エイミーの言うことにゃ
「あー…。あぁー…」
宿屋にてクリスが拾った人物を
介抱しながらリョウは唸っていた。
あんなにも元の場所に
返してきなさいと言ったのに。
まーまーまーと
いつものペースで
軽くかわされて。
クリスが放つ
転移魔法で宿屋に移動して。
まーまーまーと
ベッドに寝かされた人物を横目に。
じゃ!ボクは用事あるから出掛けてくるね!
とクリスは言い放ち、
目を剥いたリョウに構うことなく
出掛けていってしまった。
結婚したことはないが、
夜な夜な遊び歩く
ろくでもない亭主をもつ
妻の気持ちはこうなのではないか、
と推測する。
文句も意見も多々あるが、
拾われた相手に罪はない。
小さく呻いている
その人物を放っておけずに、
リョウはため息をつきながらも
桶とタオルとお湯を借り、
意識の戻らぬ人物を介抱することにした。
美形である。
あ、クリスの奴、
顔で選んだな、ってくらい
美形である。
街で倒れていたならば
色んな女性から解放されていたに違いない。
うなされているのか
眉を寄せて苦しそうだ。
柔らかい茶色の髪をなで、
お湯で固く絞ったタオルを
頬に当てると心地よかったのか
表情が柔らかくなった。
そのまま土や砂で汚れた
腕や首を優しく拭いた。
「…どこから来たんやろうなぁ…」
リョウ達の住むこの世界には、
何の脈絡もなく
異世界の住人が現れることがある。
神のいたずらと揶揄される現象は
本人の意思に関わらず起こる出来事で、
喜ぶ人間はまれで、
大体の人間は災害だと嘆く。
急に見知らぬ場所の
見知らぬ世界に
捨て置かれるのだ。
不安しかなくて当たり前だろう。
感じたことのない手触りの、
見たことのない生地で作られた服に身を包む
まだ若いであろう美丈夫の
これからの事を思うと気の毒でならない。
「…ねぇ。」
不意にエイミーの声がして、
リョウは悲鳴を呑み込んだ。
足の間からエイミーが顔を出している。
叫ばなかった自分を褒めてやりたい。
「…どこから登場すんねん」
「…え。ベッドの下からだけど」
「なんで、そんな、すき間に、おんねん、
ってきいとんねん。」
「…敵に闇討ちされないように備えて休んでいたのよ。それより彼女、良いわね」
「彼女?どこの?」
「…ここの」
「どこの?」
「…ここの」
辺りを見渡すが、
この場には眠る人物を含めて
三人しかいない。
「?彼女ってまさか…」
「…クリスが拾ってきた、その子よ」
「おぉー…女の子やってんかぁー」
完全にイケメンと信じて疑わなかった
この容姿で女の子。
リョウの中で
気の毒要因がまたひとつ追加された。
「良いって…なにがなん?」
「…身体能力が高いと思うのよ。
筋肉のつき方も骨格ものびしろしかない」
寡黙であまり他人に興味がないエイミーにしては珍しい称賛である。
…が。
「だからなんなん?」
「…旅の同行者として心強いわ」
「ってまさかつれてく気なん!?」
ただ拾うだけでなく、
旅に連れていくとなると
責任も危険もかなり違う。
思ってもいなかった話に
リョウが思わず立ち上がったとき、
たっだいまー!と
元気よくクリスが帰ってきた。
読んでくださりありがとうございます。
リョウはおかん属性で
クリスは末っ子属性
エイミーはスナフキン属性です




