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視聴者数ゼロの地下魔法少女(27歳)が仕方なく助けた魔王に激推しされてトップ魔法少女に成り上がる ~魔法がないので実銃と筋肉で戦っていたら、なぜか同棲が始まりました~  作者: 杉林重工
二章 東京は燃えているか

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二人のデートと情報戦

 空地川サビ子の最後のデートの記憶は、調布基地内のスポーツショップで靴を選んでもらったときのこと……というのがサビ子定番のトークである。


 ――そう、これは見栄である。つまり、空地川サビ子はデートをしたことも無いし、異性と手を繋ぐのは訓練で投げ飛ばすか、変身後逃げ遅れた人を助けるときだけである。


「どうすりゃいいんだ……」


『ニートリヒ=シュロス』の二〇二号室のクローゼットの前でサビ子は立ち尽くした。隣の部屋(二〇三号室)にゲドードス大王を戻した後、彼女はずっと部屋で落ち着かない。


(あいつ、本当に何を考えているんだ)


『じゃあ、明日はデートに行こう。立川に行きたい』


 恐怖の大王ゲドードスのデートのお誘い。理由を聞いても、別に、と、突き返されてしまった。こうなっては、本人の口から真実など引きずり出せない。謎である。


「そもそも、城に帰らないでわたしの家に居座っているのも意味が分からないのに」


 そこまで口にして、サビ子は気付く。


「そういえば、わたしあいつについて何も知らない……」


 はっとして部屋の壁を振り見る。その向こうには、侵略帝国ゲドードスの王がいる。二週間も一緒に暮らしているのに、サビ子はゲドードスのことをただ変な問いかけばかりする変わり種の家事手伝いとしてしか扱っていなかったのだ。


「よくまああんな化け物と一緒に住んでいられたなあわたしは」


 よくよく考えるとぞっとする。それだけゲドードスはこの家の中では無害であった証でもあるのだが。


「そうだ。これはチャンスだ。わたし達人類は、怪人のこともゲドードスのことも何も知らないんだ」


 空地川サビ子は唾を飲む。そう、これはデートではない。


(わたし達人類と未知の侵略生命体との情報戦だ!)


「はっはっは、なんだその恰好は! デートなのにスーツなのか?」

「せめて魔法少女として活躍してるのなら、フリフリのドレスでも着たらいい!」

「スッスードゲドゲドゲス!」


「知らない笑い方で人を侮辱するな!」


 空地川サビ子は絶叫した。ゲドードスのデート発言から約十六時間後、調布駅前。訓練を終えて待ち合わせの場に現れたリクルートスーツ姿のサビ子を大いにゲドードスは笑ったのである。


「それにフリフリのドレスは外では着ない! あれはわたしの変身だからな!」


「なんだ、いい年して着てられるか、みたいなことは言わないのか」


「いまだに魔法少女してるんだから人のこと言えないでしょ」


「それもそうか」


「急に真顔になるのやめてよ」


 ゲドードスは既に落ち着いてサビ子の様子を見ている。


「ところで、あんたこそ、その恰好はどうなの」


 空地川サビ子は遠目からその異物を認識した時点でそう考えていた。キューティ拘束衣を着た成人男性との待ち合わせである。いっそのこと声をかけるのすらやめようかと思ったほどだったのに。


「おれは服装に興味はない。だが、お前が着せたものだから着ているだけだ」


 そういわれるとちょっとドキッとするが、やはり問題であるとは思う。


「でも、キューティ拘束衣のままなのは流石に……」


「そうか。ならおれの服はお前が選んでくれ」


「え?」サビ子は虚を突かれ、間抜けな声を発した。


「ちょうどいい。お前の格好も相当だからなにか見繕ってやろうと思っていたが、お前がそういうならおれの服も探そう」


「お、おう……」


 サビ子はすっかり面食らって頷くのみ。すでにゲドードスは実に自然にサビ子を誘導し、調布駅のバス停へ歩いている。調布駅は現在、先の戦闘により工事が続いているためである。


「しかし、バスがあるなら電車はいらないんじゃないか。しかもわざわざ地下に敷設するとは。人間は地下が好きなのか嫌いなのかわからないな。そうだ、次は電車とバスどっちが便利か、みたいなのはどうだ」


 バス停で列に並ぶゲドードス大王。遊びに行くらしい若者や買い物に行くらしい主婦、仕事中らしい男達に混ざる彼の違和感はすごい。まず、顔の造詣からして美しいのに。


「あ、いや、それは使い分けと言いますか……役割も違いますし、片方に寄っていたら駄目になったとき大変じゃないですか」


 やや間をおいてサビ子はゲドードスへ言葉を返す。


「ふむん。そうか。確かに電車だけならおれとサビ子は立川には行けなかったな」


「あ、そうそう。そういうことです」


(何畏まってるんだ、わたしは! っていうか、今日は情報戦だって意気込んできたのに!)


 それなのに、不思議とこうしてゲドードスと並んでいるこの時間でフル回転して会話を続けようとする自分が、何故かとても愛しく感じられる。


(このデート、どうなっちゃうんだろう……)


 否! 空地川サビ子は首を振った。


(わたしはこの情報戦を制し、敵の弱点を暴くのだ!)


 覚悟を決め、空地川サビ子は対手を見上げた。いつも通りの造物じみた顔。


「どうした。そんなにおれの顔がいいか?」


「ち、ちがわい!」


 サビ子はなぜか顔を真っ赤にしてそっぽを向く。


 ――勿論、そんなサビ子の姿を遠目から、双眼鏡を使って見つめる存在になど気付くわけがない。


「空地川サビ子は立川に外出することなど滅多にないはず。一体どこに行こうというんだ?」


 〈ストーカー〉はぼそりとつぶやいた。


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