1 物語が始まるまでの幕間という呼び名のプロローグ
初めまして、このたびはご来店いただきましてありがとうございます。
初めての投稿となりますが、どうぞ温かい目でご覧いただけたらと思います。
執筆スピードは遅いですが頑張ってまいります。
1物語が始まるまでの幕間という呼び名のプロローグ
前文≪主人公からの一言(事件解決後寄稿)≫
「物語は唐突に始まる」その出だしから始まる物語を、私はなんて芸のない台詞なんだと思っていたが、訂正し、謝罪申し上げたい。
人生、何か予想もつかないような事が起きた場合は、こういう台詞は実に的を得ていた。
そして、叫び声とか驚きとか……まぁ、ようするに、物語の出だしはそんなものから始まるのも、若干バカにしてかかっていたが、しかし、人の人生を生まれた瞬間から書くわけにもいかない。そうすると、登場人物の人生の一瞬を切り取る場合、合言葉的な…非日常の入り口となる言葉が必要となるわけである。その中で他者に一番伝えやすいのは、叫び声とか驚きであるのは疑いようのない事実なのだ。
つまり、日常からの非日常の始まりは、予想もつかないものを体験するという事から始まるものだったのだ。
かくゆう私の始まりも、そんなところから始まってしまった。唐突に、前触れもなく、個人の意思とか全く無視して、残念ながら始まったのだ。
眠る私の耳元で、目覚まし以外の音楽が大音量で鳴り響いたところから始まる。
それは、ゲームのレヴェルアップの曲みたいな音楽で、私の脳内を大きく揺さぶり、沸点の低い私の機嫌を確実に削いでいった。本来ならば、ここは相手に抗議をするのが通例なのかもしれないが、私は自他ともに認めるほどのめんどくさがりな性格をしている。
とりあえず、私の起床を促す相手に怒りをぶつけるより、眠ることを選択した私は、ささやかながら、抵抗を試みることにする。多分これ以上の抗議の意識を伝えるための手段は無いと思われるスキル、マクラを被る。を発動させた。
しかし、残念な事にマクラがない。
また、ベッドの下に落としてしまったのだろうか。自分で言うのもなんだが、寝相はあまり良くない。
仕方ないので、うつ伏せになる。
それでも鳴り止まない音に私の堪忍袋は切れた。
「しゃーーっ!!」
パーンっ!!
「おめでとうございます!あなたは勇者その3に選ばれました!」
パラパラと頭上から降ってくるのは、クラッカーのリボンにキラキラした紙切れの破片と火薬の臭い。
私はそれをもろに顔面で受け止め、起き上がったままの体勢でフリーズしてしまった。しかし、私の復活を待つことなく事態は進む。
「あなたはこれからある世界へ行き、仲間を得、様々な困難を乗り越えて悪の元凶である魔王を倒すのです!!」
今では聞かないようなファンタジー特有の古めかしい文句を朗々と声は告げ、今度は祝福の音楽みたいなファンファーレが頭上から降ってくる。しかし、オーケストラも喋っているやつも見えない。見えるのは、ただただ真っ暗な空間が広がり、生きている者は私以外は存在はないような空間だった。
私の記憶が確かなら、今私は居心地の良い自室のベッドで目覚ましが起床を告げるまで、安らかに眠っているはず、なのであるが…わけがわからない。
アレかな?これは、夢だ。夢に違いない。アニメとかマンガみたいに異世界へ連行された人のような事態では決してないはずである。二中病みたいな展開なわけがない!!私は高校生!見るならもっといい夢見たいなぁ。
私は、自らに起こった展開についてゆけず、しかし、冷静な部分は非情にもありがたくない結論を告げている。でも認めたくない私は、脳内で現実逃避を始めた。
されど現実とはいついかなる時も、真実だけを目の前に突き付けてくるのだ。
「今なら可愛い女の子とお知り合いになれる特典付きだよ?」
私の葛藤と言うか足掻きなぞ知る事なく、謎の声はどうでもよい事告げる。確かに、可愛い女の子は目の保養ではあるかもしれないが、知り合ったところでどうこうなるものでもない。
そもそも、大事な事が他にあるだろう。冷静な私が、脳内で謎の声に突っ込みながら、さらに私自身に、そう助言してくれた。そうだ。まずは現状の把握をして、落ち着こうではないか諸君!!
