美男美女な国王夫妻
ホケーーーー……………………。
まさかの衝撃的な事実発覚によってしばらく空中を睨みながら放心状態に陥ってしまった。
「おい…………大丈夫か?」
私があまりにも動かずに静止しているからか、心配したルティルが私の目の前で手をヒラヒラさせながら声をかけてきた。
「母上の所為で固まっちゃったじゃないですか」
「まさか、こんなに驚くとは思っていなかったわ……」
王妃様は手に持っていた扇子で口元を隠しながらそう呟くと次の瞬間にはニッコリと笑みを深めながら「面白い子ね~」と言いながらコロコロと笑いだした。
「…楽しんでますね」
「からかいがいのある子ね?」
「はぁ」
王妃のその返しにルティルは頭を抱えかながらため息をついた。
そして、放心状態から中々回復しない私を見かねたのか、ルティルはこっちを一瞥して近づいてきた。
近づいてきて何をするのかと思ったら、勢いよく両手を広げて息を吸い込むと広げた両手をこれまた勢いよく閉じた。
次の瞬間
パン!!!!!!!!
と衝撃音が鳴った。
「?!?!はっ!」
「気が付いたか?」
ルティルが放った衝撃音によって我に返った私はパチパチと何度か瞬きをするとルティルの顔をガン見した。
「な、なんだよ」
「いや、よく見ると王妃様とルティルの顔めっちゃ似ているなと思って」
いやホントに瓜二つだよ。
よくこれで親子だと気づかなかったな私よ。
どっからどう見ても親子にしか見えないよ。
「少しは落ち着いたかしら?」
私が改めてお二人の顔を見比べていたら王妃様はそう問いかけてきた。
時間経過に伴って、衝撃からは抜け出せたので頷きながら頭を下げた。
「大変お見苦しいところをお見せしました王妃様」
「まあ!王妃様だなんてとても他人行儀だわ。私のことはユレアって呼んでいいのよ?」
「?!いやいやいや!普通にダメだと思うんですが!?」
なんてことを言うのかこの人は!?
私が全力で頭を振りながら拒否の姿勢を見せていたら、廊下の奥の方から全力で駆けてきている足音が聞こえてきた。
なんの音?
私がくびを傾げながら扉の方を見ているとバンッと勢いよく扉が開いた。
「やっぱりここにいたのかユレア!!酷いじゃないか!!私に全ての公務を丸投げして自分は行方をくらますなんて!!!」
そう言いながら部屋に入ってきたのは、ルティルと同じ金髪碧眼の男性だった。
いや、正確には違う。同じようで同じでは無い。
髪の色と目の色は同じだけど、圧倒的に……そう…圧倒的にルティルなんかの非じゃないくらいの超絶なイケメンだ!?
あまりのイケメンっぷりになんか光り輝いて見えるよ?!
私だけかな?私の目がおかしくなった?
私がそんな感じで圧倒的イケメンオーラにやられて固まっていると、イケメンはこちらを向いてニコッと笑った。
そう笑ったのだ!イケメンの微笑みは時に凶器となる。
それを真正面から受けた私は、ぎゃあああ私の目が!!となるのはもはや避けられない自体とも言えよう。
結果、結論を言うとイケメンの上のさらに上の超絶イケメンを視界に入れるのは目の保養ではなく、目の毒になるということを今、私はこのときをもって身に染みたのだった。
「なにしてんのお前」
私が、またもや現実逃避をして(ルティルにとってはとても失礼な)ことを考えながら両目を覆って天を仰いでいるとルティルがそう聞いてきた。
「イケメンすぎる人を見ると目の毒だなと感じました」
「何言ってんの? イケメンならお前の前にずっといるだろうが」
「………それこそ何言ってんの?確かにルティルもイケメンだと思う……が!あの人を見たあとだとあんたのイケメンなんて目が霞むわ!!」
「お前は相変わらず失礼すぎるだろうが!!俺は仮にも王族なんだぞ!!もっと敬えよ!」
「敬って欲しかったら敬って貰えるような言動をしなさいよ!!今んとこあんたのどこに敬える要素があんのよ!」
「あるだろ!!全身から滲み出てるだろうが!!!」
「どこがよ!仮にあんたに敬える要素があるとするならばその綺麗な容姿しか取り柄がないでしょ!」
「他にもあるわバカが!」
「例えば?」
私がそう問いかけると一瞬間が空いた後に、ルティルは胸を張りながら堂々と「……この溢れんばかりの魔力量とか!!」と答えてきた。
そう答えが帰ってきた瞬間に私はジト目でルティルの方を見やると冷静にツッコミを入れたのだった。
「あのさ、この世界の住人じゃない私にだってわかるわよ? 何ひとつとしてコントロールもできない、使えこなせない、おまけにほぼ成功にしないようなポンコツ魔法……いくらすごい魔力量があったってただの宝の持ち腐れじゃないか!!」
「ぐっ!そ、そんなほんとのことなんて言わなくてもいいだろうが!」
「ほんとのことなら別に良くない?」
「ふふふふっっ!」
「あっはははは!仲がいいんだなお前達は」
売り言葉に買い言葉で口論を続けていると、笑い声が聞こえてきた。
そちらの方に目線をやると、王妃様は扇子で口元を隠してはいるが肩が思いっきり揺れているので笑っているのがわかる。
そして、その隣に腰を下ろして豪快に笑っているのは先程入ってきた超ド級のイケメンである。
す、すごい!
