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紅葉がよく映える晴天の日和なのに、祐介は憂鬱を隠せずため息をついた。
それもこれも自分が悪いのだけど、それは自分でも収拾がつかないくらい大きな過ちだった。
まさか本当にしてくれるなんて思わなかったのだ。軽いノリで話を運んでみたらあまりにあっさりと手に入ってしまった。ずっと欲しくて欲しくて堪らなかったものは、向こうから笑顔で手を広げてきたのだ。
幸せで嬉しくてどうしようもない、はずなのに
肝心なことを言い損なった。タイミングを逃した言葉はでるにでられなくなったものだから、未だ胸に渦巻いたまま以前となんら変わりはない。
「どうしてこうなるかな…」
自分の不甲斐なさにいい加減腹が立つ思いで、本日再び何回目かのため息が零れた。
「祐くん、どうしたの?」
パチンと弾けたように意識は現実に引き戻される。
聞き慣れた声はすぐ真横から聞こえた。近づかれても気付かないくらいに祐介は自分の世界に入り込んでいたのだ。
「沙汰…、なんでもないよ?」
笑ってみせたら、安心したように笑顔を返してくる。沙汰は先日のことなんてなかったかのように今までと変わらず接してくるから、祐介もなんとなくあの日のことを掘り返すことをためらっていた。