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ここまでで一通りの事は終えたと思う。

食料の保存庫から取り出したなんだか分からない干し肉を齧りながら思う。


となると次はクリスタルスカルの土台となっていた柱、あれをしっかりみるべきだろう。


実はあの部屋、地面には無数の魔法陣が描かれていた。

しかもクリスタルスカルの土台となっていた柱の素材は巨大な魔結晶だった。

あれは藤四郎さんの知識では転移魔法陣を呼ばれるものらしい。


ウルカ1にクリスタルスカルを丁寧にどかしてもらい素材の部屋に置いてきてもらう。

後は転移魔方陣とそのキーとなるだろう柱の調査だ。


高さ一m程の魔結晶の柱をペタペタと触っていくとその異質さが分かる。

継ぎ目がないのだ。

どうやらかなりの技術力を駆使してクリエーションされたのだろう。


でも魔結晶内部は死んだように色を失っていた。

ウルカの核のように、無色透明の魔力を入れる事ができれば虹色に光るのだが、柱は完全に効力を失っているようだ。


ここに魔力を注ぎ込んで調整すればこの柱は周囲の魔法陣と連携して転移の機能を取り戻すだろう。


まずは自身の魔力を死んだ魔結晶に注ごうとするのだが、中々うまくいかない。

これ程までに巨大な魔結晶に一定の速度で波が無いように魔力を注ぎ込むのはかなり難しいのだ。


「ウルカ1、ちょ、ちょっと手伝ってくれ」


「了解しました。マスター」


後ろで控えていたウルカ1が近づいてくる。

ゆっくりと魔結晶に手を触れたウルカ1はゴーレムらしく乱れの無い魔力の注入を完璧にこなしていた。


「これなら任せられそうだ。頼んでもいいか?」


「マナプールにはまだ余裕があります。この魔結晶内を満たす事も可能ですのでお任せください、マスター」


ウルカ1の頼もしい言葉も聞けたので自分が次にやる事といえば転移魔法陣がどこにつながっているのかを思い出す作業だ。


転移魔法陣は四箇所に続いている。

まず一つめはこのあかつき島を中心として北に位置する北部諸国連合(ノースユニオン)と呼ばれる中規模国家の集合体。

まぁ、このノースユニオンは今もあるかどうかは分からないけれど今は置いておこう。


南に位置するのは人の存在しない未開拓の大陸。

暗黒の勢力圏(ダークテリトリー)と呼ばれる巨大な大陸である。

これも1500年近く前の常識なので今はどうなっているか分からない。

当時はダークテリトリーの存在は認知されていたがたどり着いたものはいなかったらしい。

その海域にいる魔物が強力すぎて船で近づくとことごとく沈められてしまうのだそうだ。


西に位置するのはノースユニオン全戦力と拮抗さえすると言われる大国、ウェルエスタイア王国である。

この大国の影響力をもって北部諸国は連合への道のりを歩んだと言えるのだが。

名のある国はその二つだろう。後は殆ど力を持たない小国が何個かあるだけだ。


東に位置するのは世界樹の大森林と呼ばれていた。

世界樹の大森林の近くはエルフが住まう地としても有名であった。


そうとなれば自分がまず向かうのは人間の国だろう。

でも最初から国に入るのではなく、少し周囲の調査もした方が良いかもしれない。


情報化社会の中で自分も嫌という程情報の大切さを学んできたからだ。

その為には戦力をたくさん用意したいのだが、そんなにたくさんウルカ達を連れて行っても怪しまれる。

なにせ人型の金属ゴーレムなのだ。

しかも喋るし動きは人間よりもはるかに早いと言った具合だ。

藤四郎さんの記憶の中にそこまで強力なゴーレムはなかった事から人間相手なら分からないがゴーレム相手なら其れなりに戦えるのではないだろうか。

でも1500年以上の時間の流れは侮れない。

もしかしたらウルカに使われている技術が当たり前かもしれないのだから油断は出来ない。