「あんた誰?ここどこ?」
ありきたりと言うなかれ、これしか思い浮かばないし、これ以上のこの場を表現すような最良の言葉はあるだろうか?
「む?……あぁ‼そうですよねぇ。まずは、自己紹介とここのご説明をしなくちゃいけませんでした。気が急いちゃって……えー…申し遅れましたが、私は神代理で~す。ここは物語の幕間みたいなもので、プロローグに入る前あたりなんですよ。今!まさに歴史的瞬間が紡がれようとしてる最中なんです。私は創造主に頼まれて皆様に勇者御就任の告知と簡単なご説明をさせていただいてます。ちなみに、私の合言葉は神代理に不可能はない!です!」
何なんだろ…このものすごく関わりたくない雰囲気は…似非教祖甚だしい。いや…と言うかその神とやらは、勝手に人様の世界に不法侵入して人攫いをしたと言う事なのではないのか?第一、軽い。呼び出したくせにこの言い方はおおいに問題がある気がする。この神代理は失礼にもほどがある。
「それでですね。今この世界すっごくヤバイのですよ。魔王が復活しちゃって地上はしっちゃかめっちゃか。あー…こりゃヤバイって事になってね。セオリーにのっとって勇者召喚となったのです」
「えー…おこ「やってくれますか?!」り…って被せるな!!」
「いや~…今回は勇者三人制度を実施しておりまして、実はあなたの前にも勇者二人ほど召喚してるんです。けどどうも三人目になると新鮮味がなくなるってうかぁ。ぶっちゃけ、説明とかいろいろめんどくさくって…あはは」
あまりのぞんざいな扱いと、この神代理の軽さ加減に私の堪忍袋は大きな音を立てて切れた。
「黙って聞いてればなにさ!呼び出しといてその言いぐさはどういうこと?!仮にも神様なんだろう。もうちょっといい方気をつけなさいよ!そもそも、その3ってなによ?バカにしないでよね!?だいたい、勇者が三人もいる事もおかしいのよ!一人で十分だわ!それと!!別の世界の住人に頼る根性も気に食わないのよ。自分とこで解決しなさいよ!だいたい!万が一死んだら責任をとってくれるの?つーか!軽いのよあんた!やる気あんの!?」
私が勢いにまかせて思った事を捲し立てるように言い切ると、暫くの沈黙の後、神代理の声が天から降ってくる。
「……す…すみません……。型っ苦しくならないように、なるべくフレンドリーな感じを心掛けたんですが、調子に乗りすぎました。えー…あの…ご質問にお答えさせていただきますと、まず、死んでしまった場合なんですが、生き還れません。神様もそこまで万能ではなりませんので、その……残念ですが、諦めてください」
唖然としてしまう。これは、残念とかそんな問題ではない。見知らぬ世界で、それも知っている人のいない世界で一人寂しく死ねという。これは、凄まじく聞きづてならん内容である。理不尽な事態にふつふつと怒りが込み上げてくる。
「全力で拒否します。何で他の世界のために命張らなきゃいけないわけ?」
「まぁ・・・そうですよね。一応、特典もありまして、もし、生還できた場合は、願い事を三つまででしたらどんなものでも叶えます」
「そんな悪徳商法みたいなの信じられるか!命張ってまで欲しいものでもない!!帰しなさい!!今すぐに!!!」
「それがですねぇ……申し上げにくいのですが…か………」
「ああ?私以外に二人もいるのに帰れないとかぬかすのか?オイ」
