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瘴気吸引《ジュエル》と屍人《ネルガル》 ②

ん?待てよ?じゃあ、私がここにいるのは大丈夫ってことは分かったけど、この少年はこんな場所にいても果たして大丈夫なのか?


私の言いたいことを読み取ったのか少年は徐に首から下げていたネックレスを取り出した。

そこには綺麗な金色の宝石が付いていた。


「これが、瘴気吸引(ジュエル)だ。普通の人はこれを身に付けることによって瘴気から身を守ることができるんだ」

「ただの宝石じゃないの?」

「この宝石は瘴気を吸収することのできる特別な宝石なんだ。この世界では生まれた時にその人の素質に会った瘴気吸引(ジュエル)を配ることを義務付けされているんだ」

「素質にあった宝石?」

「魂の色……とも言うな」

「ふーーん。じゃこれがあんたの魂の色なの?」

「ああ。俺の魂の色は金色……そして俺に授けられたのは黄金石(レモンクォーツ)だ」

黄金石(レモンクォーツ)…………綺麗な色だねー。ねね!私にもあるのかな?!素質の色ってやつ!」

「あるんじゃないか?この世には千差満別な魂の色が存在しているからな。でも、お前は必要ないだろこれに頼らなくても浄化できるんだから」

「まぁ、それもそうだね。こんないかにも高級なやつを身につけていたら肩が凝りそう」


想像しただけで落ち着かない。

元の世界では平凡な生活を送っていて、宝石を間近で見る機会なんてなかったからなー。

ちょっと得した気分。


「でも、これの取り扱いを間違えると大変なことになるんだよなー」


私が一人で元の世界へと思いを馳せているとボソッと少年は呟いた。


………………大変?


私が説明を求めて少年を見上げると、少年は心得たとばかりに頷いて説明を始めた。


読心術でも使えるのかこの少年は………。


「このジュエルには瘴気を吸引できる量が限られてるんだ。瘴気を吸引できる限界値を超えて吸引した場合は----」


何故か少年は意味有りげな場所で一旦区切ると真剣な表情で私を見てきた。


な、なんだ?なんでそんな目で私を見てんの?


ゴクリ。よく分からない緊張から私は生唾を飲み込んで続きを待った。


「---砕け散る」

「砕け散る………。ん?」


何が問題なんだろう?

砕け散るってことは壊れるってことだけど…壊れたら新しいのをこの際もらうのか?

まぁ、貰えばいいだけなのでは?

私の疑問が伝わったのか、少年は表情を緩めずにそのまま続けた。


「まずいんだよ。壊れると」

「なんで?」

「瘴気の限界値を超えて吸引したジュエルが砕け散った場合、そこに蓄積された瘴気は何処に行くと思う?」

「え?えっと………大気中に戻るんじゃないの?」


私がそう答えると少年は静かに首を横に振った。

不正解だったみたいです。


「そのジュエルを付けていた装着者に一気に流れ込む」

「え……流れ込むってまさか、瘴気が体内にってこと?」

「その通りだ。だから定期的にジュエルの浄化を行う必要があるんだ。これを怠るとジュエルが砕け散る」

「それって大丈夫なの?」

「何が?」

「何がって、その大量に瘴気を吸収すると死ぬって聞いたよ?」

「あぁー。お前は知らないのか。まぁ、死ぬ……とも言うし死なない……とも言える」

「どういうこと?」

「瘴気に蝕まれたものは全て一重に屍人(ネルガル)へと落ちる」

屍人(ネルガル)?」

「瘴気に蝕まれて魔に堕ちた人達のことを俺らはそう呼んでるんだ」

「魔に堕ちるとどうなるの?」


何となく予想はできるけど何故かこの時の私は明確な答えが欲しくて恐る恐る少年に聞いた。


「簡単に言うと魔物になる。魔物になってしまったが最後助かる方法は無い。殺すしかなくなるんだ」

「……………」


予想通りの答えだった為驚きはなかった。

だけど、考えを改めなければいけないような気がした。この世界に生きる人達にとっては瘴気とは、凄まじい脅威なんだって。

命を脅かしかねない危険なもの。

もしもそんな中で世界樹が枯れてしまったら?

