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視聴者数ゼロの地下魔法少女(27歳)が仕方なく助けた魔王に激推しされてトップ魔法少女に成り上がる ~魔法がないので実銃と筋肉で戦っていたら、なぜか同棲が始まりました~  作者: 杉林重工
三章 わたしの名前を呼んでみろ

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参列する魔法少女

「号令! 立て愛、下げ迷い、抱え心、控え悪、捧げ恋!」


「〈魔法少女二十九号〉!」


「アドバンス!」


 於、昭和記念公園。侵略帝国流・大葬式特設会場。


 土砂降りの雨を突き抜けて注ぐ砲弾の嵐の中、空地川サビ子は魔王少女に変身した。その爆炎が、サビ子の変身を隠していた。


 噴煙を超えて跳躍した〈二十九号〉は、改めてこの高さ百メートルの墓石のような物体を見上げる。今、それは巨大な遺影を割って、その中央に巨大な階段を伸ばしている。登れ、ということだろう。


 視聴者数『12』


  どうやら、人間の視聴者はいるらしい。これから一応増えることは予想される。だが、それがどれほどの力になるだろうか。今、この大葬儀場の中には、世界の要人と多数の魔法少女が囚われている。そのすべてが配信を解除していない都合、人間の視聴者が分散している。


(わたしの視聴者は、いって一万か二万か……)


「聞いて! 〈レツ・ワリコミ〉さん!」


 〈二十九号〉は叫んだ。


「わたしは、戦いに来たんじゃない! お話しよう!」


「話などするものか! 人質を助けたくば、ここまで上がってくるがいい! ここまでくれば、人質は解放しよう!」


 声だけが昭和記念公園に響く。


「頼むよ、視聴者数もないのに二十七歳にこんな階段上らせるな」


 そういいながら、〈二十九号〉はストレッチをしている。


「ふん。ここまで上がってこれないようなやつが、魔法少女など名乗れるのか?」


「……上等。あんたはいいね、怪人らしく卑怯でさ」


 視聴者数『1,012』


 総階段段数六百六十六。侵略帝国建築法に基づいた正確な葬儀場の階段の数である。


「アドバンス!」


 〈魔法少女二十九号〉はびしょびしょの階段を駆け登った。ヒール付きのコンバットブーツが雨飛沫を踏みつぶし、蹴散らしていく。


「来たぞ! あいつが大王を誑かした淫乱だ!」


「殺せ! あいつさえいなければ!」


「なんだっていい! 仇を取るぞ!」


 当然、簡単に階段を上らせてくれるわけがない。階段の脇から次から次へと下級怪人が現れる。


「マジカルM4カービン!」


 右手に生成したアサルトライフルの引き金を引く。魔法で強化された銃と銃弾が下級怪人を貫いていく。


 だが、すぐに弾切れになる。リロードの間も惜しんで、〈二十九号〉はカービンを捨てる選択をする。


「マジカルAK47!」突破段数二十三。残り段数六百四十三。


 代わりに、次々と銃を持ち換えて応戦した。


「マジカルHK53!」突破段数四十二。残り段数六百二十四。


「おのれ、魔法少女め!」


 〈二十九号〉は、雨に紛れて飛び出した黄色い閃光を鼻先で避ける。


「おれの名前は〈レモンカケルーノ・カッテーニ〉!」


 雨の中でもはっきり見える、熊のような体躯と黄色い鎧。〈レモンカケルーノ〉が全身に力を籠めると、黄色い鎧から黄色い体液が飛び散る仕組みである。


 それらは、周囲の下級怪人さえ巻き込んで、その体を切断して〈二十九号〉に迫る。


「チッ」


 丁度弾詰まりを起こしたマジカルAK47を下級怪人に投げつけて動きを封じると、ラブリーM26手榴弾を作り出して、安全ピンを噛み抜いて投擲する。


「ぬお!」


 体液と手榴弾がかち合い、空中で爆散する。その爆発に紛れて〈レモンカケルーノ〉に接近した〈二十九号〉は、マジカルマークⅡ手榴弾を取り出していた。それを、〈レモンカケルーノ〉の口に捩じ込む。