「いや…あの…すみません!ごめんなさい!最後まで聞いてください!!これは最近全時空神様会議で決まったことなんです!内容がですね。全時空召喚勇者における品質向上を計るための取り組みの中で、勇者は絶対解決を主軸とし、事件解決までは他世界流出を避け、同時期に二股勇者が起きぬように心掛ける事。ただし、勇者一人では心許ないと判断した場合は、最大三人までならば勇者を両立させる事はよしとする。また、勇者が案件に対して消極的な場合は記憶を消し、速やかに帰還させる事。あ、あと勇者になれるのは一人一回のみってのもきまりました。なんというか…最近の若いのは昔みたいなガッツがないので、使える勇者を各世界で回してる現状が今までありまして…酷いところだと、昼と夜で別世界に展開させるなんて無茶振りがありましたね。あまりにも、目に余る行為というか…それじゃあ、酷すぎるというので、勇者三人制度を推進してるんす」
それは、確かに酷過ぎるだろう…何度も死地に追い込まれるなんて、考えただけでぞっとする。しかし、ある意味、最近の世情をくんだような内容に何とも、悲しさを感じる。しかも、あまり聞きたくない舞台裏を聞いてしまった気がした。神様会議って……いやいや、今はそんな事よりも
「その話からすると、私は思いっきりやる気がないと言ってるわけだから、帰してくれるのよね?」
「……も…もちろんです………でも、あの…えー……ここからは私事で恐縮ですが、実は私記憶を消すのが不得意でして……記憶を消すと、なぜか毎回その人の記憶が全消しになってしまいまして……なんと申しますか…どうも私繊細な術は苦手なもので、き…記憶喪失状態……なんてことに……なります。…………さらに、これが一番、申し上げにくいんですが、今現在私以外の神代理は全員出張中でおりません」
「………………ほぅ?それで?神代理とか言っちゃう?この無能が!!!!」
「ひーーっ!!!………す…すみません!!すみません!!すみません!無能ですみません!!」
私の怒声に神代理は平謝りを続ける。なんともはや、もはやツッコミ入れるのも面倒だった。本当に何もかも面倒になってしまった。私はその場に寝そべるとダラダラしながら会話を続ける。
「受ける気さらさらないんだけどさ。例えば、仮に受けた場合、帰る時はどうなるの?」
「倒した時点でスキル自動解除、強制送還となります。記憶は一応、貴重な経験な訳ですから、残します。と、言うのは建前、勇者は一人一回が鉄則。他の世界でまた勇者にならないようにする為に、証拠として記憶は残しておくんです。まぁ…元の世界でこんなことを話しても、周りから冷たい目で見られるのがオチですので、さほど重要視されてないってのもあります。ってか、多分、膨大な記憶を消すのって時間がかかり過ぎて、非効率ってのが現状なのではと思ってるんですけどね。でも、消して欲しい場合は神様がやってくれるので安心してください。私のようなことにはなりません!!」
「………ほぅ……」
この神代理は素晴らしく口の軽い奴であるらしい。聞きもしないのに、聞きたくもない内情をべらべらと喋る。イライラが頂点に達し、頭痛がしてきた。そんな私に
「勇者になると三つの願い以外にもいいこともありますよ!ボーナス的なものとしては、別世界で恋愛フラグが立ってれは、回収出来ます。そのまま住んじゃうのもありです。まぁ…無理矢理別れさすとかはないっすよ」
どうでもいいボーナス特典である。
「ところで…あの…今さらですが、祐樹さんは男性ですよね?言葉の端々に微妙に違和感が…今日カメラが調子悪くて見にくいんです」
いろいろ突っ込みどころ満載なことを言ってくれる。でも、もはや面倒すぎてスルーすることに決めた。……でも、こいつカメラで見てるのかよ。ってか…救ってくださいって言うなら、目の前で言ってほしい。それって礼儀じゃないかと思う。神代理の何とも失礼な言葉の数々に、うんざりとしながら
「今までの会話で気がつかなかったわけ?男の声じゃないと思うけど?」
名前だけだとよく男性に間違えられることは多々あるのだ。いや~な事が過る。あまり考えたくないが……もしかして……
「で……ですよねぇ…ははは……女性かぁ……」
「何さ?女だといけないわけ?今さら男尊女卑的なことほざくのか?」
