episode1.思い出の妖怪 2
あなたは「児童養護施設」と聞いて何を思い浮かべますか?
私のことでしょうか?
おそらくあなたはこの類の施設に実際に入ったことがないと思うので、そこがどんなところか、多分知らないと思います。
なので施設の仕組みというか、どんなところなのか、ちょっとだけ説明します。
私の入った「和香園」は2歳〜18歳の子どもたちが数十人単位で生活している場所です。
施設によってルールとかは大きく違ったりするのですが、和香園はその中でも割とゆるい方でしょうか。
高校生から携帯は持てるし、お小遣いも毎月いくらか貰えて、その範囲内でしたら自由に使えます。
でも正直に言って、私は施設での生活はあまり好きではありませんでした。
いや、うーん、あまり思い出したくない、のほうが正しいでしょうか。
まあ、誰しもが好き好んで望んで施設に入るわけではないでしょうし、当然、と言えば当然、なんでしょうか?
どうなんでしょう?
そう思っているのは私だけでしょうか。
具体的に言うのならば、施設にいた暮らし自体が嫌というわけではなくて、施設で育つ私達と一般家庭で暮らす子たちの間に、明確な差があるということです。
小学校までは学校も施設の中にあったので違和感はありませんでした。
でも、中学や高校と進学していくにつれて浮き彫りになっていく施設の中での「普通」と、施設の外での「普通」の様々な違いたちに、私はついていけなくなったのです。
酷いいじめにあったとか、クラスの中で除け者にされたとか、そんなことは全く無かったのですが、学校という社会的集団はそういう一種のズレに対して、とにかくバリケードを張れ、という風潮が強いように感じます。
もっとも、これは日本の中だけの問題なのかも知れませんが……。
バリケードを張っているのは周りの人たちなのか、それとも私の方なのか、それは分かりませんけれど、そんな事もあって私には友人と呼べる人が少なく、高校を卒業して施設を出た今も連絡を取り合っているのは、特に仲の良かった2、3人くらいです。
学生時代でさえそんな感じなのですから、社会に出て働き始めたら、その感覚はもっとはっきり色濃く感じるようになりました。
なんというか、うまく言葉にしにくいのですが、自分一人だけ浮足立ってしまっているような………。
空回りしてしまっているような気がするのです。
周りの一挙手一投足が気になって、今の行動は普通だったか、あの時発言したことはやっぱりやめておけばよかったんじゃないか、思い出すと今でも顔が赤くなるのを感じます。
私が変なんでしょうか?
教えてくれる、答えてくれる人は居ないと思うし、もし仮にいたとしてもこんなことを聞く勇気は私にはありませんが……。
考え出すと昔の嫌だったことをどんどん思い出してしまうので、一旦思考を止めましょう。