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小説:わたしの居場所はカナダにあった

 女子大に通う鍋島(なべしま)絵美里(えみり)は、5月から他大学に通う島森(しまもり)(とおる)と交際を始める。絵美里が8月からカナダに留学することは前々から決まっているので、透はそれも承知の上で交際したいと言ってくれた。絵美里が京都から地元に帰る時は透が駅まで見送ってくれ、地元からカナダに出発する時は両親と妹が見送ってくれて、絵美里はカナダに到着した。

 まずは語学学校に通うことになったけれど、絵美里は慣れない環境で授業についていくのに必死だ。他国から来た学生はどんどん発言しているのに対し、絵美里はなかなか授業で発言できなかった。周りより英語力が劣っているのではないかという自信のなさと、これを言って笑われたらどうしようかという不安から来ていたのだ。先生やクラスメイトから

「絵美里はどう思う?」

 と聞かれないと答えられなかった。けれどこのままではいけないと思い、絵美里は空き時間に英会話クラブに行ったりクラスメイトとたくさん関わって発話する機会を増やしてみる。そうすることで授業でも次第に発言できるようになり、周りからは「変わったね」と言ってもらえるようになった。

 透とは相変わらずLINEやビデオ通話で話していて、「11月の学祭期間中にそっち行くわ」と透が言ってくれる。絵美里は透が会いに来てくれるのが待ち遠しかった。


     *


 11月になり、透が絵美里に会いにカナダに来てくれる。3ヶ月ぶりに再会できて絵美里は嬉しくなった。付き合って半年記念日でもあったので、カナダにあるブックカフェで記念日をお祝いする。それからは一緒にショッピングモールに行ったりご飯を食べに行ったりし、絵美里と透はカナダでのデートを満喫した。

 3日間一緒に過ごした後、絵美里は日本に帰国する透を空港で見送る。どんどん小さくなる透の背中を見届けて絵美里は寂しい気持ちになったけれど、透は来年の2月にまた来ると言ってくれた。

 透との国際遠距離恋愛が再び始まってからも、絵美里と透はこまめに連絡を取り合っている。毎朝のビデオ通話も欠かさなかった。けれど12月になったばかりの頃、透はビデオ通話中にこう言ってくる。

「絵美里ごめん。バイト先の後輩のこと好きになって、付き合うことになったんだ……。だからもう、俺たち別れよう」

 話を聞くと、透は1歳下のアルバイト先の後輩から何度もアプローチを受けていたという。絵美里がいるからと透は断り続けたけれど、飲み会の後に「1回でいいから抱いてほしい」と後輩から頼まれて酔った勢いで関係を持ってしまったそう。それから後輩に半ば脅されるような形で付き合うことになったらしい(「付き合うつもりがないなら、店長に『島森さんからセクハラされた』って言いますよ?」と後輩から言われたそう)。

 絵美里はショックを受け、頭が真っ白になった。結局透の連絡先はすべてブロックしたけれど、毎日泣いて過ごす日々が続いている。ルームメイトのジルや同じ大学から来ている留学生仲間の大石(おおいし)葉月(はづき)に話を聞いてもらい、結果それぞれが透に怒り、呆れ果てていた。ジルは

「そういう男は次の彼女ともうまくいかないから大丈夫。絵美里にはもっといい人いるわ」

 と言ってくれ、葉月は

「なんなのそいつ、クソ男じゃん! 絵美里のこと何だと思ってるの?」

 と呆れ果てていたのだ。話を聞いてもらえて絵美里は救われたような気持ちになった。

 12月8日に、日本にいる同じ大学の木元(きもと)幸穂(さちほ)からLINEで絵美里宛にクリスマスカードを送ったと連絡が来る。写真も送ってくれたけれど、絵美里が好きなキャラクターのクリスマスカードを選んでくれていた。絵美里は幸穂からのクリスマスカードを受け取るのを楽しみにしている。

 それから1週間後の12月15日、絵美里の元に幸穂からクリスマスカードが届いた。幸穂は手書きでメッセージを書いてくれており、絵美里はそれを見てふふっと笑う。失恋して落ち込んでいたけれど、絵美里は幸穂からのメッセージを見て嬉しくなったのだ。

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