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聖女降臨!?~波乱万丈なる旅立ち~  作者: 朔間真冬
第2章 白魔道士ラウラ・ヴィスタは魔術オタク
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魔塔の主?

それは、唐突に目の前で起こったのだった。

私とルティルはユレア様に頼まれてとある建物の前までやってきた。


そして、その建物の中に足を踏み入れようとした直後その建物は跡形もなく突然吹き飛んだのだった。


「え?」


目の前でとても立派な建物が倒壊していく様は中々お目にできることでは無いだろう。

とても貴重な体験をしてしまった………などと何とか目の前で起こった出来事をポジティブに受け止めようと頑張って見たけれど、、、。


「受け止められるか!!!!」


限界に達した私はそう叫ばずにはいられなかった。


隣にいるルティルはこの光景を見た時から何故かずっと笑っている。


「また派手にやったなーラウラ」

「いたたた………また失敗か……」


ルティルが瓦礫の山に向かって声をかけた瞬間にその中から瓦礫をかき分けてルティルと同い年ぐらいの少年が出てきた。


これまたルティルとは違った美少年だな。

銀髪の中から覗く切れ長の琥珀色の瞳はキラキラ輝く宝石みたいにとても綺麗。

そして、髪の長さは肩ぐらいまであって後ろの方でハーフアップにまとめてある。

この世のものとは思えないくらいのとても整った造形をしている。


………この世界顔面偏差値が高くないか?


静かに少年を観察していたら不意にこっちを向いた少年と思いっきり目が合ってしまった。


「…………誰?」

「えっと………冷雪と言います」

「…………………」


誰と聞かれたから名乗ったのに少年は興味が無いように私から視線を逸らすと隣にいるルティルを見て嫌そうに顔を顰めた。


「またあんたかポンコツ王子」

「誰がポンコツ王子だよ」

「あんたしかいないでしょ。あんたが来るといつもろくな事にならない。そして、あんたが来るということはまたなにかトラブルを連れてきたね?」

「それじゃまるで俺がトラブルメイカーみたいじゃないか」

「みたいじゃなくて実際そうでしょ。あんたと陛下は間違いなくトラブルメイカーだ」

「…………お前サラッとこの国で一番偉い人を貶すなよ」

「貶してない事実だ」

「……………不敬罪に取られてもおかしくない発言だぞ」


少年は、ルティルの言葉を聞くなり馬鹿にしたように鼻で笑った。

そしてこれまたいっそう不機嫌さを隠そうともしない蔑んだ目でルティルを見やったのだった。


仮にもこの国の王族をあんな目で見てもいいのだろうか?


……まぁ、ルティルがあんま気にしてないようだから別にいっか!


なんかこいつに関することで深く気にするのも馬鹿らしいし。


「あんたらは僕を不敬罪だかなんだかにして罰することなんかできないでしょ。一体君たち親子はいくら僕に借りがあると思ってるの?」

「うっ!」

「借り?」


借りとはなんだ?

その言葉を聞いてルティルはしまったと言わんばかりの顔をして固まっている。


親子と言うからにはルティルと陛下の事だよね?

ユレア様のことでは絶対にない気がする。あの人が唯一の王族の常識人だからね。


一体陛下とルティルはこの人に何をしたんだ?


「君はそんなことも知らないでこのバカと一緒にいる訳?このバカがどれだけ僕に迷惑をかけたかも知らないで?」


なんか、言葉の端々に棘を感じるのは私の気のせい?

このポンコツと一緒にいるってだけでなんで私まで目の敵?にされないといけないのよ。


「知ってるわけなくない?このバカとは今朝会ったばかりなのよ?私だって好きで一緒にいる訳じゃないから」

「じゃあ、なんでこのバカと一緒にいる訳?」

「仕方ないじゃないユレア様に頼まれたんだから」

「…………あぁ、王妃様か……なら仕方ないね。あの方の頼みを断れる人なんてこの国にはいないから。なんてったってあの人は王族の中で唯一の常識人だからね」

「………………」


今朝、陛下たちにあったばかりの私でさえも少年が言わんとすることは何となく察した。

確かにあの人たちに比べたら断然!いや、圧倒的に王族の良心の塊である。


「それで?王妃様に頼まれってきたってことはなにか用事でもあるの?」

「えっと……王妃様からの直々のお願いです。お城の修繕の以来に来ました」


確か、こういう風に言えば断われられないって言われたけどどういうことなんだろう?