そうしたらこの世界は魔物で溢れてしまう……。


そっか、だからエレシアは私に助けを求めたの?

自分の力だけじゃこの世界を守りきれなかったから?


私に出来るのだろうか……この世界を救うなんて大それた事を………。



グォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「「?!?!」」


私が弱気になってそんなことを考えていたら急に森の方からものすごく大きな雄叫びが聞こえた。


急に聞こえてきたものすごい雄叫びに私がちょっとパニックになっている横で少年はしまったという顔をした後「忘れてた……」と口にした。


忘れてたって何?!まさかこいつ何かとんでもないものを連れてきたわけ?

私が問いかけるようにジトっとした目を少年に向けると少年はそのジト目を受けて「うっ」っと言葉に詰まった。

だけど私が話すまで逃がさないよというように圧をかけてニコリと微笑むと顔を引き攣らせながら観念したように言い訳を始めた。


「いや、これにはだな……話せばそれは長くてふかーーーーい理由があってだな」

「ふーーーん。話せばふかーーい理由……ねぇ?」

「あぁ、それはもうふかーーーーい理由なんだ」

「へぇ〜、それは是非とも聞いてみたいわね?」


そうにこやかに言って少年に近づいて行くと少年は顔を引き攣らせて下がった。

私が1歩近づくと少年は1歩下がる。そんな一進一退の攻防を繰り広げていると森の中からドスドスと地に響く大きな足音が聞こえてきた。

2人してピタッと動きを止めると足音のした方を凝視した。

そしてそれはそこから現れた。

現れたのはそれはそれはとても大きなーーー


「クマぁぁぁぁ!!」


だった。クマだった。体長3mは超えているんじゃないかってくらい大きなクマだった。

見るからに邪悪そうな鋭い目付きに、簡単に人1人くらい踏み潰せそうな大きな足。

そして何より、口からどす黒い煙みたいなのが吹き出していた。


私は、あまりの衝撃すぎる見た目にびっくりして固まってしまった。

少年が横で「おい!」とか言って私の肩を揺さぶってくるけどびっくりしすぎて思考が停止した冷雪には聞こえていなかった。


そうして、しばらく目の前のクマを呆然と見ていると急に頭に衝撃が走った。


「いったぁぁぁぁぁい!!!! 何すんの?!」


あまりの痛さに頭を押えて振り返ると、少年はどこから取りだしたのか分からないがハリセン的なものを持っていた。


「お前がぼぉーーっとしてるからだろ?!とりあえず逃げるぞ!今の俺たちじゃビックベアには勝てない!それに今は瘴気の影響でさらに凶暴化しているから厄介だ」

「…………ビックベア?……って大きいクマってこと?」


そう言いながら目の前からドスドス足音を響かせながら近づいてくる()()を見上げた。

見上げて思ったことはひとつ。……うん……まんまの意味じゃん。

ビックベアって そのまんま大きいクマやん。

見た目通りの名前に私が内心でちょっと笑っていると少年は呆れたように眉をひそめて「クマ?ってなんだよ」と聞いてきた。

え? クマを……知らない? いや、そんなわけないよね?だってどこからどう見てもクマにしか見えない()()

をビックベアって呼んでるのに?


ベアはクマってことでしょ?ビックは大きい……….。


「何って……目の前にいるじゃんめっちゃデカいクマが」


そう言って私が指をさして言うと、少年はいやいやと首を振った。


「いや、あれはクマじゃなくてビックベア」

「だからクマでしょ?」

「だから違うっつってんじゃん」


え?違うの? 私は近づいてくるビックベアを見やると、いやどこからどう見てもクマでしょ?と思った。

……もしかしてこの世界にはクマという概念というか存在がいない訳?



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