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「現在、○○○発ボードマリア航空L-207便は○○○海上空2000mを飛行中です。およそ一時間後に目的地の○○○に到着する予定ですので、その際には再度放送をかけますがシートベルトを着用していただけるようご協力よろしくお願いします」


機内いっぱいに響いた機内放送がなりを潜め、彼はゆっくりと全身に込めていた力を抜いていく。


「ふーっ…あと一時間か、もうそろそろか」


もちろんこれは一人言であり、周囲にこの小声で呟かれた言葉を聞く事ができた人間はいなかったであろう。


彼の名は秋田泰那(あきたたいな) 中性的な名前通りと言うべきか、齢18にしては小柄な体躯に中性的な顔立ちである。

小柄といっても身長は166cm程度だろうか。

まぁ、顔のせいもあるのか基本的に幼くみられがちである。

彼は現在、日本国からアメリカまで空の旅と洒落込んでいるのである。

もちろんこれには理由があり、日系アメリカ人である両親の親戚の家に一年間ホームステイする事になったからだ。


あまりホームシックにならないと自負する泰那はすでに頭がアメリカという新世界での生活のことでいっぱいになり、家族の事は一年後に会う時に考えれば良いと思っていた。


18歳、泰那。


若干楽天的な見た目少年の青年である。


そして、数十分後。


突如としてそれは起こった。


ガクン。


一度、機体が大きく揺れた。

だが、揺れる事自体はさして珍しいとこではない。

風の抵抗であったり外からの影響を受ける事はしたかのない事なのだ。

問題なのはその揺れの大きさ。

およそ上下に3m程。


ガクンという擬音では表せない程に機体が上下に揺れた。

機内で悲鳴を上げた者もいるようで、衝撃でどうやら舌を思いっきり噛みちぎってしまったようだった。


そこに野次馬のように人が集まった頃だろうか、次に窓の外が一瞬閃光のように瞬き、次の瞬間には何者も通さない黒い闇へと染まった。


「なんなんだ…これ…」


閃光に目を慣らし始めた野次馬は、次々と窓の方に押し寄せて外の闇を覗き込んだ。


「な…さっきまでの景色が見えない…」


「…雲の中じゃないのか?」


「そ、そんなわけある…」


数人がヒソヒソと意見を交換する中、先の揺れ以上に機体が上下に大きく揺れた。


「うわっ!?」


シートベルトを付け忘れた泰那の身体は簡単に宙に浮かび、機体の後ろまで一気に吹き飛ばされた。


「がっ…」


誰かにぶつかったのか、泰那は奇跡的に助かる。

だが、後ろにいた人は既に泰那が飛んでくる前から事きれていたのか顔は青白く壁に座り込んでいた。


傷のない死体に身震いこそするものの、外傷が少ない事から完全に死体と判断出来ず、ましてやこの危機的状況で感覚が麻痺し始める。


取り敢えずは安全の確保。


泰那はとっさに機内トイレに向かって揺れる機体の中を懸命に走りだした。


そしてトイレのドアに手をかけ中にはいった瞬間に、景色が歪み強烈な吐き気に襲われ倒れこんだ。


何処かに頭をぶつけたのか、後頭部に鈍い痛みを感じながら泰那は意識を手放した。


(アメリカ…行きたかったなぁ…)


手放しつつある泰那の意識は最後にアメリカでの暮らしに思いを馳せつつ暗転した。







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