おふとりさまを卒業したい。
初めての小説です。
誤字脱字、粗さ等お許しください。
たゆんたゆん。
歩くと揺れる邪魔な胸。
金髪ストレート、空色の瞳に色白清楚で大人しそうとよく言われるわたくし。クラスで一番綺麗とは言われない。いや僕的には君が一番、ゴニョゴニョという奴も居るが相手にしたくない。パイーノ子爵令息はいつも顔を真っ赤にしてて気持ち悪いもの。身長も小さくて、なのに騎士希望だなんて無理な進路目指して頑張っていてみてられない。パイーノ子爵令息の話はどうでもいいわね。
それに自分でも一番綺麗とは思えない。わたくしはちょいポチャ、太めで胸が大きいタイプなのだ。わたくしのことを嫌いな女子は芋くさい、鈍臭令嬢と言う。まあ、確かに胸だけじゃなくてウエストもお尻もそこそこしっかりあるし、運動神経が無いからそう言われるのも仕方ないかも。
クラスで一番綺麗と言われるのは背が高くてスリムで足のすらっとした伯爵令嬢。制服のスカートからチラッと見えるふくらはぎと足首が細くてダンスが上手。
それに引き替え、わたくしときたら年配の教師にダンスを教えるふりをしながら触られたり、すれ違い様に知らない人に触られたりと嫌なことばかり。お母様は胸が大きいせいで嫌な目に会うのよ、お母様もそうだったわ、胸が大きいと下品だしおバカに見られるわよ、レディらしく華奢な身体になりなさい、とキツいコルセットを強要してくる。好きで大きくなってるわけじゃないのにね。でも、まあ、とりあえず痩せればこの胸も多少は小さくなるでしょう。頑張る!
と、思っていた時期もありました。はい。
お茶会でのお菓子は我慢、毎日の夕飯はノンドレッシングのサラダを食べてからゆっくり半分だけにして、残りの半分は翌朝に回す。毎日腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワットを10回やった。なんなら1ヶ月後には慣れてきたから20回、最終的には30回やった。笑わないで、これでもわたくしにはきつかったの。
「最近、付き合い悪くありませんこと」
お菓子を勧められても断り続けてたら言われてしまった。「お友達とのお付き合いを断ってお一人様、ううん、おふとりさまじゃない?」
なんて言われてもダイエットを続けたわ。きつくても、芋くさい鈍臭令嬢から卒業したかった。軽く扱われるのはもう嫌なの。
そんなこんなで3ヶ月。
体重はともかく見た目はかなり細くなり、靴のサイズもダウン。男子が更に優しくなり、コルセットもワンサイズダウン。アンダーバストも5センチは細くなったのに‥そういえばウエストってアンダーバストと同時に細くなるのね。肝心の胸はカップ的には小さくなったはずなのに、身体が細くなったせいかかえって目立つ始末。パイーノ子爵令息の目線が絡みついて気持ち悪いわ。
もっと痩せたら流石に減るのかしら。そう思って家と学校の間を歩くことにしたの。迎えの馬車は断って、とにかく歩く!脂肪燃焼には早歩き。次第に侍女を振り切って歩けるくらいにはなったわ。でも、それがいけなかった。
「なんなの、おやめになって」
「えー、おやめになってだって、お上品ー」
変な奴らに絡まれ、無理矢理馬車に乗せられそうになった。
「お嬢様ーー!」侍女は振り切って歩いて来てしまったから遥か後方。わたくしが悪いんだけど。これって、かなり危険すぎる状態では。どうしよう。
「や、やめろ!」歯をカチカチさせながら、パイーノ子爵令息が飛び出して来た。えっなんでそこに居るの。気持ち悪い。
「なんだよ、このチビ」一方的に殴られるパイーノ子爵令息。えっ、弱い。弱すぎる。
「お嬢様ーー!」侍女が衛兵を連れて来てくれた。
逃げる悪者達、倒れるパイーノ子爵令息。
その後、衛兵詰所でのお説教、お父様とお母様からのお説教、侍女からのお説教と多分一生分のお説教を聞かされた。はい、ごめんなさい。危機管理がなってませんでした。朝でも夕でも、もう一人では歩きません。
「俺が一緒に歩いてやるよ」
いつの間にか一人称が僕から俺に代わったパイーノ子爵令息が隣に居た。相変わらず顔が真っ赤。
わたくし、なになにしてやるよ、って言い方はあまり好きではありませんの。顔が真っ赤で目線が胸元付近を彷徨ってるのも、いつもわたくしの近くをウロウロしているのも気に入りませんわ。でも。
居ないとさびしい気も少し、少しだけ、するんですの。
二人で少しずつ、無理と言われても、向いてないと言われても。なりたいものがあるなら諦めないで進んでいきたいと思ってしまったの。
「おふとりさまはもう、卒業したいから」
「ん?何か言った?」
「ご一緒に歩いていただけるとうれしいわ」
おふたりさまを卒業したい。これからはお二人さまで、お願いします。