こ、これぞまさに美男美女と言うやつか!
並んで座っているのを見るとお似合いのカップルに見える。
そして、男性の方はよく見るとどことなく目元とかがルティルにそっくりだ。
ん?ルティルにそっくり?
私は、ちょっと引っかかった違和感の正体を確かめようと失礼なのは承知で男性とルティルの顔を見比べた。
そして、気づいた。違和感の正体に。
も、もしやこの人は!?
「どうかしたか?私の顔になにかついていだろうか?」
目の前の男性は私にそう問いかけてくるが私はそれをまるっと無視して(本来なら絶対に無視したらまずいと思う)気になったことを恐る恐る聞いてみた。
「あの、もしかしてあなたはルティルのお父様ですか?」
そう問いかけた私に対して男性はものすごくいい顔で「いかにも!」と答えた。
やっぱり!
さっきと同じ轍は踏まないんだから!
王妃様の時はちょっと注意力が欠けていて気づかなくて醜態を晒すということをしてしまった。
恥ずかし限りです。
「ということは、国王陛下なのですね」
「なんだつまらないな」
「へ?つまらない?」
「そう言うものではありませんわよ陛下」
王妃様はそう口にすると目の前の紅茶をゆっくりとした動きで飲み干した。
………雅だ。あの優雅さはどうやったら身につくのだろうか?
「お前には無理だと思うぞ?」
私が王妃様を羨望の眼差しで見つめているとルティルから横槍が入った。
……声に出していないのになぜ分かった。
「もう既にやってますから」
「何をだ?」
「私で既に正体を明かさずにいつ気づくだろうなと言うドッキリをやって既に驚かせているので」
「なに?!お前は既にそんな面白いことをして遊んでいたのか?私に公務を丸投げして?」
「ふふふ」
「あの、私で遊ぶのやめてもらっていいですか?」
「「えーーー」」
国王夫妻が優雅におしゃべりをしているのを私には関係ないからと放置していたら、聞き逃せない言葉が聞こえてきたので横から口を挟むと2人揃ってのブーイングが飛んできた。
「えーー」じゃないから!!
なんなんだこの夫妻は!?
私が、抗議の眼差しをルティルに向けるとルティルは目を逸らしながら「父上と母上は大の面白いもの好きなんだ」とフォローになってないフォローをしてきた。
つまり私はあの二人に面白いもの認定されてしまったという訳か。
え、すっごい迷惑。
その面白いもの認定って辞退できませんかね?
「まあ、聖女様をからかうのはこれくらいにするか」
「気づいていたのですか?」
「無論。私を誰だと思っている?この国の王だぞ?」
………王だと見ただけで聖女だとわかるのだろうか?
全然聖女っぽい見た目じゃないけど。
なんか自分で言ってて悲しくなってきた。
「私は、ジゼル・ソルティス。この国の王だ。救国の聖女よ、我々カトレアの民はそなたの来訪を心から歓迎しよう」
自己嫌悪に陥っていると、目の前の男性は自らの名を名乗った。
私はその声に導かれるように前を向くと改めて自己紹介をすることにした。
「私は巫 冷雪です。よろしくお願いします」
改めて自己紹介することによって、私はようやくスタート地点に立てたのだと思う。
エレシアのためにも必ず世界樹の浄化をなしとげてみせる。
そして、元の世界に帰る為に……。
1章~完~