あるメッセージ
ある日の宇宙局は、新たな発見に沸き立っていた。惑星外からのメッセージをキャッチしたのだ。
宇宙局長官は、深い感慨を込めて呟いた。
「ついにこの日が来たな……」
「ええ、本当に……。我々も昔、宇宙に向けて電波でメッセージを送りましたが、その返信でしょうか?」
「いや、あのメッセージはまだ知的生命体のいる惑星には届いていないはずだ。おそらく、どこかの惑星の生命体が、我々と同じように宇宙にメッセージを送ったのだろう。それで、解析は進んでいるか?」
「ええ、もうすぐです。ただ、言語そのものの解読まではさすがに……」
「仕方がないな。情報量が少なければ翻訳も難しいだろう。まあ、きっと我々と同じように挨拶から始まり、文化紹介に、それからこの星とっておきの――」
「あっ!」
「どうした?」
「音声データを変換できました! 再生してみます!」
「うむ」
その音声が流れた瞬間、宇宙局内はまるで時間が止まったかのようだった。音声が終わると、局員たちは息を止めていたことに気づき、大きく息を吐いた。涙を流す者、心臓の鼓動に体を揺らす者、さらには笑い出す者までいた。
「これは……なんて素晴らしい。ああ、最高の音楽だ! この曲は、宇宙開発史だけでなく、音楽史にも革命をもたらすだろう!」
「ははは、長官、大げさですよ……」
「ふふっ、君も泣いているじゃないか」
「ええ、すごすぎて腰が抜けちゃいましたよ。力強く、哀愁があり、それでいて胸がすっと軽くなるような……ただ、途切れている部分があるので、解析の精度をもっと上げたいですね」
「ああ、それから著名な音楽家たちに編曲を依頼しよう。でもその前に……」
「はい、もう一度聞きましょう。いや、何度でも……」
数週間後、完成したその曲は瞬く間に大ヒットし、チャートのトップを飾った。街中では人々がそのメロディを口ずさみ、ステージではアーティストたちが熱狂的に演奏した。
元となった宇宙からのメッセージは一般公開され、音楽を愛するこの星の人々にとって聖典として崇められるようになった。
その“原曲”の内容は、以下の通りである。
『これは――からの――です! 我々の惑星は、かつてない――に瀕しています! この星のすべての生命体が絶望の淵にあり――自然災害――安全ではない――感染拡大――息もできないくらい――予測不能――制御不能――どうかこのメッセージを聞いた星の方々よ、宇宙の友よ、助けてください! あなたたちの技術、知恵、何でもいい、救いの手を差し伸べてください! 見捨てないでください! ああぁぁ、助けて、助けて、繰り返します……これは、地球からの緊急SOSです……』