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視聴者数ゼロの地下魔法少女(27歳)が仕方なく助けた魔王に激推しされてトップ魔法少女に成り上がる ~魔法がないので実銃と筋肉で戦っていたら、なぜか同棲が始まりました~  作者: 杉林重工
三章 わたしの名前を呼んでみろ

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お焼香の方法は事前に確認しておこう

 

『ニートリヒ=シュロス』二〇二号室。カップ麺を啜っていた空地川サビ子は、突然部屋に現れた、どこか懐かしい顔をじっと見つめた。


「お前はここにいろ。下手なことを考えるな。あの葬式や部下の暴走はおれが抑える」


 サビ子の視線をまっすぐ受け止めながら、恐怖の大王ゲドードスはそう言って早々に玄関へ向かって歩き出した。


「帰るときはそっちから行くんだ」


「なんだよ。突っかかるな」


 ゲドードスは振り返った。


「わたし、行くよ。あそこまで丁寧にもてなされたら行くしかないじゃん」


 その言葉に、ゲドードスは血相を変えてサビ子の前まで戻った。


「馬鹿者! 〈レツ・ワリコミ〉はお前がスペチャを使って最初に倒した怪人で、あの葬式会場に印刷されてる下級怪人〈コゼーニ〉はその直前にお前が撃ち殺した奴だ」


「そうなんだ。ぶっちゃけ下級怪人の見分けつかないから何かと思った」


「お前なあ……その態度じゃますます殺されるぞ」


「でも、人質まで取られて黙っているわけにもいかないでしょ」


 ――人質。葬式に無理やり参加させられる代表者達はどう考えてもそれである。


「それに、ゲドードスが戦っても意味はない。また力で解決したら、折角言葉で通じ合えたことを否定しちゃう」


「それは……」


「どうせいなくなるからってゲドードスが全部背負ってもいいかもだけど、絶対そういうのって健全じゃないじゃん。だからわたしがいく。あいつの気が済むまでやらしてやればいいじゃん」


「でも、そうしたらお前は間違いなく殺される! 知っているだろう、視聴者はいなくなった! おそらく、帝国とお前達という戦いが集結して興味をなくしたんだ。きっと、別の事象や時空間で同じような事例を見つけて、新しい魔法少女ごっこをしているんだ!」


 ゲドードスはついに動揺を隠さない。サビ子の肩を掴み、必死で言う。


「まあ、仕方ないでしょ。とにかく、来てほしいなら行くよ。お葬式。ところで服装の指定がなかったんだけど、人間の礼服でいいかな。数珠っている? お焼香のやり方って確認しといたほうがいい?」


「お前! もういい、勝手にしろ!」


「うん。そうする。ゲドードスも、部下を大事にできて偉いね」


「馬鹿にしてるのか!」


「ううん。変わったな、って。ありがとう。ゲドードスが変わったから、人間はこれから長生きできる。きっと、魔法少女のことももっと笑顔で迎えられると思う。だから、ありがとう」


「うるせえ!」


 ゲドードスはそう吼えると、早々に玄関から出て行った。


「あと、カップ麺はよせ! お肌に悪いぞ!」


「余計なお世話だよ!」


「それから、服装は案外カジュアルでいいぞ! 死んだとしても、きっとどこかの事象では幸せに暮らしていると信じる心がおれ達のお葬式だ」


「そうなんだ! ありがとう!」


 サビ子は怒鳴り返し、そして一人きりになった部屋に残った。


「まったく、仕方ないなあ」


 サビ子は思う。そして、明日の葬式のための準備をしようと立ち上がった。


「行くのかい。あんなに引き止められても」


 部屋の奥の暗がりから声がした。


「うん。ごめんね。モテちゃって」


「ホントに殺すよ」


 そういって部屋の奥の暗がりから現れたのは、ゲドードス四天王〈マルナゲルヤ・クイーン〉であった。第二次大攘夷以後、行方不明になっていた怪人である。女王のように膨れ上がったスカートの衣装の怪人。


「まったく、あんなののどこがいいのかなー」


 サビ子はからかうように言った。すると、〈マルナゲルヤ〉は顔を真っ赤にして怒鳴る。


「うるさい! 仕方ないだろ……好きなんだから」


「それなのに、わたしの家に上がり込んで匿えだなんて。変なの」


「うるさい。本当は、お前を殺してやろうと思ったのに」


「でも、わたしを殺したらゲドードスの頑張りは無駄になっちゃうもんね。偉い偉い」


「馬鹿にしやがって。わたしはもう、表立って動く気はない。だが、明日のお前の活躍だけは見届けてやる。せめて、無様に死んでわたしをすっきりさせておくれ」


「うん。任された」


 そういうサビ子に対し、〈マルナゲルヤ〉は少しだけ両手を広げた。サビ子はそれを不思議そうに眺めた。


「なに」


「お前こそ。泣いてるじゃないか」


 サビ子の足元に、ぽたりぽたりと液体が落ちた。


「あれ? おかしいな。どうしてだろう……」


 慌ててサビ子は目を拭った。


「いいんだよ。あんたは人間で、だけどわたしと同じなのさ」


 サビ子は崩れるように〈マルナゲルヤ〉の胸に飛び込んだ。


「ごめん、いろいろと、ちょっと嘘。ねえ、魔法少女の力がなくて、怪人の前に立つって、怖い」


「ああ、そうだね。きっと、そうだろうね」


 〈マルナゲルヤ〉はサビ子をやさしく抱くと、その頭を撫でた。


「でも、魔法少女なら、本物の魔法少女なら、人質がいたら、困っている人がいるなら、助けに行くよね」


「ああ、そうさ。そのおかげで、わたし達の計画は全部パアさ」


「だから、行かないとね」


「そうさ。お前は魔法少女だ。敵であるわたし達が認める魔法少女さ」


 ずず、と〈マルナゲルヤ〉の胸の中でサビ子は鼻を啜る。


「……もしも、わたし達にも魔法少女がいたなら、こんな戦いにはならなかっただろうね」


 そっと彼女の耳元で〈マルナゲルヤ〉は囁いた。


 ――侵略帝国流・大葬式当日。


 その日、土砂降りの雨の中、外部から参列した人間はたった一人。


 その女の名前は、空地川サビ子。


 そんな彼女を出迎えたのは、砲弾の嵐であった。


「へえ、これが侵略帝国流ってこと? 数珠も香典もいらないじゃん。棺桶はかわいいのがいいな」


 《エコノミープラン》

 《アカウント認証開始》

 《認証対象:空地川サビ子》

 《アカウント名『魔法少女二十九号』》


 ◆サーバー接続中→接続完了。


 配信開始まで、


 ●●○3

 ●○2

 ○1



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