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視聴者数ゼロの地下魔法少女(27歳)が仕方なく助けた魔王に激推しされてトップ魔法少女に成り上がる ~魔法がないので実銃と筋肉で戦っていたら、なぜか同棲が始まりました~  作者: 杉林重工
二章 東京は燃えているか

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もうどちらかが滅びるまで終わらないんだよ

「フレー! フレー! 怪人さん!」


 〈魔砲再革命アハト・カノン・アライヴ〉の声が、心臓を失い死にかけていた怪人に力を与える。〈アハト・アハト・シュトゥルム・カノーネ・ツヴァイ〉の上で、魔法少女は声を張り上げ応援する。


「やめろ! どうして怪人に与する!」


 〈ブレザーリボン・アルティメットスター〉の声が露骨に震えている。


「だって、わたしを応援して、助けてくれて、スペチャを使ってもう一度魔法少女として立たせてくれたのは、ゲドードス大王だから!」


 そして、〈アハト〉はその最大の秘密をこともなげに白状した。流石の〈アルティメットスター〉も、そしてゲドードス四天王〈パスワード〉も目を見開いた。


「悩んだけど、わたしは決めた。怪人さんが死ぬのも、魔法少女が死ぬのももう見たくない! 大攘夷なんてやめて、みんなでちゃんと話し合おう!」


「そんなこと、できるわけがない! ならばどうして百年われわれは殺し合ったのだ!」


「やり直せる! 今からでも遅くない!」


「そんなこと!」


 だが〈アルティメットスター〉の声には動揺が混じっていた。その時であった。〈アハト〉が顔を抑えるほどの突風が周囲を包んだ。


「ここはわたしが押えます! もとはといえば、わたしの責任です」


 〈アハト〉の前に現れたのは『ラビリンス! アリアーネ』のアリアーネちゃんであった。本来ならば大王のための切り札である彼女が、〈アハト〉の前に現れた。


「アリアーネちゃん!」


「あなたとは、分かり合えたと思っていましたが、違うみたいですね」アリアーネの衣装はまるで蜘蛛の巣を模した白と黒。そして目を引く真っ赤なスカーフ。


「そうだね。ごめんなさい。でも、わたしには戦うのが正解には思えない」


「うん。きっと、〈アハト〉ちゃんが正しい。だけど、今だけは!」


 アリアーネは、ついにその拳を振り上げた。だが、その手を止める存在が現れた。それは、一瞬で〈アハト〉を攫って行ったのだ。


「〈アハト〉! お前は現実を見ろ!」


 そう叫んだのは、怪人でもなければ〈アルティメットスター〉でもない。直管マフラーがうなりを上げて、パープルのロケットカウルが大いに震える! それは一台のバイク、ホンダCBX400Fを駆る魔法少女。


「カチコちゃん?!」


 乱れた髪に、血で真っ赤に染まった顔半分。黒く焼けた特攻服。それは『カゼの魔法カチコ』のカチコであった。彼女はまだ生きていたのだ。それが、〈アハト〉の胸倉を掴んだまま空を引き摺って行く。


