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視聴者数ゼロの地下魔法少女(27歳)が仕方なく助けた魔王に激推しされてトップ魔法少女に成り上がる ~魔法がないので実銃と筋肉で戦っていたら、なぜか同棲が始まりました~  作者: 杉林重工
三章 わたしの名前を呼んでみろ

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割り込んできた怪人

 

「さあ、ゲドードス! あたしの大事な十二人目のイレブン、『まもりの天使』モリミを返してもらうぞ!」


 すでに、〈熱血サッカー少女隊マッハ撫子〉のエースちゃんは二人目の仲間を蹴りだそうとしていた。


「あいつをなんとかしてくれ!」


 代表の一人がゲドードスへ叫んだ。


「だが……」ゲドードスは唇を噛む。ここで人間を攻撃してしまえば、停戦も何もない。〈パスワード〉も全身から誕生日だらけの包帯のような体を伸ばして人間を守ろうとしているが、攻撃までは考えていない様子。


「わたしがやります!」


 そういったのは、『ラビリンス! アリアーネ』のアリアーネちゃんだった。同じく護衛として配備されていた彼女が前に出る。


「お願い、エースちゃん! 話を聞いて!」


「うるさい! モリミを返せ! あんなものが、モリミなわけがない! 認めるか、認めるもんか!」


 蹴りだされたサッカーボール、否、ディフェンダーのマコを、アリアーネは真正面から受け止めた。その体はその衝撃にぶれることも歪むことも無い。ぽんぽん、と優しくその表面を叩き、ただ静かにボールにされてしまったマコを地面に置く。


「どうしたの? もう蹴ってこないの? じゃあ、お話しよう!」


 現行最強の魔法少女の名前は伊達ではない。不意とはいえ〈第六十六代美少女征夷大将軍ブレザーリボン〉を吹き飛ばした攻撃を真正面から受けても余裕であった。


「う、うわああああああ! イレブンの結束を舐めるな! 馬鹿にするなあああ!」


 対してエースは頭をかき乱し、叫び、次のボールを構えた。アリアーネは唾を飲む。受け止めればいい。造作もないこと。だが、蹴りだされる魔法少女を見て平静を保つのは至難の業だった。だからと言って無理やりエースに掴み掛れば、残りの八人にどんな影響があるかわからない。


「避難を急げ!」「負傷者はいないな?」「経路確保!」


「大王様もこちらに……」人間の一人が大王に駆け寄り声をかける。だが、ゲドードスは首を振った。


「おれはいい。〈パスワード〉、人間はお前が守れ。手は出すな」


「もちろんです。大王もどうかご無事で」


 〈暗黒手帳のゼラ〉に、『ただの女の子が魔法少女なんてできっこない!』のムリ子ちゃん、『爆走少女・クイーンズラン』のドンナちゃん、『爆走少女・アッシュエッジ』のシュンちゃんらに囲まれて代表者が下がっていく。


「逃げるな! 大人なんて嫌いだ! それにお前達だって! 何人魔法少女が殺されたかわかっているのか! どうして停戦を受け入れてるんだ! わからないよ!」


 エースは標的をアリアーネから逃げる大人たちに変更した。あわててアリアーネが動く。だが、その時のエースの動きは確かに、一瞬だけ最強の魔法少女を凌駕した。


「しまっ……!」


 同じくディフェンダーのロコが蹴り飛ばされる。


「いけ! ロコ! 念願の決定点だ!」


 音速を超えたシュートに空気が泣く。護衛の魔法少女達が前に出るが、遅い。それは、エースの叫びが呼んだ動揺であった。皆が皆、『無事』ではないのだ。心の中に、停戦の違和感を持っている。


 ばん!


 その決定点が空中で弾けた。それは、岩より硬い、甲殻の背中に阻まれたのだ。


「感傷中悪いな。割り込ませてもらったぜ」


 背中に張り付いた血肉も気にせず、ひょうひょうとその怪人は言う。暗褐色の甲殻に、無数の青白い亀裂を走らせたシャコ型の怪人〈レツ・ワリコミ〉である。


「え……ロコ……?」


 怪人の背中にべっとりと張り付いた血肉の塊が、ぼとりと落ちて地面に弾けた。何が起きたのか理解できていないエースは、ふらふらと飛行しながら、ついに地面の上に力なく座り込んだ。


「さあ、人類よ、魔法少女よ、怪人たちよ、わかっただろう。停戦なんかできるものか」


 配信用のカメラ一つを睨んで〈レツ〉は言った。


「何人同胞が死んだ? どれだけ敵を殺した? 無関係なものなどいない。部下を、友を、妻を、子を失っていないものなど、一人もいない!」


 その目は、じとりとゲドードスにも向けられた。


「……だが、それを続けることの無意味さも、おれ達は同時に知っているはずだ」


 その言葉は、あまりにも意外で、誰もが言葉を失った。


「故に、こんな調印式よりも前に、やるべきことがあるとおれは宣言するぞ、わが王」


 そして、〈レツ・ワリコミ〉は拳を振り上げた。


「明日より、ゲドードス侵略帝国は死んでいった同胞たちのため、全ての人類が参加すべき、侵略帝国流・大葬式を行う!」


「侵略帝国流」

「大葬式……?」


 聞きなれない言葉に、人類は誰もが困惑した。


「勿論、お前も参加しろ。〈魔砲再革命アハト・カノン・アライヴ〉! どうせ、ゲドードスと繋がっていたから、なんて理由でこそこそしているんだろう。だが、おれはお前の出席を待っているぞ」


「そうか。お前の目的は仇討か」


 ぼそりとゲドードスはつぶやいた。


「当然、参加するしないは自由だが、ここにいる人類代表の皆様は参加するよな? このままお連れしろ」


 彼の言葉に応じるように、続々と下級中級怪人たちが現れて、逃げようとしていた人間たちを囲んでいく。


「ま、待ちなさい! お葬式の参列については協議を……」


 アリアーネが慌てて下級怪人の前に移動しようとした。だが、不思議と体に力が入らない。普段なら、この程度の距離など一瞬のはず。気になってマジカルスキスキステッキスマートフォンの配信画面を見た。すると、そこにありえないものが映っていた。


 視聴者数『0』


「まさか、天はわれらを見放したか!」


 そう、このとき、全ての魔法少女達の視聴者数がゼロになっていた。


 こうなれば、彼女たちに力などあるわけがない。魔法のストックがいくらあろうと、今ここに続々と集結している下級中級怪人にかなうものか!


 その時、この調印式会場の地下がうなりを上げて膨れ上がった。そして、どんどんせりあがっていく。


「さあ、ここが葬式会場だ! 待っているぞ、人類よ!」


 昭和記念公園に高さ百メートルの建造物が生成された。その内側に、人間の代表者たちはあっという間に収監される。


 そして、この建造物の表層には一人のゲドードス下級怪人の写真が印刷されていた。


 それは、下級怪人〈コゼーニ〉の遺影である。


「と、いうわけだ。お前は行くなよ。空地川サビ子」


「わあ、わざわざわたしの家に来て挨拶もなしに」


『ニートリヒ=シュロス』二〇二号室。カップ麺を啜っていたサビ子は、突然部屋に現れた、どこか懐かしい顔をじっと見つめた。



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