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再び目を覚ました時、自分はクリスタルスカル目の前で仰向けに倒れていた。

そして頭の中に自分の物でない知識と記憶が入っている事に気がついた、というよりこれは認識だろう。


そう、他人の記憶があった。


まるでそれを見計らったかの様に目の前のクリスタルスカルから声が聞こえた。


「君は日本人なのだろうか」


流暢な日本語だ。

自分はゆっくりと身体を起こして気になった事を消化しようとする。


「あなたは?」


「…」


返事がない、ただの屍の…

とまぁ、今はふざけている時ではなさそうだ。


どうやらこの声は録音された物らしく、何らかの方法で疑問に対する問いを聞き分ける物なのかもしれない。


「はい。自分は日本人です」


「そうか、扉の試練は知っての通りかの徳川家康や織田信長、それに豊臣秀吉の人柄をホトトギスの詩に例えたと言われるものだ。それによる簡単なテストの様なものだが、この世界の者には解けないだろう」


「この世界の者?」


今の説明でこの部屋には日本人しか入れたくなかったのだろう。クリスタルスカルの声の主は自然な日本語でそういった。


「この世界とは?」


合点がいけば早い。すぐにつぎに気になった事を問い詰めた。

どうやら質問は正解だったようで再びクリスタルスカルから声が響いた。


「この世界はアギステルダ。地球から幾つもの次元を挟んだ異界の地」


異界の地。

そこで自分は完全に納得した。

自分の記憶の中に入り込んだクリスタルスカルの声の主の記憶を参照して。


「ここが、その、アギステルダ?」


「アギステルダ。私は現在からおよそ1565年と8ヶ月程前に天命を全うして自らの生を終えた。私は生前、次にこの世界に日本人がきてしまった時に手助けができるようにと、知識と能力を譲渡する魔法を開発し、このクリスタルスカルに封じ込めた」


クリスタルスカルの声の主がこうした理由はすぐに分かった。

晩年、彼がどのように考えこの魔法を作ったか。

それは古来から日本人としてあるべき姿である優しさや思いやりの心であった。


「私は大変な思いをしてアギステルダで過ごし、生きるための地盤を築いてきた。唯一手にした能力。Creation(創造/クリエーション)を使ってだ。そして晩年。この大海の真ん中に島を創り、クリスタルスカルを創造したのだ。次にもしも、本当にもしもだが、この世界に再び日本人がきてしまった場合、私は手助けをしたい。だが、それまで生きながらえている自身はなかった。故に遺す。私の唯一の能力、Creation(創造/クリエーション)と数十年の記憶と知識を君に」


そこで声は途切れ、クリスタルスカルには盛大に亀裂がはいった。


彼は日本人だったのだろう。

と、すると能力とは?

自分も彼に貰ったCreation(創造/クリエーション)以外に、何か持っているのではないだろうか。

そう考えた時、視界に文字が浮かび上がった。


【能力-[Mejiku(魔造の心臓/)Heart(メジックハート)]を習得しました】


メジックハート?


その時に彼の知識が役に立った。


自分たちの持つ通常の心臓とは異なり、アギステルダの生命体の心臓は魔力を精製する機関でもある。


異世界人である自分や彼の心臓は転移と共に創り変わるのだが、それはたかが知れているらしい。


精々アギステルダの生命体を平均した数値の三分のニ程度らしく、元々の心臓をベースにしている為あまり強化出来ないらしい。

だけれどもMejiku(魔造の心臓/)Heart(メジックハート)はその心臓を更に創り変え、無尽蔵とまではいかないが膨大な魔力を精製できるようになるらしい。


自分に知識と記憶とCreation(創造/クリエーション)の能力を授けてくれた彼、名前は高滝藤四郎(たかたきとうしろう)と言うらしい。

藤四郎さんはこの世界にくる前の記憶は不要と判断したのだろう、自分にそこまでの記憶は譲渡されなかった。


今から1500年近く前に死んでしまった人なのだからかなり古い時代の人なのか?と思うがそうではない。

藤四郎さんの記憶の中には新幹線やジャンボジェットなどの現代の知識があった。


と、いっても藤四郎さんの魔力ではCreation(創造/クリエーション)でそういった現代の機械を作り上げることは出来なかった様だ。


だけれど、自分は違う。

Creation《創造/クリエーション》の能力とMejiku(魔造の心臓/)Heart(メジックハート)の能力があればいずれはそういった物の創造も可能になるだろう。


だけれども、自分には加工する元となる素材が…な………いや、ある。


自分はクリスタルスカルが置いてあった円形の部屋から伸びる五本の通路の一つ。

降りてきた階段と対になる通路に足を進めた。


数十m進めば見えてくるのは大きな部屋。

3キロ四方のあの島面積の半分はあるのではないだろうか。

それほどの空間を閉めていたのはインゴットの山や宝石類、それに何かしらの生物の素材であった。


試しに部屋に入ってすぐの所に立てかけてあったインゴットを手に取ると、その素材の名前が自然と頭の中に浮かんだ。

というより藤四郎さんの記憶を見て、目の前のインゴットの名前を知ったのだが。


手にとったのは銀色に近い金属である軽銀。

所謂アルミニウムと言う金属だ。

だれでも知っている知識としては一円硬貨などに使われていて。非常に生活に身近な金属だと言える。

アルミニウムは銀白色の金属で、それなりの熱伝導性・電気伝導性を持つ。

そして加工性が良く、実用金属としては軽量であるため広く用いられている。

弱点を上げるならば、酸化しやすい金属ではあるが、空気中では表面にできた酸化膜により内部が保護されるらしい。


だが、アルミニウム単体ではどうしても強度が落ちる為、やはりアルミニウムで物を創る時には銅、マグネシウム、マンガン、ケイ素などを混ぜたジュラルミンというアルミニウム合金を使う方が良いだろう。


アルミニウム合金は軽量さ、加工のしやすさを活かしつつ強度が飛躍的に改善しているから前の世界でも様々な製品に採用されていた。


これは藤四郎さんの知識から参照している。

どうやら藤四郎さんは金属に多少の知識があったらしくメジャーな金属は多少なりともわかる様だ。


あとは金属に魔力を込めて強度を増すなどといった、前の世界では不可能な事もこの世界では可能らしい。

金属に対する造詣が深くない自分としては願ったり叶ったりな事である。


こうして18歳、秋田泰那の興味は創作に注がれる様になるのである。













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