えてなかった。おそらくここにいる少年は異世界の『僕』なのだろう。同一個体みたいなものか。


「じゃあ、こっちについてきて。話を聞かせてほしい」


 そして僕の手を取る。

 男に手を取られてもうれしくありません。だが、ほかにできることもなさそうなので僕は仕方なく彼についていくことにした。


今月中は週一投稿は無視してある程度更新します。

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