私が憮然とした顔で言い返すと
「めっそうもない!!女性の勇者もいますから!!…ただ…なんと申しましょうか……こちらサイドの問題なんですが、今回は男性勇者を立てることになってるんですけど、職員が祐樹さんを男性だと勘違いして、処理をしてしまったみたいです。ですので……どうしましょうか」
私に聞くこと自体間違ってる気がする。
「完全にそっちのミスじゃない!!ああもう!!あんたじゃ話にならないわ!!他の神代理を今すぐ呼び戻しなさいよ!!」
こいつができないのなら、他の人に頼むしかない。まぁ、多少の時間なら、待つ覚悟ではあったのだが
「む…無理ですよ。呼び戻しをしたとしても、最短で半年、最悪一年以上は帰ってこれないというか……」
びくびくとした声で告げる神代理の言葉に、私は愕然とする。
「本当にすみません。しかし、困りました。仮に下界に降りたとしても、女性のままだと、体力で男性に劣っちゃうんで、死亡率も高くなりますし…通常女性勇者を立てる場合は、死ぬ確率を極力減らすために、いろいろ予防線を張っているんですけど、そんな時間はもうありませんし………今とれる最前策はあるにはあるんですけど……あのですね……」
「今さら何よ。はっきり言いなさいよ」
「……その、男性になることなんですけど…」
神代理の言葉に、私は嫌な結論が脳裏をかすめた。
「それは、男装しろってことかしら?」
「いえ…その…性転換してほしなぁ…みたいな…も…もちろん!!解決したら責任もって神様に戻してもらいますから!!」
自分で戻しますと言わないあたり何とも情けない。
記憶喪失か、はたまた半年耐えるか、それとも性別を変えて、帰還を待つか……記憶は絶対に無くしたくないし、半年耐えるのなんて無理だし、それなら、結論は一つだ。今私は記憶を無くすわけにはいかないのだ。ならば、諦めるしかない。妥協するしかない。私は諦めと共に息を吐き出し重い口を開いた。
「なってやるわよ!!男に!!でも、私は絶対に勇者にならないからね!!」
私のやけっぱちな台詞を聞いているのかいないのか。神代理は嬉々とした声で
「ありがとうございます!!では、気が変わらないうちに!!……男の子にな〜れ~」
ぼんっ!!フシュー…
私は大量の煙に絡まれて、咳き込む。煙の中に星が飛んでいるのが見えるが、煙幕の量が多すぎのせいか喉に入りキツくてしょうがない。
「げほげほっ!!」
「しまった。火薬の量間違えた…」
呑気に言っている神代理に殺意すら覚える。そして、ようやく煙が薄れてきた。
「成功はしましたが、アレですね。元が女性だったせいですかね。童顔女顔の男になりましたよ」
「何じゃそりゃ?…ん?…あーあー…」
自分で納得した事とはいえ、やはり受け入れがたいものがある。私は恐る恐る自分の体に触れる。声が低くなったということは、今までなかった異物が喉にあるわけで……突起が……。さらに、私は自分の胸にも触れる。すっかすかである。まさにまな板。けっこうあった胸がまったくない。かわりに、見て確認はしたくないが、下半身にはきっとアレがあるのだろう違和感がある。
「良かったですね。立派な少年になってますよ!」
いいはずがない。しかし、神代理に言い返すだけの気力は削がれている。しかしなんだね。第三者に事実を言われると、えらいショックが大きい。凄まじく凹んでいる私に、神代理は追い打ちを掛けるように
「なんちゃって男とは違いますから、色々楽しめますんで〜」
た…楽しめる?楽しめるって……泣きたくなる。というか変な装備といらない。だいたい見た目や身体がどうなろうとこの十七年女一筋でやってきたのだ。いくら、男勝りとは言われても、女性に対してそんな感情を持てるわけない。
「こんな姿ちーちゃんに見せられない」