ゆくゆくは航空戦力や海上戦力や陸上戦力を整えていくのも良いだろう。

もちろん相手の情報を素早く手に入れる為の諜報部隊もだ。


そうなると人と変わらない外見を持つ自動人形(オートマタ)を作らなければならない。

問題はまだ山積している。


そこでまずはウルカを元にして別の素材で強力な自動人形の試作を作ろうと思う。

ウルカ7〜10には畑の仕事を任せているし、ウルカ1には転移魔法陣の修復を行ってもらっている。

残るウルカ2〜6の五体に量産の手伝いを行わせる。

材料の運び込みを手伝わせる。


ウルカと同じ様に金属で骨格を創っていくが、今骨格に使われている金属はアダマンタイトに魔力のコーティングをした特殊なアダマンタイトだ。


これにより単一のアダマンタイトよりも耐久性が二倍から三倍まで跳ね上がった。

それを骨格として筋繊維に使用するのは従来のマナスレッドを更に編み込み強度と柔軟性を併せ持つマナスレッドの強化版。


名前こそマナスレッドのままだけれど、その効果は計り知れないと思う。

耐久性が上がる事により従来のマナスレッドよりも筋繊維の断裂が少なくなるだろう。


更に純粋な魔力を含んだ七色の魔結晶にウルカに使用したのと同じ様に自分の人格を転写する。


Transc(転写/トランスク)ription(リプション)


魔結晶内部に転写された魔法陣を次は簡略化し立体型の多重構造へと作り変え、効率化を図る。

それが終われば次は泰那自身の人格を消去する作業を行なう。


Delete(消去/デリート)


この作業を行なうことで自分の人格がない真っ白な状態の下地が完成するのだけど、自分の人格を消すというのは少し嫌な物がある。

今度からはこの状態の真っ白な下地の状態で情報を保存しておこう。


そしてここに自分と藤四郎さんの知識と自分の知識を上書きする。


Overwri(上書き/オーバーラ)te(イト)


Transfer(譲渡/トランスファー)知識レベル3】


知識レベル3の専門知識を必要なところだけ与える。

ここまでやってやっとゴーレムの核となる部分が完成する。


残る魔力貯蓄水槽(マナプール)結晶内魔力発生炉(クリスタルジェライン)は内部に特に手を加える事なくウルカに使用している物を模倣した。


次に筋繊維を覆うボディを作るのだが、この外装も内部の重要な機関を守る為にアダマンタイトで作っていこうと思う。

もはやここで妥協をしたらダメな気がするのだ。


アダマンタイトに魔力を練りこみながらクリエーションで薄く伸ばしていく。

それを骨格と擬似筋肉を覆う様にして貼り付けていけばスラリとしたボディを持つ自動人形が出来上がった。


まだ目の部分が窪んでいて何もなかったり全身が虹色っぽい輝きを放っていたりと未完成ではあるが、内部の魔結晶の核は動き出すのをじっと待っていた。


ボディが完成したところで次は眼球をクリエーションで創造していく。

白雲母を球体に削り出して魔力でコーティングしていき、中心に同じく魔力でコーティングしながら加工した宝石、アクアマリンを嵌め込み同化させた。

後は細かな細工を三施してマナスレッドで眼球と頭蓋骨を繋いだりしてなんとか眼球を完成させた。

人に近づける為にはウルカの様な大雑把な作りではダメだろうと思ったからだ。


最後に皮膚を作るのだが、これはミミックシードラゴンの皮を使う事にした。

皮の色素を変える事は比較的簡単に出来たので、それをクリエーションを使って貼り付けていく。


そうして泰那は初の自動人形を創造した。


「起動しろ。ルドラ」


透明な青い瞳に光が宿り、核が正常に起動した。


「おはようございます。マスター」


発声機関を取り付けた事により、鈴のなる様な声を響かせて女型自動人形のルドラは静かにその二つの足を地面に降ろした。
















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