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視聴者数ゼロの地下魔法少女(27歳)が仕方なく助けた魔王に激推しされてトップ魔法少女に成り上がる ~魔法がないので実銃と筋肉で戦っていたら、なぜか同棲が始まりました~  作者: 杉林重工
二章 東京は燃えているか

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大攘夷

 関東上空は晴れ。雲一つない。


 遠くに見えるは砂嵐の群れ。さらに向こうには暗黒の世界が広がっている――そしてその上にこそ、やや違和感として浮いて見える透明な円〈ミラーアイ〉がある。


 それらを、立川に屹立する六百メートルの和城〈ストロベリーリボン立川城〉の天辺から、〈第六十六代美少女征夷大将軍ブレザーリボン〉がじっと見ていた。


「是非もなし」


 最上位の魔法少女だけが使えるマジカルスキスキステッキスマートフォン(ドローンモード)とリングライトを従えて、白と金の紋付き袴の少女はさらにもう一台のマジカルスキスキステッキスマートフォン(自撮りモード)を構えた。


「ブレザーリボンダブルシックス・ライトアップ!」


 その掛け声に合わせ、突如として世界は闇に落ちた。否、今ここに、たった一つの輝きを示すため、自らこの場から退いたのだ!


 次の瞬間、世界に唯一輝くべき少女の『配信』が始まる。これは、魔法少女オブ魔法少女だけが使える究極の力『二段階配信』である。


 ◆魔法少女配信アプリ『ピカリライブ』


『Tap to STREAMING!』

『KIRAKILIVE』


 《アカウント認証開始》

 《認証対象:ブレザーリボンダブルシックス》

 《アカウント名『第六十六代美少女征夷大将軍ブレザーリボン』》


『異常な魔法を検……』


 《ウルトラスポンサード→干渉完了》


『プレミアムプランで再申請』


 《プレミアムアカウント名『ブレザーリボン・アルティメットスター』》


 ◆サーバー接続中→接続完了。


 配信開始まで、


 ●●○3

 ●○2

 ○1


 《『ピカリライブ』スタート!》


 その時、人々は見た。その豪奢な紋付袴を脱ぎ捨てて、全身を金色の光に包んだ少女の姿を。そして、その体に『武装』が施されていく様を。


『お母さん、わたし今日から中学生なんだよ』


 玄関で爪先をトントン、と打ち付けて履いた初めてのローファー。


『わあ、おねえちゃんと一緒だ』


 初めて服屋で袖を通したブレザーの硬さ。


『もうちょっと短くしたら怒られるかな』


 周囲の目を気にしながら、ついついいじってしまうプリーツスカート。


『明日から、わたしはこれを……』


 何度も何度も、そこにあるか気にしてしまう、真っ赤なリボン。


 そんな思い出を纏い、失われた平穏を夢見て彼女は戦う!


「〈ブレザーリボン・アルティメットスター〉!」


 世界で今、ここだけの光。茶色のローファー、白いハイソックス、チェックの入ったプリーツスカート。白のシャツ、紺のブレザー。真っ赤なリボン。


 黒髪を肩口程度のショートカットに。それはまさに、普通の少女といった立ち姿。だが、その瞳はただ一点を見つめている――憎き敵、攘夷すべき相手、〈ミラーアイ〉!


「この地に落ちた邪悪な魂よ! 星に代わって、成敗!」


 〈ブレザーリボン・アルティメットスター〉が鬨の声を上げる。


「敵は都庁にあり! 突撃!」


 その先陣を切ったのは当然〈ブレザーリボン・アルティメットスター〉であった。十畳ほどの大きなテストの解答用紙(六十六点)が紙飛行機の形に降り畳まれ、その上に彼女は乗った。〈アルティメットスター〉を乗せた巨大な紙飛行機は、一瞬で加速すると闇を食い、光に変えて突き進む!


「行くぞ、皆の衆!」


 そして、この暗黒の世界を切り裂く〈ブレザーリボン・アルティメットスター〉に続き、百を超える眩い光が追従する。はてさて彼女らは一体何者であろう!


