◇プロローグ
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七月 九日、深夜23時
真夏の夜とは思えないほど空気は澄んでる。
そんな深夜、
誰一人として通らない
裏路地の街灯の下で
一人の少女が佇んでいた。
彼女は小さな子供のような外見とは裏腹にどこか大人びた雰囲気を醸し出し当たり前のように落ち着いている。
真夜中にもかかわらずそこから動く気配は彼女にはない。
「もうすぐで10年も経つんだね…――蓮斗くん 」
突如、少女は夜空を見上げポツリと呟く。
街灯に照らし出される彼女の姿は、美しく輝きながらどこか悲しみを抱いているようだった。
まるでこれから何が起きるのかを知っているかのように…―。
《ゴーン…ゴーン…》
どこからか聞こえてきた町中に響き渡る鐘の音。
そして動きだした彼女。
「―――ついに日付が変わったんだね…。誕生日おめでとう蓮斗くん。そして、ごめんね。」
彼女は再び夜空を見上げ広がる空に呟いた。
今の彼女からは先程とは違い、悲しみと強い意志を感じとれた。
――すると次の瞬間、セカイに異変が起きた。――
彼女が再び強い意志を込めながら、まるで自分に言い聞かせているように呟く。
「私が守るんだ蓮斗くんを…他の誰かの命令なんかじゃない、私自身の意志で蓮斗くんを…守る。」
そして彼女は暗闇の中へと歩いて行き消えていった…。
最後に見えた街灯に照らし出されていた彼女の後ろ姿からは、強い決心と責任感が感じとれた。
――このときからセカイが少しずつ変化を始めた。
――まるでこの時を待っていたかのように…。