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風じゃない(前半)
理屈の上ではどう考えてもおかしい、ということがあるものだ。
女子大生のM・Hさんの話がそうである。
当時のMさんはワンルームのささやかな部屋を借りていた。とはいえそこは女子大生。ワンルームである代わりに、廊下も建物内にあるタイプだ。防犯上問題はなさそうだった。
建物に入るまでは、である。
というのは、そこに帰る途中でおかしなことがあった。
状況は毎回同じなのだが。
時間は夜中3時頃。深夜アルバイトから帰る途中。
場所は自宅のすぐ近く。いつも同じ場所。
自転車に乗った男に、追い抜きざまに頭をはたかれるのである。
3、4回ほどそういうことがあったという。
しかも毎回同じ自転車の男である。
後姿を見るかぎり知らない相手で、もちろん恨みなど買っているわけもない。
痴漢のような性的な行為をされたわけではない。罵声を浴びせられるわけでもない。
ただ頭だけをはたいて去っていく男。
それだけに意味が分からなくて不気味だった。
その男にはたかれるのは、その時刻にその場所を通りがかった時だけだという。