「われら! 攘夷の御旗に集いし少女の化身!」


「覚悟せよ! 醜悪奸邪の悪漢ども!」


「命知らずは前に出よ! 惜しくば闇で震えるがいい!」


「普段は見せない、ちょっとオトナなわたし達!」


「その名も!」


「〈セクシー美少女軍団〉!」


 明かりの落ちた世界で、一つの光を追う百の光線。それらが本来狛江の砂嵐がある地点を超えたとき、突如として世界が晴れた。そして、いまだに残る闇――〈ダークドーム〉二十三区の境界面で輝いた。爆炎が大地に垂直な直径百メートルの円盤となって広がる――〈セクシー美少女軍団〉がゲドードスの怪人軍団と衝突した証であった。その円盤は、〈セクシー美少女軍団〉それぞれが怪人を屠った輝きである。


 と、その円盤の中央が突出して〈ダークドーム〉へ深く食い込んでいく。


「どけええええええ! 邪魔だ邪魔だ! カチコ様に道を開けな!」


 その先端にいる魔法少女こそ『カゼの魔法カチコ』カチコちゃんであった。平均視聴者数十万二千八人。カゼの魔法を受け継ぐ三代目の魔法少女。代々受け継がれた魔法のバイク、ホンダCBX400Fが空を駆ける。纏う風は龍の形に似て車体を巻き、その鱗で下級怪人をバラバラに打ち砕く。大袈裟なパープルのロケットカウルに三段シート、直管マフラーが爆音を上げて味方の声援も敵の絶叫も風も時間も置き去りにして突き進む!


「ゲゲゲドス! なんていうパワー……」


「うるせえ! どけどけどけどけ!」


(これは、第一次大攘夷を引き起こしてしまった初代カゼの魔法ブチコ先輩の汚名を雪ぐチャンス! そして、あたしはブレザーリボンの思いに応えなくちゃなんねえんだ!)


『知ってる? ■■ちゃん。ゲドードスが来る前って、修学旅行っていうのがあったんだって』

『バレンタインでチョコを渡すときって、どんな気持ちなのかな』

『百年前の人達みたいに、楽しい気持ちで魔法少女のアニメを見るって、どうしたらいいのかな』


「あいつに、将軍なんて名前を着せた奴らをあたしは許さない! それもこれも、お前らがこの星にカチ込んできやがったからだ!」


 カチコはスロットルを上げる。


「目にもの見せてくれる! ゲドードス! あたしがお前を必ず……」


 東京都新宿、『都庁』直上。それに差し掛かった時、ホンダCBX400Fは主を失って落下していく。


「おや、何かにあたりましたかな」


「気のせいでしょ」


「でしょうな。さて、どう料理してやりましょうか」


「何せ、久々の戦いです。大王がいなくとも、われらが城は難攻不落であることをガキどもに示さなくては」


 そう、そしてここに、高々視聴者十万人程度、歯牙にもかけぬ怪人が並んだ。


 ただでさえ強い力を持ち、そのリミッターも壊れ自らの肉体を破壊しながら暴れる丸々太った外道〈フタアケ・パナシン〉


 あらゆる事象を他の怪人に肩代わりさせる女の外道〈マルナゲルヤ・クイーン〉


 すべてを超越した独立的存在の外道〈イケタライ・クー〉


 彼の前に秘密など意味をなさない、全身に付箋と数字を纏った外道〈パスワード・バースデイ〉


 そう、彼ら四人こそが、ゲドードス侵略帝国四天王である。


 〈フタアケ・パナシン〉が腕を一振りしただけで、直下のビルが次々と吹き飛び、大いに炸裂して魔法少女も怪人も関係なく殺していく。


 〈マルナゲルヤ・クイーン〉にもその衝撃は到達するが、全ては前線の怪人に肩代わり。その衝撃は下級怪人の体を超えて、接近していた魔法少女達にまで波及し、その身を打つ。


 〈イケタライ・クー〉は戦況を見守るのみ。


 〈パスワード・バースデイ〉は下級怪人が支える前線の後ろに控える中級怪人たちの編成を行い、確実に〈セクシー美少女軍団〉を包囲殲滅する策を立てる。


「来るなら来い! 魔法少女! われら億戦錬磨の四天王! 大王がいなくとも、その居場所は守って見せる!」


 戦闘開始から五分経過。参戦した魔法少女の数、百二十三名。残存魔法少女、百十九名。


 下級怪人死傷者数三百二十名。中級三名。上級=四天王、今だ健在。


 戦いは既に泥沼の空中戦を呈していた。


「そして、アハトちゃんは来ない、か」


 東京湾水深二百メートル。マジカルステルスで完全に息を顰めたシャイニー潜水艦〈みいろ〉の中で、アリアーネは呟いた。


「優しすぎたか。それとも……」


 アリアーネは思う。


「本物の魔法少女は、こんな戦いなんか参加しない、か」



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