実は私は、最近長年思いを寄せていた幼馴染と、紆余曲折ありはしたものの、ようやく思いが通じ合ったばかりなのだ。これから恋人らしい事するぞ〜といきこんでいたのに…。帰りたい。しかしこのまま帰るわけにもいかない……ああ、声が低いせいで普段通り女言葉でしゃべるとおネイにしか聞こえない。虚しい。
「クリアしたら戻れますから、問題ないですよ。それに、ここには彼氏いません!男ライフを楽しんじゃってください!!」
何度も言うが、そういう問題では無い。女が女を落としてどうすりゃいいんだ。そもそも、私と言う人間は一途を体現したような存在なのだ。本人がいないからといって、男に変えられたからといって、浮気なんぞ言語道断できるわけがない。
「一つ聞きたいんだけど、誰か一人でも魔王を倒せたら帰れるの?」
「帰れます」
よし!なら、答えは簡単だ。引き籠るしかない。何言われても旅に出ないて引き籠ろう。私は死にたくはないし、最悪、他の勇者二人が死んだら、その時今後を考えればいい。そうだ。そうしよう。私がかなり酷い決意を固めていると、呑気な声が降ってくる。
「………あとですね。強制力というのがありまして、いつまでも出発しないでいると無理矢理参加させられると思います。ですので、なんとかそこはのらりくらりかわして頑張って生き延びてください!」
「なっ!!強制力って……そんなこと聞いてないわよ!!だいたいなに他人事のように締めくくってるの?元を辿ればお前が現況じゃない!!私が呼んだらすぐ来い!死に物狂いで助けに来い!!」
「いや…私にも予定が…それにあんまり関わっちゃ……」
「クリア後神様にあることない事チクるからね!!」
「……神代理たるもの、自身の身を犠牲にして所業に邁進して行く所存であります!」
大人って…
「とりあえず、連絡要員をお付けします。何かあれば、彼をこき使って下さい。なーに、私と違ってメンタル強いんで大丈夫ですから!ホイッ!」
ぼんっ‼
「この書類は神代理の承認が必要だ……ね?……どなた?」
目の前に現れたのは眼鏡を掛けた真っ白いキツネ。
「シロー。悪いんだけど、この子の補佐お願いできますか?」
「は?この子?補佐?何を突然わけわかんないことのたまわってんだ?冗談は休み休み言えや馬鹿上司!あんたの尻拭いでこっちとら不眠不休よ!」
「うん。悪いなーとは思ってはいます。けど、この子も可哀想なんです」
「は?」
「でも、君も悪いんだよ?だって書類に女の子入れておくんだもん。私った知らないで呼んじゃったよ~」
「あんた確認しないで呼んだのかよ?!言ったよな?呼ぶ前にちゃんと確認しろって!最近の子は名前じゃ性別判断できませんと!!」
「はっはっは。で、男の子になってもらったの」
「どもー。被害者です」
キツネはあんぐりと大きく口を開けて、私を見た。そして真っ白い体をさらに真っ白くさせてその場に蹲った。イメージとしては魂が口から出てる感じ。
「すまねぇ。ウチの馬鹿上司のせいでえらい迷惑をかけちまったみてぇだな。心中察するぜ。……つきましては、あっしが責任もつ……と、いいてぇんだが、上司がアレなんで、あっしがいないと具合が悪い」
キツネはそう言うと私に向かって前足を突き出した。
私が手を差し出すと、そこにはふわふわの毛をした手乗りフェレット風の小動物が愛くるしい瞳で私を見上げていた。女の姿だったら、頬ずりしたかった。
「あっしの分身でさぁ。……えー…コホンっ!こいつに話し掛けて下さい」
どうやら、気持ちが高ぶると口調が変わるらしい。
「彼に話が行けば、私にも連絡来るんで、何かやばくなったら飛んでいきますので頑張って!!では、一先ず、アデュー。…魔法の国へ飛んでけ~ドーン!!」
そして、私の意識は沈んでいった。
そして、受難はつづく……次回「2(仮)水の神殿で能力を与えられました。」