序文、または言い訳
小説を書くこと以外の私の趣味のひとつに、恐い話を聞き集めるというのがあります。
もちろん、リアルに聞いて回っても、その相当な割合が、既にメディアに載っている話です。ネットの台頭以降は一層その傾向が顕著になっています。
しかし、たまには同じ話が見つからないということもあるもので、そういったものを私の記憶の中だけにとどめておくのは勿体ないと思いました。私の知らない範囲で既にどこかに掲載されていましたら申し訳ありません。
文章に起こしているのは間違いなく私です。なので、一応著作権は私に帰属すると考えて頂いてよろしいかと思います。
著作権について留意して頂きたいことがもう一つあります。
人づてに聞いたものを伝えるという怪談の性質上、すでにメディア上で活躍されている怪談紹介者さんに伝わっているのと同じ話が、別のルートで私にも伝わってしまい、二重に発表されてしまうということはありうることです。私よりその紹介者の方のほうが先だったということもありましょう。
しかし、同じ実話をモデルに、別々の作者がそれぞれ物語を書くということはよくあることで、また社会的にも許容されていることです。「まだメディアに載ってない話を発掘したぜ!」という満足感は得そこねるにしても、ただちに問題は生じないと考えます(知らせて頂ければありがたいですが)。
幽霊や妖怪の実在を信じないが怪談を楽しむというスタンスの人には、こうした論理は詭弁に映るでしょう。怪談なんて全部うそっぱちじゃないか、作り話じゃないか。創作話をすでに発表している人がいるのに、同じ話を発表して口を拭っているのは不誠実である、と。
しかし、それがいわゆる実話のスタンスを取っている以上、「これは私の創作した話である。おい執行明、勝手に『なろう。』なんかに載せるんじゃない」とはいえないはずです。著作権、知的財産権というものはその表現の独自性に与えられるものであって、貴重な体験そのものに与えられるわけではないのです。
ただ、もし私がここに書くのと同じ話が、いわゆる実話怪談としての体裁をなしていない、完全に創作のスタンスを取っているホラー小説やホラー映画等と同じである、という場合。これは話が違ってきます。
私に直接話してくれた人は嘘をついたり盗作するつもりはなくても、話が伝わっていく過程で、まったくのフィクションが実話怪談だと思われたまま伝わるという現象もあります。そして私がその元ネタをたまたま知っていればここに載せませんが、知らずに載せる可能性は十分あります。その場合には是非とも御一報下さい。
なお固有名詞はアルファベット的な仮称(Aだとかエヌ氏だとか)にさせて頂くことが多いかと思いますが、普通の人名っぽい名前を使っている場合でも、原則的に仮名です。御承知置き下さい。
御理解をいただけましたら、どうぞ楽しんで頂ければ幸いです。