「わたしさ、酢豚にパイナップルも好きなんだ。内緒だけど」


 そういって〈レモンカケルーノ〉の背後に回ると、その後頭部を蹴りつける。手榴弾が爆発した。


 突破段数五十。残り段数六百十六。


「パイナップルとレモンの話は別だろうが!」


 〈シオ・メダマヤキ〉と〈ショーユ・メダマヤキ〉の中級怪人コンビ。白と黄色の混じった戦闘服に、白いラインと茶色のライン。二人は抜群のコンビネーションで有名である。


「細かいこと気にしないでよ。ちなみにわたし、目玉焼きはハンバーグに乗せちゃう」


 取り出したサーベルですれ違いざまに二人を切断し、キューティレミントンM870で目の前に立つ〈キッサ・テンデイッパイデネバルーノ〉の胸を至近距離で打ち抜いた。


 突破段数六十一。残り段数六百五。


「しんど。あとどんだけあるんだよ。ねえねえ、ずるしていい?」


 ラブリーM26手榴弾をポイポイ投げて下級怪人を妨害しながら、片手に持つマジカルスキスキステッキスマートフォン(自撮りモード)へ〈二十九号〉は訊ねる。


『いいよ!』『がんばって!』


「ありがと! その分急ぐから! シャイニーKS600!」


 〈二十九号〉が生成したのはサイドカー付きのバイクであった。〈二十九号〉はサイドカーに立ち乗り、空のバイクのハンドルにマジカルスキスキステッキスマートフォンをひっかけた。


「アドバンス!」


 無人のバイクが車輪を回す。魔法で強化されたそれは、階段をものともせず前進した。


 マジカルM4カービンとプリティロケットランチャーRPG-7が火を噴いて、進路を邪魔する怪人たちを吹き飛ばしていく。


 突破段数七十二、七十七、八十、九十二、九十六、百二! 残り段数、五百六十四。


 その様子を、〈レツ・ワリコミ〉は大葬儀場の天辺で待っていた。祭壇には、〈コゼーニ〉の遺影が堂々と飾られている。無数の異形の花々に加え、謎の木札や短剣が並べられた異様な光景であった。


「そうだ。それでいい。お前は、強さを示さねばならない」


 自身の甲殻――無数の亀裂が入ったそれを眺めながら、〈レツ〉は思う。そうでなければ、自分が倒される意味がない。


「安心しろ、〈センセン〉、〈コゼーニ〉よ。確かに、〈魔法少女二十九号〉は最強の魔法少女だ。このおれが倒されることで、それを証明してやる」


『〈レツ〉隊長! 〈魔法少女二十九号〉が戦車を! 戦車を持ち出しました!』


 スピーカーが悲鳴を上げた。〈レツ〉は顔をしかめ、無線のスイッチを入れて言う。


「好きにさせろ」


 うんざりしてスイッチを切る。確かに、モニターの中でファンタスティックティーガーが階段を粉砕しながら猛然と駆け上っている。砲は自動で火を噴き、その上の銃座から〈二十九号〉が狙撃をしている。


『隊長! あいつ、アパッチを呼んでいます! ずるくないですか!』


「攻撃ヘリはずる過ぎるな。撃ち落とせ」


 だが、空中で機銃を撃ち猛威を振るう攻撃ヘリコプタードキドキアパッチは、下級はおろか中級も寄せ付けず、その隙にファンタスティックティーガーの砲弾が道を開く。


「まったく、何をしているんだ」


 そういいながら、〈レツ〉はこの土砂降りの中、祭壇の前にいつの間にか立っている一人の下級怪人を見た。


 その下級怪人はすたすたと〈レツ〉を無視して〈コゼーニ〉遺影に向かって礼を行い、数珠をじゃらじゃらと鳴らした。


「作法が間違っているぞ、〈魔法少女二十九号〉」


「やっぱりそうですか。〈レツ・ワリコミ〉さん」


 いつのまにかその変装が解け、〈レツ〉の前に立っていたはずの下級怪人は〈二十九号〉の姿をとっていた。背中からマジカルスキスキステッキスマートフォンが覗いている。


「話に来ました。〈レツ・ワリコミ〉さん」


 〈魔法少女二十九号〉は、低く声を落として〈レツ・ワリコミ〉へそういった。


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