扉を抜けた先では……?
「ここが……ミズカルズ」
扉をくぐり抜けたあと私は、周りが森に囲まれた大自然な草原が一面に拡がっているその中心にポツンと独りでに佇んでいた。見渡す限り1面の緑……周りには誰もいなければ人の気配すら感じられない。
そんな中に1人放り出された私が思うことはただ1つ……。
「ここ……どこ?」
いや、ほんとにどこ?
エレシアはひとまず先にカトレアという国に行けって言ってたけど……それどこにあるの? 国どころか街の影や形すら見当たらないよ? こんな土地勘も何も無いところでいきなり行ったこともない国を探すのなんて無理だから。
そもそもこんな大自然の中いきなり1人放り出されてどの方角に進めばいいのかわかんないし、そしてこの世界に来る前にエレシアは魔物に気をつけてって言っていた。
詰まるところこの世界には魔物という人に害をなす化け物がいるみたいだ。
……うん、尚更ここに1人でいるのは危ないね。
とにかくこういう時こそ冷静に落ち着いて考えようではないか。
今私は、見晴らしのいい草原の真ん中に立っている。
そしてここがどこだかさっぱり分からない。
どの方角にカトレアがあるのかも謎だ。
改めて周りを見渡してみても……うんさっぱり分からないね。
ここまでの私の現状把握は大丈夫?
私は大丈夫じゃないけどね。
私の現時点での状況を鑑みて、とりあえず無闇に動いたり、勘とかで突っ走ったりして冒険心を出したりして森に1歩でも踏み込んだら間違いなく森の中を彷徨いまくった挙句に運悪く魔物さんとのエンカウント……なんて最悪なパターンになりかねない。……なんてたって私軽い方向音痴だから森の中で迷う自信めっちゃあるよ。
という感じで結論が出た訳だけども、つまり今私に現状でできることといえばひとまずこの場所から動かずにここから出る方法を模索することだな。
……さすがの私も異世界に来てそうそう死にたくはないからね。できるだけ慎重に行った方がいいだろう。
というわけで気合を入れるためにも自分の頬を思いっきり叩くとその場に勢いよく座り込んで腕を組みながらここから出るいい方法がないか熟考し始めた。
うーんうーんと唸りながら熟考すること5分。
ひとつの結論にたどり着いた。
……詰みじゃね? 完全に詰んだわ。考えるまでもなく普通にわかってたことじゃん。
私には無理だよ。どう頑張ったって私一人の力じゃこの場所から出ること不可能でしょ。
さっきも言ったけど私方向音痴。森なんててきめんに迷う。だけど、今現時点では方向音痴はさほど重要じゃないと思うのよ。
それよりも重大なことが私にはある!
……私……丸腰なの。
自分の身を守れるすべなんにも無いの。
武器も何も無ければこういう時の必須アイテム的な回復薬とかキズぐすり系アイテムとかも何も持ってないんだ。
この状況で私には一体何ができるんだろうか……。
普通こういう場合ってさ? 異世界召喚特典みたいなのでさ
なにかこう……自分の身を守れるような私にあった武器とかをさサプライズでくれたって良くない?
こんな何も持っていないか弱い女性をこんなところに独りで放り出すなんて、なんて理不尽なんだろうか。
今の私なら魔物どころかその辺の山賊とかにでさえ秒で負ける自信あるよ。
そんな感じで行き詰まって打つすべが何も無い現実を呪いながら現実逃避をしかけていたら……ガサガサという葉が擦れる音がした。
!? なに!?
私はいきなり聞こえた音にびっくりしてほぼ反射で立ち上がった。
そして、何が出てくるのか警戒しながら音のした方を凝視した。
まさか異世界に来て早速魔物とエンカウントするのか?
いやいや、まって今この状況で魔物とエンカウントなんかしたら私普通に死ぬから。
とりあえず何か武器になりそうなの落ちてないか!?
内心でちょっとパニックになりながら何か落ちてないか周りをキョロキョロと見てみたけど何も無かった。
何も無い! どうしようどうすんのどうすればいいの!この状況を打破できるものが何も無い現状に私は頭を抱えて叫びたくなるのを鋼の心でなんとか落ち着けていた。
落ち着け……落ち着くんだ私よ。
すぅはぁすぅはぁと落ち着かせるために何度か深呼吸をした。
私がパニックになっている間も草木がガサガサと音を立てていた。
周りに自分の身を守れそうなものが何も無いのがわかったのでこうなったら逃げるしかないと思い、何が出てきてもすぐに逃げ出せるように臨戦態勢に入った。
しばらく固唾を飲んでガサガサ揺れているところを目をそらさずにじっと見てるとついにその草影から何かが飛び出してきた。
そこから飛び出してきたのは
「マジでどこまで追いかけてくんだよ!!!」
なにかに追われているのか、後ろの方に向かってキレ気味に叫びながら全力疾走で現れた……金髪碧眼の少年でした。
私はてっきり魔物が飛び出してくるかと思ってめちゃくちゃ身構えていたのに出てきたのは少年だった。
なのでちょっと安心したら足の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。
座り込みながら少年の方を見ると少年は「なぜこうなった!?」などとブツブツ言いながら全力でこっちに向かって走ってきた。
こっちに近づいてくるにつれて少年は初めて私がいることに気づいたのか、驚きで目がまん丸く見開かれた。
そうして放った一言が
「人間か!?」である
「………………え?」
言われたことが一瞬理解できなくて呆然としていると、そのすきに近くまで来ていた少年はガッとおもむろに私の肩を掴んで揺さぶり始めた。
ちょっと!いきなりなんなの!?
「お前人間か?!何故人間がこんなとこにいんだよ…しかも瘴気吸引を付けてないのか?」
いきなり人の肩を掴んで揺さぶりながら何を言うかと思えば意味不明なことを言ってきた。