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視聴者数ゼロの地下魔法少女(27歳)が仕方なく助けた魔王に激推しされてトップ魔法少女に成り上がる ~魔法がないので実銃と筋肉で戦っていたら、なぜか同棲が始まりました~  作者: 杉林重工
三章 わたしの名前を呼んでみろ

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独り。

 

「悪は断然許さない!」

「プリミティブシスターズ! リルコ!」

「プリミティブシスターズ! アイ!」


 二人は最強。二人が最高。二人で最カワ。そんなキャッチコピーとともに何十年か前に始まった二人組の魔法少女。配信中もスマートフォンを交換して戦う姿は迫力があり、一瞬でスターダムを駆けのぼった二人組。


『わたしも、プリミちゃんみたいになりたい!』


 馬鹿みたいだ。


『一緒に魔法少女やろうよ!』


『いいけど、サビ子ちゃんは東京行くんでしょ? なんでわざわざ東京行くの? プリミちゃんがそうだから?』


 なんでそんなことにこだわったのか、自分でもよくわからない。


『初めまして! わたしは〈魔砲革命アハト・カノン〉! みんなのこと、ずどんどかんと応援しちゃうよ!』


 一人で魔法少女応援プログラムに応募して上京した。そして。


『聞いてください。視聴者数をもう、維持できません……わたし、アハト・カノンの配信は、今日をもって』


 勝手に夢見て勝手に夢破れて。それでも、田舎に帰る気がしなくてずっと魔法少女を続けた。否、気付けばそんな生き方以外わからなくなっていた。


『駄目だ、元魔法少女用の就業支援プログラムなんて、なんて書いてあるかわからないよ……』


 堅苦しい文体に、知らない用語ばかり。パンフレットを見て、絶望する。他の人たちには、ここに書いてある文章が理解できるのだろうか。


 でも。


『――お前は、小麦粉を水で溶いて練った生地に餡子を入れて円盤状に焼いた菓子をなんて呼ぶんだ?』


 たまたま拾ったゲドードス大王が全てを変えてくれた。


『見たことねえ数字だ……』


 視聴者数最大『256,721』


 ゲドードスに応援されて、それがきっかけで視聴者数は鰻登り。でも、特別なことはしていないと思う。今ならわかる。自分の行動はすべて、自分が正しいと思ったことの積み重ねだ。ゲドードスを助けたこと、ぬいぐるみを拾いに行ったこと、怪人を殺したこと、大攘夷に参加しなかったこと、人間と侵略帝国の橋渡しになったこと。


(まあ、悪くない人生だったかな)


 山ほど手に入れた視聴者数。それだけじゃない。応援の声も、批判の声も、多分今年のノーベル平和賞はわたしのはずだし。


 ――今、空地川サビ子は、とりあえず生きていた。


 よくわからないが、生きていた。


 場所は、多分病院。否、牢屋だろうか。ベッドに寝かされているが、右を見れば檻だとわかる。もちろん、自分が収監されている側である。


 胸に一発銃弾を食らったはずだが、包帯でぐるぐる巻きにされていて痛みはない。その代わり正体不明の管が三本、包帯の内側に接続されていた。それがベッド脇のやっぱりよくわからない装置に繋がっている。侵略帝国の治療だろうか。つまり、サビ子の状況は次のように考察できる。


 ――わたしは、新しい人質だ。


 最後の記憶にあるのは、真黒な魔法少女の群れ。噂に聞く短期決戦用の空挺魔法少女隊だろう。確かに、視聴者がいなくなった今そういうものを使ってみたくなる気持ちはわかる。


「無粋な。男の子みたいなこと考えちゃって」


 檻の向こうにあるテーブルの上に、サビ子の私物、鞄とマジカルスキスキステッキスマートフォンが置いてある。不用心なのか、舐められているのかわからない。とはいえ、手を伸ばして届くわけでもない。


 サビ子は頭まで布団をかぶった。消えてしまいたいと思った。


(馬鹿みたい。この戦いを何とか出来ると思って意気揚々と乗り込んで、撃ち殺されて敵に助けられて、今じゃ新しいお荷物だ)


 もしかしたら、今頃〈レツ・ワリコミ〉を殺すチャンスを潰した人間の裏切り者、とか言われているかもしれない。


(わたしの上半身を消し飛ばすぐらいのミサイルでも持ってこない限り中級なんて殺せるわけねえだろ)


 目算が甘い。それとも、人質救出には十分だと判断されたのだろうか。だとしたら、ごめんね、としか言いようがない。ここに新しい人質がいます。


(もう、いいかな)


 そして、そう思った。人質=自分が邪魔でこれ以上人間様に迷惑をかけることはない。それに、自分はもうよくやった。とてもよくやったと思う。仮にも停戦に貢献し、個人としても視聴者数をたくさん稼いで、一応人気者にはなったし、事実楽しかった。ゲドードスとのしょうもない掛け合いだって、大事な思い出であり、それを体感できた人間が、否、怪人を含めたって自分しかいないというのは心地よい。


(結局、わたしは最後まで自分勝手なんだ)


 結局、独りが嫌だったのだ。プリミちゃんみたいに、誰かが隣にいてほしかっただけなのだろう。もしかしたら、誰かにちやほやされるために、酔狂にも一人で〈レツ〉の挑発に乗っただけかもしれない。


「もういっか」


 サビ子は、胸の管に手をかけてみた。これを引っこ抜いたら、死んだりするのだろうか。


(もう、十分楽しかった。だから、人様に迷惑をかけないように、ここで最後は潔く……)


 そう思って体をよじったとき、ふと気持ち悪い感触があった。浅いスラックスのポケットの中に、何かがある。


「これは……」


 それは、一通の手紙だった。


『にじゅうきゅうごうちゃんへ』


 いつの日か、アリアーネちゃんの代理人エヌ女史から受け取った、たなかねみちゃんからの手紙。あの日、酔っぱらって読まないまま、ポケットに入れっぱなしだったのだ。


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