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プロローグ

新作投下。週一投稿目指してます

「行ってきまーす」


 僕は靴紐を一度ほどき、足を入れた後再び結びなおす。つま先で地面を軽く蹴り、足の位置を矯正して、玄関から振り返った。

 ……。

リビングのほうからは返事はない。どうやら母はまだ寝ているようだ。

 いつものように返事を待つことはなく、僕は玄関のかぎを開けて学校に向かっていった。


~~~~~


 僕の学校は山を越えたところにある。

 とはいっても、山の頂上を通るわけではなく、ちゃんと整備された道が用意されている。そこは、朝と下校時間直後は人がかなりたくさんいるのだが、夕方、下校時間より前に通るとほとんど人はいない。山道は自転車通学の人にとっては近道ということで体力作りがてら自転車で通学する運動部や、運動不足な教員がよく通る。帰りに通る人は朝ほど多くない。

 平地の回り道を通る人がいるからだ。

 部活で疲れた運動部にとって、上り坂はやはり腰に来るらしい。なので、運動部の四割は平地の回り道を利用して帰る。


 朝の木洩れ日が地面に独特な模様を描く。

 その様子を見ながら自転車をこいで坂を上っていく。

 運動部には所属していないが体力は人並みやや上を自負している。運動部ほどではないが運動部に所属していない人よりは体力はあるだろう。


 夏が近づいてきたこの頃、学校に行くことを苦痛に感じ始めていた。

 自分の居場所がどこにもないような、そんなことを考えてしまう。友達はいるし、別に勉強ができないとかそういうことではないのだが、学校が非常につらく感じる。


「…………」


 非常に憂鬱な気分で、学校に向かう。

 僕がこの山道を通る理由は、坂を下り始めたら戻れないからでもある。

 だからこの坂道は僕の学校生活の生命線でもある。一度学校についてしまえば憂鬱な気分は忘れられる。

 ゆっくりと坂道を下りだす。


 チリチリチリチリとこぐことをやめたタイヤのあたりから音が鳴る。

 そのまま音は間隔を短くしていき、自転車のスピードが上がる。スピードが上がりすぎないように調節しつつ、ゆっくりと坂を下っていく。

 途中から思考を放棄しだして、学校でのことを考え始める。

 きっと、学校に行けば全部忘れられる。


~~~~~


「最近、不審者情報が多く寄せられております。みんな気を付けて帰ってください」


 大して重要な情報ではないといわんばかりにみんなは話に耳を傾けている。

 自分が不審者に襲われるとは思っていないのだろう。


「では、号令をかけて解散をしましょう」


 教師のその一言を待っていたことを表すように張りのある声がすぐに聞こえてくる。クラスの全員が席を立ち、号令をかけ終わるのと同時に席を離れる。


「はぁ、憂鬱だ……」


 そういって、席を立ちクラスを出て真っ先に駐輪場……ではなく図書室に向かう。

 僕はここで図書室が閉まるまで本を読むのが日課だ。ここには夢と希望が集っている。ご都合主義、といってしまうと身もふたもない言い方だが、なんとなくこの世界で憂鬱を感じている僕にはこの図書室(せかい)の物語は夢と希望に満ち溢れていてとても、心地がいい。

 が、


「そろそろここ閉めるから出て行ってくれるー?」

「はい…………」


 下校時間よりもかなり早く図書室は閉まる。

 この後することもないから僕はそのあとすぐ帰る。

 駐輪場に向かい、自転車に乗ってあの坂をまた上る。

 夏も近くなってくると、日が長くなりこの時間帯でもまだ日はあまり赤がかっていない。

 そして、ホームルーム直後でもなく、下校時間近くでもないこの時間帯は結構人通りが少ない。山道であり、この道を通る人のほとんどが学校関係者というのもあり人通りは全くない。


「はぁ、憂鬱だ」


 こういう一人の時は鼻歌を口ずさんだりすると気分が晴れる。


「~♪」


 自分の世界というものは自分の救いとなるが、同時に現実との壁になる。いつだったか、好きなキャラクターがそういったのを覚えている。自分の世界が、現実への壁になる。すなわち世界への壁になる。だから、現実への壁をどのように薄く、なおかつ自分の世界を確固たるものにするのか。