「アリアーネ、お前は大王に備えろ! 〈将軍〉は早く〈ミラーアイ〉を落とせ! 先輩と誓い合ったはずだ! あたしとお前、二人で怪人を根絶やしにするって!」


 カチコの言葉に、緩みかけていた〈アルティメットスター〉の唇が再び締まった。


「やめて! 戦いを止めようカチコちゃん!」〈アハト〉は叫ぶ。


「お前こそ、その頭お花畑を何とかしろ! 綿飴詰めてんじゃねえ! 現実を見ろっつってんだろうが馬鹿!」


 カチコは〈アハト〉の頭を掴むと、無理やり血で染まった二十三区を見せつけた。その血の花畑の上を、よろよろと飛ぶ魔法少女の声が泳ぐ。


「どこだ! どこにいるんだモリミ! あたしは、あんたがいないと……!」


『熱血サッカー少女隊 マッハ撫子』のエースちゃんが、目に涙を浮かべて死体の顔一つ一つを確認している。


「いい加減にしろエース! モリミは死んだんだ!」ミッドフィールダーのミドリがエースを掴んで何とか引っ張り上げようとするが叶わない。


「わたし達イレブンが抜けてたら、勝てる試合だって勝てないよ!」


「もうだめ。イレブンは終わりだ。エースがこんなんじゃ、もうサッカーはできない」


「わたしはみんなと楽しくサッカーができればそれでよかったのに」


「……わたしはもう、一人で行く」


 明るく、元気にかっこよく、サッカーをモチーフに怪人に立ち向かっていた十一人が、今や全員別の方向を向いて地面に這いつくばっていた。


「『熱血サッカー少女隊』がへばっているぞ!」

「殺せ殺せ!」

「あいつらのサッカー遊びで殺された仲間の仇、今ここで取らせてもらう!」


 そして、それに群がる怪人たち。


「イレブンはもとに戻る! それまでわたしが守る! 見てよエース! モリミなんかよりわたしのほうが守れるんだから! お願いだから、わたしを見てよ! エース!」


 すでに片腕は機能していない。チームで唯一黄色のユニフォームのキーパー、キミエは折れて歪んだ指を突っ張り、靴の脱げた足で空に張り付き、怪人を抑えようと体を前に進めた。それに容赦なく、下級怪人たちの銃が火を噴いた。一瞬で片はついた。


「モリミ、モリミ、モリミ、モリミ……!」


 地面に落ち、ぐしゃりと血肉を開くキミエには見向きもせず、エースはただ瓦礫の町を往く。


「これでもお前は! 怪人と仲良くしようって言えるのか!」


 カチコは〈アハト〉の首をゆすりながら言う。


「もう死に過ぎてんだよ。これを終わらせるには、どちらかが滅びるしかない! お前だって散々殺してきただろ! それに、こんなに遅れてきやがって。お前がいたら、少しはましだったはずだ」


 〈アハト〉の口元が歪む。


「それは、わたしもいろいろと悩んで……」


「ほらな! もうお前だってわかっているはずだ!」


 勿論、『熱血少女サッカー隊』だけではない。そこかしこで怪人と魔法少女の亀裂は広がっている。


「でも、わたしは!」


「何が『でも』だ! 裏切り者め! ゲドードスと寝たのか?」


「違う! わたし達はそういうんじゃない! わたしは!」


『ああ。そうだ。おれはただ、応援してみたかっただけだ。勘違いするなよ地球人類と魔法少女ども』


 その声は、天から降ってきた『圧』そのものだった。


「なんだこのプレッシャーは!」


 ホンダCBX400Fが勝手に止まり、カチコは空を見上げた。そこに、『それ』はいた。


「ゲドードス大王!」


 誰もが、その姿を見て動きを止めた。いないと聞いていたはずのそれが、〈ミラーアイ〉の直下にいた。その姿はしかし、首から下をキューティ拘束衣に包んでおり、妙に哀れであった。


『おれはしばらく前、確かに魔法少女に敗北した。それを今日までだらだらと生き延びてしまったが、もういいと思った』


 いつ見ても同じ、白くて荘厳なその顔に、妙な影を皆が見る。彼は、じっとその高みから、二十三区の惨状を見下ろし、溜息を一つついた。


『われわれ侵略帝国ゲドードスは、お前達地球人に対し、停戦を申し入れる。飽いた。もうおれ達は、帰ることにする』


 そういうゲドードスは、〈アハト〉にすら一瞥もせず、ただ淡々と人類と部下たちに宣言した。


「まさか、こんなにあっさりと? これで終わりなのか?」


 それから、十日後。ゲドードスの居城の一室にて、その怪人は声を震わせた。


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