普通は王族の頼みを断ろうなんて人いなさそうだけど。

不思議に思いながらも何気なく少年の方に目をやるとこの世の感情を全部削ぎ落としたかのような無の表情で立ち尽くしていた。


「ヒッ!」


怖っ!なんだあの一切感情の籠っていない目は!!

なにか、私まずいことでも言っちゃった?!


「またか………」


私が内心で恐怖に慄いていると少年はボソッと言葉を発した。


「また?」

「はぁぁぁぁぁ」


うわっすっごい思いため息。

あんな盛大に頭を抱えてため息つく人初めて見たかも。


というか【また】ってなんだ?


「もしかして、お城の破壊ってこれが初犯じゃない?」

「あたり。この親子は毎月2、3回はお城を半壊させたり、お城の屋根を吹き飛ばしたり、またある時は城の一角が全焼したりしているんだよ」

「…………は?」


なんだそれは?

この親子は破壊神かなにかなの?

どうやったら月に2、3回も城を吹き飛ばすのよ。

何かを壊さないと死んじゃう病気にでもかかってんのかこの親子は。


でも、確かにあの光景を見たあとでは納得せざるを得ないな。


あんな光景が毎月起こるのか………。

ユレア様には同情を禁じ得ないぞ。


「それで城が壊れる度に僕が呼ばれて僕の魔術で修繕するってのがいつもの流れなんだよ」

「なるほど……どうりであのバカをみた瞬間に顔を顰めるわけだな」

「まぁ、修繕をお願いに来たってことはあのバカがまたなにか壊したんだろうね」

「修練場の天井に風穴を開けてた」

「あのバカは学習能力が無いわけ?」

「出会って間もない私でもわかるわよあのバカは学習という言葉を知らないと思うの」

「お前らなァァァァ!!!!!」


今までずっと黙っていたルティルが突然怒鳴りながら私たちの間に割入ってきた。


「さっきまで黙って聞いてれば揃いも揃ってバカバカバカって!俺!仮にも王子なんだけど?!」

「「……………………」」


その言葉に思わず私と少年は無言で顔を見合せてしまった。


「なんだよその顔は」

「王子として敬って欲しいならもうちょっと王子としての威厳とかを身につけたらと思っただけ」

「同感」


私たちが淡々とそう述べるとルティルはため息をつきながら「似たもの同士すぎるだろお前ら」と言ってきた。


心外だ……。こんな失礼なやつと同類と思われるなんて!


「「は?気持ち悪いこと言わないでくれる?」」


少年と私の声が見事にハモってしまった。


「真似しないでくれる?」

「それはこっちのセリフなんだけど。というかあんた誰なのよ。ここまで普通に会話しちゃってるけど、私あんたの名前すら知らないんだけど」

「はあ?そんなことも知らなかったの?」


そう聞くと少年は思いっきりバカにした感じで鼻で笑いやがった。


こいつ!

知らないのは当たり前でしょうが!

私にだけ名乗らせておいて思いっきりガン無視して自己紹介も何もしてないんだから!


私が怒りに震えながらプルプルしていると慌ててルティルが私の身体を抑えてきた。


「まあまあ落ち着けって!」

「しょうがない。無知な君のために自己紹介をしてあげるよ」

「おまっ、あんま煽んなよ!」

「殴ってもいいか?」

「ダメだから!」


ルティルが頑張って私の怒りを抑えようとしている中、そんなのもお構い無しに自己紹介を始めた。


自由すぎるだろこの少年。


「僕はラウラ・ヴィスタ。ここ魔塔の管理を任されているんだ」


ラウラと名乗った少年は後ろの瓦礫の山を指さしながら言った。


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