 今の僕はその段階で疲れがたまっているのだろう。

 ふと、それは一瞬のことだった。

 誰もが見逃してしまいそうだったほんの一瞬。

 山道の舗装された道路。ガードレールを超えたその先に人影のようなものがわずかに見えた。


「な、なんだ……? 不審者……?」


 帰りのホームルームで聞かされた不審者のことだろうか。

 ふとそんなことを思った。

 おそらく、十中八九そうだろう。


「警察を呼ぶべきか、それとも様子を見るか……」


 そういいながらも好奇心には勝てないようで、だんだんと、その影に近寄っていく。次第にガードレールが邪魔になったので、それ以上の接近はできなかった。が、先ほどよりもはっきりとその影を認識できた。


「!?」


 そして、わずかにふいた一陣の風が葉を揺らし、擦らせ木洩れ日の光が動く。その人影は、刃物らしきものを持っていた。金属光沢が見えたのだ。

 もう少し近づいて、警察を呼ぼうとカバンの中に手を入れた。


「ええと、番号は一、一、れいっと」


 と、呟きながら携帯の番号は誤って百番が表示される。

 一回消して、再びかけなおそうとしたときに携帯をふと落としてしまった。

 カツンッ


 砂利がむき出しの地面に携帯が落ちた。

 風がやみあたりが無音だったので、音が響く。

 ……その人影が動いた。

 気づかれただろうか。


 幸いすぐそこに止めた自転車がある。おそらく、向こうがバイクや自動車なんかがない限り追いつかれることはないだろう。

 そんなことを考えて、その場から離れようとした瞬間。

 ドシンドシンという音とともにわずかな地響き。もしかすると地震かと思ったが、規則的に響くこの地響きと大きく近づいてくるこの感覚が本能的な恐怖を呼び起こす。


 まずいっ!

 自転車にまたがり、スタンドを後ろに蹴り、一気に駆け出す。

 自転車はギア変動付六段階。癖で自転車を止める時にペダルが軽い二段階目までギアをいじってあるのだが、今回はこれが功を奏した。

 一定スピードまでの時間が短い。

 あと少しで、下りへ突入する。


「よし! これなら撒ける!」


 勝ち誇るのと同時に、後ろのガードレールが吹き飛ばされる音が聞こえる。

 後ろを気にする余裕なんてなかった。

 そんなことをする暇があるなら、全力でこぐ。でないと死ぬ。絶対に。


「くっそおおおお!」


 普段叫ばない声帯で力いっぱい叫んで、ギアをいじり、ペダルを重くして全力でこぐ。一度一定スピードになっているから、ペダルはそこまで重くない。

 坂が下りに突入する。


「うおぉぉぉぉぉ!」


 今になって最初から学校側に向かって坂を下っておけばよかったと後悔した。


「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」


 今まで史上見ないレベルで自転車のスピードに困惑する。が、それ以上にあの異常な人影への恐怖でいっぱいだった。

 地響きはまだ続く。

 むしろ近づいてきている。

 これもう手遅れなんじゃ……。

 ふと後ろに圧迫感を感じ、横目で一瞬後ろを向くとそれは巨大な機械だった。ロボットのようなその人型のフォルムは、何か人為的なものを感じる。


その巨大なフォルムは、手を組んでその大きな巨碗を振り下ろそうとしている……。

一瞬で悟った。


(あっ、これ死ぬわ……)


 その大きな圧迫感に耐え切れず、思わず目をつぶる。

 自転車もかなりのスピードだ。どのみち僕はただでは済まないだろう。目を閉じ、視覚からの情報を失った体は倒れていく。

 だめだ。

 その時、一陣の風が再び吹いた……。


今後主人公にはある要素が追加されていきます。僕のツイッター見てれば何の要素が追加されるか分かるはず!(ステマ)楽しんでいただけたら幸いです。

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