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波打ち際に塗装された金属の板や何かの部品が流れ着いて砂浜に打ち上げられる。

その瓦礫の中に一人の青年の姿があった。


「うっ……」


まず、砂浜特有の水が砂を打つ様な耳に残る音を聞いた。

次に生温かい水に身体を浸している事に対する気がついた。

そして飛行機に確かな異常が起こった事を思い出した。


ゆっくりと目を開けると自分が砂浜に打ち上げられたのだろう。

身体を見れば所々焦げた私服に身を包んだ自分がいる。


どうやら飛行機か墜落して海に投げ出されたが奇跡的に助かったと言う所だろう。


早合点はよくないが概ねあっているだろう。

ゆっくりと身体を起こせば砂浜の所々に飛行機の残骸と思われる部品が打ち上げられていた。


「ここは…どこだろう…」


海水が温かかった事からここは日本国からは遠いだろう。

日本国はまだ冬でとてもじゃないが海に入れる季節ではないし、何より海の透明度が違う。


エメラルドグリーンに近いといえば良いのだろうか。

日本国の海しか見てこなかった自分にとってそれは青天の霹靂と呼べる物だった。


大方何処かの島に流れ着いたと言う事だろう。

もしかしたら人がいるかもしれないし、取り敢えずは島を見てこようと思った。


太陽の上り具合から見てまだ10時頃だろうか。

このまま歩いていても服はすぐに乾くだろうしこの気候からして風を引く心配もないだろう。


砂浜を歩きながら漂着した飛行機の残骸から使えそうな物を探していく。

ふと、そこで見覚えのあるカバンが目についた。


秋田泰那、つまり自分の荷物カバンだ。

まさに奇跡と言うべきか、開けた荷物に水の侵入した痕跡はなく不思議な程に中の荷物にも損傷は無かった。


(流石におかしい気がする。空中で飛行機が分解して荷物が放り出されて海に落ちてここまで流れ着いたと考えれば簡単なんだろうけど…流石に海に落ちた衝撃で壊れたりしないのかな…)


そこまで専門的な知識がない自分でも違和感に気がついたが、いまの状況で多少の菓子などが入っている荷物カバンを手に入れられたのは嬉しかった。


他に一つカバンを見つけたが、そのカバンはなんらかの衝撃で中身が飛び散ったのかあまり原型をとどめていなかった。


結局自分以外の荷物は落ちておらず、ほかに見つかる物の殆どは飛行機の残骸であった。

死体すら見当たらない。


だが、見つからない物は仕方ない。

それについての考えは一旦置いておき、空腹に耐えかねたので自分のカバンに入っていたお菓子を少しだけ食べる事にした。


このお菓子を食べ終わったら次は島の探索と洒落込もう。



一時間程砂浜から奥に向かって続く森の中を歩いていると、砂浜に出た。


「え、おわり?」


足場も悪かったから歩いた距離は一時間程だし、

距離としては三キロもないかもしれない。


つまり、ここは孤島。


終わった。


秋田泰那、死にます。


サバイバル生活と無縁だった自分にとってそれは大変な事だった。

となると、お菓子を一袋食べてしまったのは失敗だったかもしれない。


となると最初にする事は寝床の確保と食べ物の確保だろうか。


しばらく島を探索すると、この島が自然にできたにしてはおかしいくらいの正方形になっていた。


角は波に打たれて削れていたが何か違和感が残る。

もしかしたらこの島は人工物なのかもしれない。


となると、


「この島の何処かに何かあるのかもしれない…」


18歳 秋田泰那


巷では見た目に似合わぬ勘の鋭さと噂されていた。


島を歩き回っていると、明らかに何かがあるとしか思えない扉を見つけた。

岩を削って作られたであろう2m程の石造りの建物だった。

最初に島を探索するときは気がつかなかったのだが、それはこの建物に蔦がびっしりと張り付いていたからだろう。


扉も石でできていて、自分が全力を出そうがハ○クになろうが開かなさそうだ。


ここにきて明らかな人工物。

ちょっと思ってたよりも古い感じで残念だが正方形の島の角が波の侵食で取れているのだ。

すこし時間が経っているのだろう。

扉にも少しかかる蔦を手で払いながら石の扉にぴたぴたと手を触れていく。


すると、その石の扉には何かしらの文字が書いてあった。

それはよくみれは日本語だった。


【泣かぬなら[_______]ホトトギス】


これは空欄に自分が思った言葉に出せば良いのだろうか。

ふつうに考えれば泣くまでまとう。

殺してしまえ。

泣かせてみようの三つだと思うけれど…


ここは無難に泣かせてみようかな!


そう考えた時、石の扉に彫られた日本語が僅かに光りだし、僕の頭を一筋の光が貫いた。


あ、死んだ。


これは所謂トラップと言う物だろうか。

ここに書かれた日本語に釘ずけにして倒す的な…


うーん、ん?


そして数秒、自分の頭が痛くない事に疑問が浮かび上がる。

どうやらこの光は自分を透過しているようだ。

しばらくすると【泣かぬなら[_______]ホトトギス】の空欄に泣かせてみようの文字が浮かび上がり、石の扉がゴゴゴゴと音を立ててスライドして開いた。


どうやらさっきの光はピ○コロが月を破壊した某殺人ビームではなくて頭の中の考えを読み取る物だったらしい。

まったく驚かせないで欲しい。

もう少し優しくして欲しかった。


でも、なんでこんなに簡単な事が問題になっていたんだろう。

日本人なら誰でも入れるじゃないか…


扉がスライドして建物の中が自分の視界に入ってくるのだが、その先はただかべがあり、下を見ればしばらく階段が続いていた。


まぁ、そうだろう。あんな小さな岩の建物だったら中には殆ど物が入らないだろう。

でもまさか地下への入り口だったとは。


階段の左右の壁には等間隔に揺らぐ事のない松明がかけられている。

石の扉の前に蔦が這っていた事を考えれば長い間人は入っていなかったはずなのだが、誰かいるのだろうか。


そう思いしばらく階段を下ると明るい部屋に出た。

通路が五本伸びている大きな広間のようだ。

そこの中心には水晶でできた頭蓋骨が柱の上に乗っていた。

その頭蓋骨は周囲の壁に取り付けられた松明の明かりに照らされて幻想的にきらめいている。


あれは、たしかクリスタルスカルって言うオパーツだった気がする。

実物は表面に研磨された跡があった事から偽物であると判断されたらしいけれど、

この目の前にあるクリスタルスカルは果たして本物なのだろうか。


そして吸い込まれるように一歩、また一歩。

自然と足が出るではないか。

そう考えているうちにも足は進んでいき、次第に意識も完全にクリスタルスカルに向いた。

もう目が離せない。

長年寄り添った妻を見つけたような、

一目惚れをしたような。


この時の自分はさぞかし妙な顔つきになっていただろうが、それを見る者はいなかっただろう。

右手がクリスタルスカルに触れた。


瞬間。


Transfer(譲渡/トランスファー)


の文字が浮かび上がり秋田泰那は本日二度目とあり、すみやかに意識を手放してお笑い番組のコントの様に後ろに倒れこんだ。






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